2021.01.25
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命をつなぐ~いただきます~(前編) 【総合的な学習の時間】[小5・社会]

「多種多様な考えを理解することが、今後の生活の向上につながることを学ばせたい」といつも思っています。

地域の畜産業「『淡路ビーフ』に関わる人々」を教材として取り上げ、食に関する指導を行うことで地域食材への関心と愛着を深め、また、人権に関する指導を行うことで仕事に対する差別や偏見を持たない態度を身につけさせたいと願い、この単元を考えました。淡路市立津名東小学校5年での学習の様子を前編・後編に分けてお届けします。

この単元を成功させるには、「直接体験を通して学ばせること」が必要不可欠だと考えています。コロナ渦において感染対策を講じながら、可能な限り子牛・成牛に直接ふれ、淡路ビーフに関わる人々に直接お話を聞くことを重ねてきました。

子どもたちは、命をいただいていることを机上で学ぶこともできます。しかし、直接牛とふれあうことで、自分たちが「生きて動いていた命」を食べていることを、強く自覚することができます。「淡路ビーフ」生産に関わる人々の仕事ぶりを直接学ぶことで、工夫や努力だけでなく、悩みや葛藤があり、様々な思いが交錯し、つながり合っていることを深く理解することができます。

このように学びを深めることで、子どもたちは自然とこれからの自分や社会について考えていくと期待しています。

授業情報

テーマ:

1.「牛」とわたしたちのくらし(1時間)
2.牛肉が食卓に届くまで(11時間)
3.命を「解く」人々の思い(1時間)
教科:社会
学年:小学校5年生
時間:13時間(社会科8時間・総合的な学習の時間5時間)

1.「牛」とわたしたちのくらし

「牛」への興味・関心を高める

「牛は『鳴き声』以外は捨てるところがない」と板書しました。

「どういうこと?」
「牛って、肉やん」
「あ、牛乳になるで」
「チーズも!」
とつぶやきがこぼれます。

続いて、牛の体全体の絵を板書。
しばらく沈黙。

「先生、タブレットで調べてもいい?」
「もちろん」

すると、
「骨がスープになるんやって!」
「皮が太鼓やカバンになる!」

次々に出てきます。
牛は、スーパーで売られているパックのお肉だけでなく、身の回りのいろいろなものに使われていることを知ります。どうやって「牛」から「食肉」となり、どうやって自分たち消費者のもとへ届いているのかとても知りたくなりました。

2.牛肉が食卓に届くまで

「牛」が「食肉」になり消費者に届くまでを「仕事」を通して学ぶ

授業の流れ

本物の牛を見たい!(繁殖農家を見学)

繁殖農家を訪問する様子

見学前に、絵本「いのちをいただく~みいちゃんがお肉になる日~」を読み聞かせます。
学びに向かう心構えを作ります。

地域の繁殖農家を見学。

想像以上の牛の大きさに驚き、人間を警戒しながらも興味を示す子牛を「かわいい!」と思い、エサやりをして自分の手から草をとって食べる牛に自然と愛着がわきます。

繁殖農家の見学まとめ

​​​​​​​
見学させていただいたのは残暑厳しい9月。
牛たちが少しでも暑さをしのげるように運動場に日陰を作ったり、シャワーや扇風機で涼しくしたりと、たくさんの工夫をしておられました。

出産時は、真夜中でもずっと付き添います。

繁殖農家さんの牛たちへの「家族のような愛情」を直接感じることができました。

命の大切さについて書いた児童の作文

くわしく知りたいな、牛の出産(獣医師による出前授業)

地域の獣医師による出張授業の様子

地域の獣医師から、畜産農家のサポート(出産・治療等)や安全安心な食肉を消費者に届けるための検査や評価判定等の仕事内容について学びます。




獣医師による出張授業まとめ

獣医師用の車には、治療器具が装備されています。
牛用の注射針が太く大きいのを見て、牛の痛みや暴れたくなる気持ちと、獣医師さんの大きい牛に対する緊迫感が、見学で牛を直接見たことで、より鮮明に想像することができました。

獣医師は、畜産農家さんたちを支え、牛の命を守る仕事だと理解できました。

後編では、肥育農家で子牛がどのように育ててもらっているのかを見学したり、精肉店や焼肉店を営んでいる方に直接お話しを聞いたりしながら、牛に関わってきた人たちの努力や愛情にふれ、命への感謝について考えます。

授業の展開例

○コロナ禍の中での食品ロスについて資料を集め、意見文を書いてみましょう。

谷口つかさ(たにぐちつかさ)

淡路市立津名東小学校 教諭
海あり山あり自然豊かな環境で、素直な子どもたちと共に、学ぶことを楽しんでいます。
子どもたちが「自分らしさに自信をもってほしい」と願い、自分にできることをこつこつ取り組んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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