2018.07.18
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お茶の表示 【食と社会】[小6・家庭科]

食品についている表示やマークには、その食品についての様々な情報が記されています。原材料や賞味期限・消費期限、保存方法など、食品表示から読み取れる情報に関心をもつことが大切です。お茶のラベルに書かれている情報の多さに気付き、食品表示に関心をもつことをめざした1時間の授業を報告します。第140回目は、本コーナーの監修者、私・藤本が長岡京市内の小学校で飛び込み授業をした様子をご紹介します。

1.どちらを買いたいか考える

授業の冒頭、ペットボトルのお茶を2本(A:通常のもの、B:ラベルをはがしてある)用意して、子どもたちに聞きます。
「スーパーマーケットで、お茶が売られていたら、AとBのどちらを買いますか」
子どもたちは、全員が通常のお茶だ(A)と言います。「それは、なぜですか」と問い返すと、次のような意見が出てきました。

  • 原料が何かわからないから
  • 売られているお茶っぽくない
  • ラベルがないと緑のお茶のイメージとは違うから、いやだ
  • 何が入っているのかわからない
  • メーカー名が書いていないと、信用できない

どんどん意見が出てきます。全員が、お茶についてのラベルがないと不安なようです。
そこで、お茶のラベルは、身分証明書のようなものと言えるねと表示の必要性や役割を確認しました。

2.ラベルにはどんなことが書かれているか

次に、「はがしてあるラベルには、どんなことが書かれていると思いますか」と問いかけます。「お茶」「原材料名!」子どもたちが口々に発言してくれます。
「では、班になって各班で、ラベルにはどんなことが書かれているのか、付箋紙に書いてみましょう」とグループ活動に移ります。
子どもたちは、にぎやかに「会社名が書いてあるよ」「量を忘れてる」「電話番号も載ってあったよ」「おいしいお茶とかCMが入ってるよ」など、思い出しています。
中には「お茶は、賞味期限かな、消費期限かな」「そんなの書いてあったかな」「飲み物だから、書いてあるはずだよ」と議論も始まりました。

付箋紙を書き終わったところで、子どもたちが書いた付箋紙を半分の班だけ黒板に貼りに来るように指示します。「貼るときに、同じような内容だったら隣に貼って仲間わけしていこう、待っている班は、自分たちの付箋紙がどこに仲間わけできるか考えながら見ているように」と説明します。
前半の班が付箋紙を貼り終えたときに、お茶は、消費期限が書かれているのか、賞味期限が書かれているのか、子どもたちの意見が割れました。そこで、次のように説明しました。
「消費期限は、袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで、「安全に食べられる期限」のことです。お弁当やケーキなどのいたみやすい食品に表示されています」
「すると・・・」と聞いただけで、「だったらお茶は、賞味期限だよ」と反応してくれます。「いたみやすい食べ物には、消費期限。お茶は、いたみやすくないから賞味期限だ!」「正解です。袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のことを賞味期限と言います。お茶のようにいたみにくくない食品は何かな」
子どもたちから、カップめん、かんづめなどが出てきました。賞味期限は、ペットボトル飲料など、消費期限に比べていたみにくい食品に表示されていることを付け加えて後半の班の活動に進みます。

先に貼ってある付箋紙をよく見ながら話し合って出てきた付箋紙を貼っていきます。どこに貼ったらいいのか迷った時には、班の子たちに聞いています。
後半の班も貼り終えたので、「会社やメーカー、つくっているところなどは、事業者と言います」「入っている量については、内容量と言います」と子どもたちの付箋紙について、まとめた内容を説明していきます。「品名・原材料名・添加物」まで進み、「保存方法」について子どもたちに聞いてみました。各班での話し合いの中で、保存方法を書いてあるかが話題となっていたからです。「アイスクリームなら溶けてしまうから保存方法は大切だけど、お茶はなくていい」と、保存方法は記載されていないという意見がほとんどでした。そこで、お茶のラベルを書画カメラで投影します。「直射日光をさけて・・」と書いてありました。さらに、「販売者(住所)・取扱い上の注意・栄養成分・バーコード・ごみの種類・リサイクルの方法・お客様センター」などが書かれていることに子どもたちは驚いた様子でした。

3.表示に込められた製造者の思いを考える

「どうしてこんなに表示にたくさんの情報が書かれているのかな」と聞くと、「商品が安心できることを知ってほしい」「買ってほしい」「おいしく飲んでほしい」「信用してほしい」「信頼してほしい」の意見が出てきました。子どもの意見に付け加えて法律でも決まっていることを説明しました。ラベルには製造者の思いが反映されていることに気付かせることができました。

4.授業のタイトルを考える

最後に、振り返りシートに授業の感想と、学習したことをもとに授業のタイトルを考えてもらいました。以下のようなタイトルをつけてくれました。

  • お茶に書いてあること
  • お茶のひみつ
  • ラベルにはいろいろな情報が
  • お茶を安心して飲める理由
  • ラベルのひみつはっけん
  • 安心してもらえるようにする工夫
  • ラベルの必要性を知ろう

授業の感想

  • いつもなんとも思っていなかったラベルにたくさんの意味があってとてもおもしろかったです。なので、今度お茶を買ったら、ラベルにも気にしてみたいと思います。さらにラベルに品名、産地、原材料などを載せなければいけない法律を知ってびっくりしました。
  • お茶はとても身近なものでラベルに書いてあるものは重要なことや安心してもらいための工夫が入っているんだなと思えるようになったのでよかったです。他のジュースやお茶についても考えてみたいと思います。
授業の展開例
  • 生鮮食品や加工食品の表示にはどんな情報が記載されているのか、違いはあるのか調べてみましょう。
  • 「JASマーク」のように食品の容器や包装には、その食品の品質や特徴、認定状況などの手がかりとなるマークが表示されていることがあります。どんなマークがあるのか調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修・文:藤本勇二

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