2018.06.27
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魅力が伝わるパッケージ~海苔~ 【食文化・社会性】[中1・美術]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第139回目の単元は「魅力が伝わるパッケージ~海苔~」です。

「海苔」は身近にある食材ですが、主菜としてはあまり取り上げられません。食事の脇役として食卓に添えられていることが多い食品です。ところが、その栄養価は高く、特に良質なタンパク質やビタミン類を多く含んでおり、むしろ必要な栄養素を摂取するための主菜となり得る食品なのです。また嗜好品としての価値も高く、例えば海苔のないおにぎりより、海苔の巻いてあるものの方が美味しそうに見え、自然と食欲をそそります。

この授業では、学校給食でもよく食べる機会のある海苔のパッケージを考えることで、海苔の持つ魅力に注目し、食品としての価値や、デザインすることの面白さに気づくことを目標としました。4時間の授業のうち、1時間目を紹介します。

◇指導計画 全4時間

第1次:デザインの考え方を知り、兵庫県の海苔の持つ特徴を伝えられるようなパッケージを構想する。
第2次:前時のアイディアスケッチをもとに、ワークシートに下描きをする。
第3次:下描きに色鉛筆で着色する。
第4次:作品を完成させる。

パッケージデザインについて知り、アイディアスケッチをする

冒頭、
「デザインとは、作品を見る人にどう思ってほしいか考えながら作るものである」
と説明し、授業を始めました。生徒は、こうしたデザインの考え方を知り、今まで行ってきた単純な絵画制作とはポイントが違うことを理解しました。

また、以下のようにアイディアスケッチのルールを伝えます。

【制作のルール】

  • 色は3色まで
  • 既存のキャラクターは使わない
  • 文字を使っても良い
授業の冒頭に、デザインの考え方を説明する

授業の冒頭に、デザインの考え方を説明する

以上の条件のもと、イメージをクロッキー帳に描いて発想力を高めます。

初めて取り組む内容なので、生徒達も最初は
「どんな風に作ればいいのだ?」
「何を描けばいいのだ?」
と悩みます。生徒達はこれまで、商品の中身には興味津々でも、その外側のパッケージに注目して見たことはほとんどないでしょう。それでも生徒達は自分の記憶を思い返して、そして自分のスケッチからどんな印象を伝えられるか考えて、どんどんアイディアの数を増やしていきます。自分の頭だけではなく、教科書や資料集にあるポスターや文様などもヒントにして、考えを構築していました。

アイディアを書き込むワークシート

アイディアを書き込むワークシート

また、パッケージはほとんどの場合が印刷物です。大量印刷する以上、インクの数や版の精度に制約がかかります。身の回りにある食品を含めた商品が、どのような考えのもとでデザインされているのかを考えるきっかけにもなったようです。

海苔について知る

アイディアスケッチの最中に、海苔の食品としての価値を伝えました。

  • 兵庫県は海苔の生産量が全国でもトップレベル<特産品としての価値>
  • タンパク質やビタミン類を多く含み、栄養価が高い<栄養食品としての価値>
  • 芳醇な香りとパリッとした触感で食欲をそそる<嗜好食品としての価値>

などの食品価値について知り、作品を構想する材料としました。実際にその地域に住んでいても、特産物には意外と知らない長所や魅力があったります。生徒達も関心を持って聞いていました。

海苔の持つ魅力を生かしたパッケージデザインを制作する

今度は、ワークシートに沿ってデザインを描いて自分の頭の中を整理し、アイディアや構想を整えていきます。アイディアスケッチとはボツの案も含めて、たくさん出すのがいい作品を作るコツです。結果的に最初の案を使うこともありますが、それ以外に考えた案があることでより深みのあるデザインに仕上がっていきます。

ワークシートに清書をしていきますが、アイディアスケッチの際には気づけなかった細かい問題点(色がわかりにくい、形が見えにくいなど)が見えてきます。画用紙を使ってワークシートを作ることで、生徒も制作に気持ちが入ります。

同じテーマで制作しても、生徒それぞれの着眼点や興味によって方向性が変わります。かわいらしいイラストでまとめたもの、日本の文化をデザインの要素に組み込んだもの、海苔の美味しさや魅力を前面に出したもの、それぞれの個性あふれる作品ができました。

パッケージデザインの特徴は「捨てられてしまうもの」であることです。いかに、中身の魅力をより良く伝えられるかがパッケージデザインには求められていますが、デザインそのものは封を切られた瞬間に役目を終えてしまいます。

いつか捨てられてしまうその前に、どうすればパッケージされているものが魅力的に感じられるか、どのような雰囲気を演出するのか、思わず開きたくなるパッケージとは何かという所が、構想を深めていくポイントとなります。

後日、作品の一つが市の給食として実際に採用されました。自分の考えたものが形になる喜びを感じられる取り組みとなりました。

  • 生徒の作品1

    生徒の作品1

  • 生徒の作品2

    生徒の作品2

  • 生徒の作品3

    生徒の作品3

  • 「生徒の作品1」のデザインが実際に給食用の海苔のパッケージに採用された

    「生徒の作品1」のデザインが実際に給食用の海苔のパッケージに採用された

授業の展開例
  • 「おいしい」色を考えよう(色覚と味覚の共感覚を考える)
  • 包むパッケージ⇒捨てるパッケージ~形も心も開けやすいデザイン~(パッケージデザインの動静について考える)

村井 隆宏(むらい たかひろ)

兵庫県丹波市立春日中学校 教諭 美術科
教員4年目で2校目の勤務。筑波大学大学院で焼き物を中心に研究し修了。生徒達が「人の表現を気づける、わかる、伝える」授業づくりを目指して、日々研鑽を積んでいる。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学文学部教育学科 専任講師 小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・村井隆宏/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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