お月見ってなあに 【食とくらし】[小2・学活]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第136回目の単元は「お月見ってなあに」です。
お月見は旧暦の8月15日に月を鑑賞する行事で、この日の月は「中秋の名月」、「十五夜」、「芋名月」と呼ばれます。お月見の日には、お団子やお餅、ススキ、サトイモなどをお供えして月を眺めます。2年生の子ども達にとっては、お月見は知っていても、どんな意味があるのかは知らないことが多いようです。お月見のいわれやそれに因んだ食べ物について知ることにより、年中行事について関心を持つ2年生学活の授業を紹介します。
お月見の写真から
授業に先立つこと1週間前、子ども達に絵本『14ひきのおつきみ』(いわむら かずお 作、童心社)を読み聞かせしました。そして、お月見のことについて知っていること、経験したことを発表させながら、次の時間までにお月見のことについてさらに調べてくるよう話しました。
さて、いよいよ本時。授業の冒頭にお月見の写真を見せて、何をしている所か、お月見について知っていることを皆で話し合います。まず、何の写真か子ども達に聞くと、「お月見」の声。その理由について、
「団子がある」
「月も写っている」
「ウサギが見える」
「いや見えないよ」
「畳とふすまがある」
「満月だ」
「ススキだ」
と、どんどん反応が返ってきます。教室に飾ってあるススキを指さして、あれだと言っている子もいます。
「この『お月見』って何かな? はてなノート(子ども達が興味や関心を持ったことを調べるノート)で調べたり、聞いてきたりしたことを教えてくれる?」
と聞くと、子ども達からは
「月を見ながらお団子を食べる」
「月を見て鑑賞する」
の発言。
「鑑賞ってどういう意味か、わかる人いる?」
と聞くと、
「月を見る」
「月に感謝をしながら、団子を食べる」
の発言が返ってきました。
お月見の意味
「ところで、感謝って言葉はどういう意味?」
と聞くと、
「ありがとう」
「きれいな満月を見て、お団子を食べる」
「お団子やススキやサトイモをお供えして、月を見る」
など調べたことを基に意見が続きます。
「団子やススキを供えるの?」
と聞くと、
「サトイモもあるよ」
の意見が返って来ます。
次に、子ども達の日常生活ではあまり登場しない、「お供え」の言葉について取り上げます。
「お供えは、例えば、お地蔵様に団子をあげるってこと」
「秋の果物とか野菜をお供えする」
と答えてくれたので、
「秋の果物ってどんなものがある?」
と聞きます。次のようなものが上がりました。
クリ・カキ・ナシ・リンゴ・ブドウ・干し柿・渋柿
また、秋の野菜についても聞くと、
「きっと、イモ系。サトイモとか」
「ナス」
「サツマイモ」
といった子ども達の発言を受けて、
「皆が植えたサツマイモだね」
と話すと、
「先生、今さ、めっちゃさ、土が見えへんぐらいさ、草がぼうぼうになっている」
「早く食べたいな」
「昨日、サツマイモのお味噌汁出たよ」
と生活科で育てているサツマイモへの関心がうかがえました。
さらに、秋に収穫できるものをお供えすることの意味を確認します。
「団子とかサトイモとかススキはお供えするものだから、見ている時は食べない」
「見ながら食べる人もいるけど、見ている時に食べない人もいる」
「鑑賞して後で食べるかもしれない」
「ススキを飾って感謝している」
の発言が続き、調べたことを生かしながら、秋に収穫したものをお供えして、感謝の気持ちを込めて祝っていることを確認しました。
お月見以外の年中行事と行事食
「お月見以外に行事を知っている人はいるかな?」
と聞くと、
「先生、行事って何?」
の声。そこで、節分のイラストを提示すると、
「あー、節分、節分や。なら知っている。なんか、やったことがある!」
と子ども達。そこで、
「じゃあ、他にも行事を知っているかな?」
と問います。
「ひな祭り」
の発言を受けて、ひな祭りは3月3日、節分は2月3日であると話を進めます。一人の子どもが、
「墓参り」
と発言します。
「夏に行ったりする」
「お盆のことかな? 夏にお墓参りに行ったりするね」
と話して、
「七夕は7月7日」
「子どもの日は5月5日」
と確認します。
次に、着物を着た子どもの写真を示して、
「これはわかるかな?」
と聞くと、
「七五三?」
「お正月」
の意見。お正月は1月1日であることを説明し、
「お正月とか七夕に食べる料理、このことを行事食と言います。こんなにたくさんの行事食を用意してきたので、いつの時に食べるのか考えてみましょう」
と、行事と行事食のイラストをカードにしたものを各班に配り、絵合わせをするという班活動を行います。
行事食のイラストは、炒った大豆、ひなあられ、かしわ餅、おせち、ちまきです。
「これはひな祭り」
「その時に食べるやつ選んだら簡単」
「お正月だけは簡単やで」
と賑やかに話し合っています。
絵合わせが完成した所で答え合わせをします。食べ物の名前を確認すると、子ども達が自分自身の経験を語ってくれます。
「ちまきって給食でも出てくる」
「おかわりした」
の発言を受けて、
「ちまきって、年々作る人が減っていて、大切に食べないといけないよって話したよね」
と返します。
行事食の意味
「この行事食って、なぜ食べるのだろうね」
と問いかけると、
「健康」
「感謝」
の意見が出てきました。
「そうそう。健康や感謝のため、そして季節の変わり目に食べるものだよね。お月見について調べてきたことの中にも出てきたね」
と話し、その他の行事食についても話し合います。
「2月3日の節分」
「七夕」
「クリスマス」
「お正月」
等について、子ども達から色々な意見が出てきました。
最後に、今度やってくる行事では何を食べるか、その行事食に込められている思いは何かを問い、
「行事食の意味を考えて食べましょう」
と話し、授業を終えました。
授業の展開例
- 年中行事のいわれや行事食について調べてみましょう。
- 地域の伝統行事や食事について地域の方に聞いてみましょう。
松井 香奈(まつい かな)
大阪市教員
文化的な食、社会的な食を教材化することを通じて 授業実践に取り組んでいます。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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