2017.11.15
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お茶と言葉 【食と言葉】[小6・学級活動]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第132回目の単元は「お茶と言葉」です。

食育と授業:お茶と言葉 イラスト

中国から仏教と共に伝わったお茶は、日本人の生活や文化にしっかりと根づいています。食事の時に飲む、喉の渇きを潤す、ほっと一息つく……、お茶はいつも私達の身近にあります。日本人の誰もが知らず知らずのうちに、日常的にお茶に触れているのです。そんな身近なお茶について、言葉の視点から関心を高めたいと考えました。「茶」の付く言葉やことわざなどを考えることを通して、お茶は昔から日本人の身近なものであり、親しまれてきたものであることに気づく1時間の授業を報告します。本コーナーの監修者、私・藤本が西宮市内の小学校で飛び込み授業をした様子をご紹介します。

お茶と言葉?

授業の冒頭に、お茶について知っていることやどんな時に飲むかを話題にします。授業の前の時間は体育だったので、
「皆さん、体育の後ですね。こういう暑い時、何を飲みたいですか?」
と聞きました。子ども達からは、お茶、炭酸水、お水などの意見が出てきます。中には、
「私はいつもお茶を飲みます」
と、お茶の習慣を口にする子もいました。

「では、お茶って何ですか?」
と質問すると、
「お茶の葉っぱで作るもの」
「葉っぱを醗酵させてからお湯に入れて……」
と言った声。
「6年の歴史の勉強で『茶の湯』を勉強しましたね」
と水を向けると、
「知っている! 千利休だよね」
と、これまで学習したことを口に出してくれます。

そこで、短冊に書いた「お茶と   」(短冊の半分だけ見せます)を掲示し、本時の学習内容に興味を持たせます。
「今日の勉強は『お茶と○○』です。○○に何が入るか考えてみましょう」
と聞くと、お茶の作り方、お茶の歴史、お茶の飲み方などの意見が出てきました。短冊の残り半分を見せると、
「どういうこと?」
「何の勉強?」
といった声が上がりました。
「今日は、『お茶と言葉』について勉強していきます」
と話して次の活動に進みました。

○○茶?

「さて、皆さん、『〇〇茶』と聞いて連想するものは何ですか?」
と聞きます。ジャスミン茶、ウーロン茶、緑茶……等、どんどん意見が出てきます。子ども達の身近にお茶があることがうかがえます。
「では、どんなお茶があるのか、教えてもらおうかな。紙に知っているお茶の名前を書いて下さい」
と指示します。紙を渡す前から、書きたいものがたくさんあって、早く活動に入りたいという雰囲気が伝わってきます。子ども達は早速、班で話し合って知っているお茶を紙に書きます。すると、
「○○茶はいいですか?」
と、商品名を挙げる子もいました。
「うーん、商品名だからね。今回は商品名はなしです。原材料として中に入っているお茶ならいいよ」
と説明します。

お茶には「茶葉を使っているお茶」と「茶葉を使っていないお茶」があることを説明する藤本先生

お茶には「茶葉を使っているお茶」と「茶葉を使っていないお茶」があることを説明する藤本先生

子ども達の見つけたお茶を黒板に貼っていきます。この時、「茶葉を使っているお茶」と「茶葉を使っていないお茶」の2種に分けて整理します。1つめの班がお茶の名前を書いた紙を黒板に貼った後、
「すでに黒板に貼られているお茶の名前以外を出してね」
と、子ども達を促します。このようにして、次々と各班がお茶の名前を書いた紙を貼っていきました。

子ども達の貼った紙を動かしながら、
「先生が仲間分けしていることに気づきましたか?」
と聞くと、
「食べ物か、食べ物じゃないかかなぁ?」
と、班のメンバーと相談する様子です。そこで
「どんな仲間分けになっているのか考えてみてね」
と言って、班の話し合いを促しました。そして、
「お茶の葉って知っていますか? 皆さん、社会で勉強したよね」
と言いながら静岡県のお茶栽培の写真を見せます。
「茶畑!」
と元気に答えてくれます。何を作っているのかを聞くと、すぐに
「お茶!」
の返事。
「そうですね、緑茶や抹茶は茶の葉っぱ、茶葉を使っています。紅茶も茶葉を使っているのですよ」
と言うと、
「知っている!」
の声が返って来ます。
「ほうじ茶はどうやって作るか知っていますか?」
の質問には、
「あのお茶は、お茶の葉っぱちゃう?」
「葉っぱを焦がすんだよ」
と意見が続きます。
「では、麦茶は?」
「麦!」
「そう、茶葉を使っていませんね」
この辺りで子ども達は気づいたようです。

こうして、茶葉を使っているお茶、茶葉を使っていないお茶に分けていることを説明し、
「なぜ茶葉を使っていないのに『○○茶』と呼ぶのでしょうか?」
と聞いてみます。子ども達は
「全部お湯で溶くからじゃないかな?」
「お茶は飲み物の代表だから?」
と、一生懸命に考えています。

茶の付く言葉?

「お茶がこんなに身近にあることがわかりました。では、これは、何を表しているのかな?」
と言いながら、「へそで茶を沸かす」を表現したイラスト示します。仰向けになった人のおへその上で急須が沸いています。
「このイラストの意味がわかった人はいますか? ヒントは、『茶』の付く言葉です」
と聞くと、
「へそで茶を沸かす、無茶をする意味だと思います」
の意見。理由を聞くと、
「へそで茶を沸かすような、絶対できないことをする意味だと思います」
なるほど、意味は違っていますが、これは説得力あります。
「皆さん、笑う時、どうやって笑いますか?」
と聞くと、子ども達は
「あはははは」
と、実際に笑ってみて確かめています。
「大笑いして腹がよじれる様子が、お湯が沸き上がるのに似ていることからついたのです」
と説明します。

辞書を使って「茶」の付く言葉を探す

辞書を使って「茶」の付く言葉を探す

次に、「喫茶店」のイラストを示すと、
「別荘」
「カフェ」
という言葉が返ってきました。今の小学生には喫茶店が身近でないこともよくわかりました。


班ごとに辞書を使って、ことわざや熟語などから「茶」の付く言葉を探します。茶箪笥、お茶碗、茶道、茶番、茶化す、無茶、お茶を濁す、茶寿、茶々を入れる……等が見つかりました。

お茶と暮らし

最後に、
「皆さんは、『お茶にしよう』『お茶を飲みに行く』って言葉を聞いたことあるかな?」
と聞くと、
「あるよ、母さんが言っていた」
の声。
「これは、お茶が、飲み物を代表している例だね」
と説明します。
「では、この空欄には何が入りますか?」
と、「日常○○事」の○○に入る言葉を考えさせます。お茶のある暮らしが日常茶飯事であるようにという意味に気づかせ、お茶は昔から日本人の身近なものであり、親しまれてきたものであることを話して授業を終えました。

子ども達の感想

本授業の板書

本授業の板書

授業を終えてからの、子ども達の感想です。

「普段、よく使っている言葉、もしくは使っていない言葉でも『茶』という漢字が入っているのに初めて気がつきました。びっくりしたのは、『茶々を入れる』です。なぜかというと、いつもお母さんに『茶々入れんでいいから』と言われていて、お茶なんていれてないから、『ちゃちゃ』と平仮名で書くと思っていました。お茶の付く言葉をもっと調べてみたいです」。

「今日の授業で、皆と交流することで色々なお茶の種類を知って『ああ、こういうものもあるのか』と思うものや、知っているものがあって楽しかったです。普段気にしないことも今、改めて何でだろうと思ったことは、家で調べてみようと思います。(1)どうして喉が渇くとお茶を飲むのか(どうして水ではないのか)、(2)何世紀くらいの時からお茶を飲むようになったのか、と言うことです。楽しかったです」。

「『お茶』の仲間分けをしたり、『茶』の付く言葉を探したりと、お茶についてたくさん勉強できたなと思いました。それと同時に、『なぜ?』と感じる疑問もたくさん浮かび上がってきました。この授業のおかげでお茶がどれだけ深いものなのかを知れたし、色々なお茶がわかりました。また、こういう日常に欠かせないものに視点を向けて勉強してみたいと思います」。

授業の展開例
  • 「茶番」「茶化す」「無茶」「お茶を濁す」等の「茶」の付く言葉の意味や由来を調べてみましょう。
  • 「醍醐味」「大根役者」など食べ物の名前が言葉になった例を探してみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修・文:藤本勇二/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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