食べもののなぜを探る わたしたちのたんきゅうー白玉だんごはなぜ浮く?ー(1) 【食と科学】[小学校低学年]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第226回目の単元は「食べもののなぜを探る わたしたちのたんきゅう(1)」です。子どもたちの問いから生まれた食と科学の探究の事例を3回にわたり紹介します。
白玉だんごは、なぜ浮き上がるのでしょうか。身近な食べものを入り口に、子どもが自分の「なぜ?」を手がかりに探究しました。
授業情報
テーマ:食と科学
教科:探究
学年:小学校低学年
探究的な学びが注目されています。子どもたちが対象と関わりながら問いを持ち、その問いを大切にして調べたり、実験したり、表現したりすることで新たな問いが生まれてきます。食は、こうした問いが生まれる優れた題材です。
今回は、(株)新興出版社啓林館が運営する「たんきゅう塾NEO」で、子どもたちの問いから生まれた食と科学の探究の事例を紹介します。メンターとして武庫川女子大学藤本ゼミの3名の学生が関わり、小学校低学年の子どもたちの思いや願いを大切にしながら取り組みました。
白玉だんごが浮く原理
加熱によって生地中の水分が水蒸気となりだんごが膨らみます。
その結果、全体の体積が大きくなることで、水よりも密度が小さくなり、沈んでいた生地が浮き上がります。
用意するもの
材料
・だんご粉 50g
・水 50ml弱
・食紅 少々
たんきゅう活動① 「なぜ白玉だんごは浮くのだろう?」
まず、炭酸水の中でブドウが浮いたり沈んだりする「ブドウのエレベーター」の実験を観察しました。
この様子を見て、子どもたちと一緒に他に似た現象がないか考えました(身近な例として、フルーツポンチを示しました)。
▶子どもの声
「どうして浮いたり沈んだりするの?」
「白玉だんごも、同じように浮くのかな?」
たんきゅう活動② 予想を立てる
白玉だんごが浮く理由について、子どもと予想します。
▶「軽くなったのかな?」
▶「下から泡に押されているんじゃない?」
それぞれの考えを大切にしながら、実際に確かめてみることにしました。
たんきゅう活動③ つくって、確かめる

ゆでたら膨らんだ
実際に白玉だんごを作り、ゆでて観察します。
①白玉だんごの生地を作る。
ボウルに白玉粉を入れ、水を少しずつ加えながら混ぜます。白玉粉は種類によって水の吸い方が異なるため、水は一度に加えず、生地の様子を見ながら調整します。全体に水分が行き渡ったら、手で押すようにしてこねます。
生地は、ひとまとまりになり、割っても崩れにくい状態を目安とします。まとまりが弱い場合は、水を少量ずつ足して調整します。
②分けて、丸める。
生地が整ったら、いくつかに分け、同じくらいの大きさになるように丸めます。火が通りやすいよう、丸めた生地の中央を軽く押して、やや平らな形にします。
③ゆでる。
鍋に湯を沸かし、白玉だんごを入れます。鍋底に付かないよう、入れた後に軽く混ぜます。
しばらくすると、白玉だんごが浮き上がってきました。
▶「熱湯でだんごが破裂して浮き上がったんだと思う」
全体が浮いたことを確認してから、火を止めます。
ゆで上がった白玉だんごは、ざるに上げるか、湯からすくい取って仕上げます。
たんきゅう活動④ 比べて気づく

食紅でだんごに色をつける
ゆでる前と後の白玉だんごを比べると、大きさが変わっていることに気づきました。
▶「大きくなってる!」
▶「形を変えたら、浮き方も違うかも?」
▶「色をつけたら分かりやすいかも?」
そこで、形や大きさを変えたり、食紅で色をつけた白玉だんごでも試してみました。
たんきゅう活動⑤ わかったことを整理する

色や形を変えてゆでてみる
活動を通して、次のようなことが分かりました。
・小さい白玉の方が浮きやすい
・ゆでると白玉は大きくなる
・食紅を付けても結果は変わらない
・平らな形の白玉は、浮き上がりにくい
ブドウのエレベーターと白玉を比べてわかったこと
・ブドウのエレベーターは、炭酸水の泡を使って浮き沈みしていた。
・白玉だんごが熱湯で浮き上がるのは、白玉が温められて、大きくなろうとしているから。
メンターを担当した学生の振り返り
白玉だんごは、多くの子どもにとって、家庭や学校などで一度は目にしたり食べたりした経験がある、身近な食べ物です。今回の活動では、白玉粉に水を加えてこね、丸めてゆでるという一連の工程を通して、粉が水を含むことでまとまり、加熱によって白く半透明に変化しながら膨らむ様子を観察しました。
活動の始めに、炭酸水でブドウが浮き沈みする様子を観察しました。子どもはそこから「ほかにも浮き沈みするものがあるのでは」と考え、白玉だんごに着目しました。ブドウと白玉では浮き沈みの仕組みが異なります。炭酸水ではブドウの表面に気泡が付着して浮力を生み、気泡がはじけると沈みます。一方、白玉だんごは加熱によって内部の水分が膨張し、密度が下がることで浮き上がります。私はこの“似ているようで異なる”現象をどう伝えれば子ども自身が気づけるかを考えながら支援しました。
子どもは最初、白玉が浮き上がる理由を「熱湯で白玉が破裂したから」と予想しました。次に「下からの泡に押し上げられた」と考え、最終的に「ゆでると大きくなって密度が変わるのでは」という推測に至りました。白玉が破裂する、泡に押し上げられるという発想は、私からは出てこないもので、子どもの柔軟な視点に感心しました。さらに大きさを変えた白玉を比較した際、子どもは「平らなものは、泡が押し出すとき、重そうだった」と表現しました。現象を自分の体験に引き寄せて言葉にした、子どもならではの素敵な気づきだと感じました。
同じ重さにそろえた白玉を「ゆでるもの」と「ゆでないもの」に分け、大きさを比較する活動も行いました。ゆでた白玉が一回り大きくなっていることを確認した子どもは、「やっぱり大きさが関係している」と、自分の予想と照らし合わせながら納得していました。疑問を持ち、実験を通して「わかった!」にたどり着く過程を一緒に味わえたことは、支援する私にとって大きなやりがいと達成感につながりました。
今回の支援では、身近な現象を手がかりに仮説を立て、観察し、修正していく子どもの思考の過程をじっくりと見守ることができました。
ブドウと白玉だんごという、似ているようで原理が異なる二つの現象を比較することで、「なぜ?」と考える力が深まることを実感し、子どもの何気ない言葉の中に大切な気づきが隠されていると改めて感じました。子どもの自由な発想を尊重しながら、科学的思考へ導く支援の重要性を強く学ぶ機会となりました。
授業の展開例
〇白玉粉とよく似ている食品に上新粉があります。二つの違いを調べてみましょう。
〇白玉粉、上新粉、もち粉、だんご粉を使って、お菓子を作ってみましょう
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参考資料
メンター
佐川未菜美、團野和香、小松未來(武庫川女子大学教育学部 )

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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