2020.10.23
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マイ防災リュックと避難所での食事 【食と防災】[小学(学活)・中学(保健体育)]

地震、豪雨、台風など全国で災害が発生しています。その度に繰り返し耳にする「備え」という言葉。学校などでも定期的な防災訓練によっていざという時に備え、地域や家庭では備蓄などの備えを行っています。しかし、ここ数年災害による大きな被害を受けていない沖縄県では、防災に対しての意識が少しずつ薄れてきています。そこで学びの場に掲載されていた「非常食の条件(小6.理科)」を参考に、前時では、岩手県でボランティアをした校長先生の体験、岩手県と岡山県の避難所でボランティアをした栄養教諭の話を通して避難所での様子を知り、自分や家族の事を考えた防災リュックの中身を考えました。

本時では、指定避難所となっている学校で過ごす事を考え、防災リュックの中身を見直し、アイディア次第で乗り越える知恵も少し織り交ぜ、身近なものを活用する事にも目を向けました。今回は給食受配校の小規模小学校複式学級での実践について紹介します。

授業情報

テーマ:食と防災

教科:学活(小学校)、保健体育(中等学校)

学年:小学校3年生以上、中学2年生

時間:1時間

それぞれの家庭で備蓄しているものを紹介し合う

前時の授業・宿題になった『家庭で備蓄しているもの』を発表し合います。ワークシートには防災リュックを考えるポイントとして、【命を助けるもの】【役に立ちそうなもの】【みんなが落ち着くもの】【私にとって大切なもの】にゾーン分けをして考えてもらいました。「おじいちゃんの入れ歯とメガネは必須」や「妹のオムツはいっぱいあるよ」など、一緒に住んでいる家族によって備蓄しているものが違うことに気づきます。役にたちそうなものに「虫メガネ」と書いた男の子がいました。「虫メガネで光を集めて火が付くって理科で習ったから」という答えは、教科とつながった瞬間でした。

避難所での生活をもう一度考えよう

前時では、校長と栄養教諭が体験した避難所でのボランティアの話を聞きました。その様子を写真で振り返りながら、協力して乗り越えた様子を紹介していきます。「ミルクがなくて泣いていた赤ちゃんに、ミルクをくれる人がいたよ」「大事な宝物が壊れた家の中にあったけど、知らないおじさん達がとってくれたよ」。被災地で助け合った話を子ども達にすると、「そっか、たくさんの人がいるから助け合えるんだ」とつぶやきました。

もし○○小学校が避難所になった時、みんなで食事ができるためにどうしたらいいだろう

避難所では、野菜や果物が足りなくて栄養が偏った事、アレルギーがある子は炊き出しの料理が食べられなかった事など、栄養教諭から避難所で食べる時の困った事を聞きました。そのヒントからたくさんのアイディアが飛び出します。

「学校菜園をもっと大きくして、食べられる分作ろう」「学校の横は○○さんの畑だから、今からお願いしておいたら?」「学校に避難してきた人に持ってきた食べ物をだしてもらおう」「献立表みたいに入ってる食べ物を書いて貼り出そう」。子ども達からの提案は、校長先生に交渉するほど大きなものもありましたが、自分だけじゃなく、地域の人と協力していこうとする様子を感じました。

身近な物を工夫してみよう

担任から「一人ずつお米を持ち寄るのはどうかな?」と提案がありました。賛成するも、炊飯器がないから食べられないと諦める意見も聞こえます。そこで栄養教諭から「食べたい気持ちがあればご飯も炊けるよ」の声とともに、缶・瓶・ポリ袋・レトルトパック・マグカップ・牛乳パックで炊いたご飯が登場しました。「本当にご飯になってる!」「おいしそう」「炊飯器なくてもできるんだ」。身近にあるものが工夫次第で調理器具になることを知りました。

まとめとして、翌月の自然体験のメニューを考えました。ご飯は飯盒ではなく竹や缶で炊いてみる、学校菜園の野菜でみそ汁を作るなど、学習を実践する機会になりました。

本時の内容は、中学2年 保健体育「自然災害に備えて」に発展させました。中学2年保健体育「自然災害に備えて〜自然災害によるケガの防止〜」の授業にも活用しました。ラップでの応急処置を追加したり、「乾パンがいい?缶パンがいい?」では乾パンと缶に入った長期保存パンを食べ比べてお年寄りや子どもが食べる備蓄についても考えてを深めました。

授業の展開例

〇災害時の炊き出しを考えてご飯とみそ汁を作ろう(家庭科)

〇地域の方から生き抜く知恵を学ぼう(総合)

稲垣 夏子(いながき なつこ)

国頭村立国頭中学校 栄養教諭
村給食センター勤務。小学校5校、中学校1校担当。地域の特色を生かした献立づくりに取り組むとともに、災害食・防災をテーマに研究を重ねている。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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