2016.12.21
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栄養バランスのとれた朝食のメニューを考える 【食と栄養】[中2、3・自立活動]

栄養バランスのとれた朝食のメニューを考える

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第121回目の単元は「栄養バランスのとれた朝食のメニューを考える」です。

朝食のメニューを発表し、栄養素に偏りがないかどうか話し合ったり、朝食にはどのような食材が適しているのかを食品カードから見つけたりします。栄養素の働きを意識して、「バランスの良い食事メニュー」とはどのようなものかを考えていきます。栄養バランスのとれた朝食のメニューを考えることを目指した、中学校特別支援学級での全10時間の実践の中の9時間目を紹介します。

農業体験と栄養教諭の出前授業

本時に至るまで、次のような学習を進めてきました。

[1時間目]トマト、キュウリ、ナス等の夏野菜を収穫し、黒豆とサツマイモの苗植えを行った。
[2時間目]収穫した野菜を使った簡単な調理実習を行った。
[3時間目]栄養教諭による出前授業(1):朝食は何を食べたのかを表で確認し、食事の内容などを生徒達自身で見直した。
[4時間目]野菜の種類と名前を写真カードで確認した。
[5時間目]黒豆とサツマイモを収穫した。
[6時間目]収穫した野菜を使った簡単な調理実習を行った。その際、校内の教職員にも試食してもらい他者とのコミュニケーション力を養うことにも取り組んだ。
[7時間目]栄養教諭による出前授業(2):飲料に含まれる糖分の量を調べ、身体に及ぼす影響について学んだ。
[8時間目]栄養素の働きを理解し、バランスの良い食事を意識させるように促した。
[9時間目]朝食のメニューを発表し、栄養素に偏りがないかどうか話し合わせる。足りない栄養素がある場合はどのような食材が適しているのか、理想的な食事メニューと併せ、バランスの良い食事とは何かを考えさせる。

授業の展開に当たって

生徒の実態を踏まえて、以下の点について配慮しました。

【実態1】
食事や排泄などの生活習慣については、おおよそのリズムはついているが、適切な食事の量や内容などについての知識や関心は、あまり持ち合わせていない。また、食感に偏りがある生徒も少なくない。
<配慮点>
・授業のカリキュラムに農作業を取り入れる。
・植物を栽培することを通して、収穫までの過程を学ぶ。
・収穫した野菜を用いた簡単な調理実習を行う。
・普段から食べ物に対し興味や関心を持つように促す。

【実態2】
生徒は交流学級にて、毎日給食メニューの主食・主菜・副菜の確認をしてから給食を食べている。
<配慮点>
・家庭科の授業を通して栄養素の名前などの用語は学んでいるため、これらの働きについて理解を深めさせたい。
・朝食で摂った食材にプリントを使って○を入れる。
・各栄養素を色分けしたシールを貼ることで、バランスのよい食事を意識させる。

【実態3】
生徒達には、調理実習や試食をする際の挨拶、食事中のマナーや会話を通して、場面に応じた言葉のやりとりや適切な行動ができるようにも支援している。
<配慮点>
・一つの作業や活動に協力して取り組むことで、他者との関わり方やコミュニケーションの取り方なども意識させる。

各自の朝食のメニューを発表

自分が食べた朝食のメニューについて、写真カードを用いて発表することから授業はスタートしました。教師が
「今朝は何を食べましたか? 朝食のメニューを教えて下さい」
と聞くと、
「ご飯、味噌汁、納豆」
などの返事が返ってきました。

次に、朝食の量・味・和食・洋食など、どのようなものを食べたのか説明します。以下に生徒とのやりとりの様子を紹介します。
(以下、教師=T、生徒=S1、S2、S3)
T「S2さんが、食べたご飯の量はどのくらいですか?」
S2「お茶碗の半分ぐらいです」
T「この写真の量ぐらいですか?(写真カードを提示)」
S2「はい、そのくらいです。他に、自分で作った卵焼き、ホウレンソウのおひたしです」
T「S3さんは、何を食べてきましたか?」
S3「パンとコーヒーです」
T「パンには何か塗りましたか? どんな味でしたか?」
S3「バターを塗りました。甘かったです」
T「コーヒーには、何か入れましたか?」
S3「ミルクと砂糖を入れました。砂糖はスプーン2杯です」
T「S1さん、コーヒーを飲むと、どんな味がしますか?」
S1「(顔をしかめながら)苦ーい…です」
T「苦いコーヒーに砂糖を入れると? 砂糖の味は?」
S1「甘いです!」
T「S2さん、S3さん、朝食のメニューを種類分けすると、和食か洋食か、どちらになりますか?」
S2「私は和食です」
S3「私は洋食です」
T「『~です』と、丁寧な言葉で発表できましたね。声の大きさも、聞きやすかったです。とてもわかりやすくて、よかったです」
このようなやりとりで授業は進んでいきました。

朝食の内容を見直す

自分の朝食メニューに栄養素を示す赤・緑・黄のシールを貼る

自分の朝食メニューに栄養素を示す赤・緑・黄のシールを貼る

今度は、自分達の朝食の内容を見直すために次のように学習を展開しました。まず、発表した朝食の内容を見直し、バランスよく栄養素が摂れているかどうか、お互いに確認します。次に、栄養素を示す赤・緑・黄のシールで、食材を分類します。

T「食べ物を示す赤・緑・黄のシールを、プリントに貼ることはできましたか? できたら『できました』と答えて下さい」
S1・S2・S3「できました!」
T「赤・緑・黄の3種類のシールを、全て貼った人は手を挙げて下さい」
(S2が手を挙げる。S1・S3は手を挙げない)
T「プリントを交換して、何色のシールが貼ってあるのか、お互いに見て下さい」
T「S1さんは、何色のシールですか?」
S1「赤、黄色…です」
T「味噌汁の中には、何が入っていたか覚えていますか?」
S1「……(黙っている)」
S2「ニンジンとかタマネギは入ってなかった?(写真カードを提示しながら)」
S1「……(タマネギを指さす)」
S3「『タマネギ』と言ってみて」
S1「…タマネギ…です」
T「丁寧な言葉で言えましたね」
T「このタマネギは、赤・緑・黄のうち、何色になりますか?(栄養素の図を提示しながら)」
S1「緑…です」
T「きちんと、発表できましたね。素晴らしい! プリントに緑のシールを貼りましょう。S2さんも、助けてくれてありがとう。他に何か気づいた人はいますか?」
S3「私は、緑色のシールがないです」
T「いい所に気がつきましたね。緑のシールを貼るためには、どんなものを朝食に取り入れたらいいですか? わからなかったら、隣同士で相談しても、いいですよ」
(S1・S2・S3相談する)
S3「ホウレンソウやトマトは、どうですか?」
S2「ミニトマトなら、洗うだけで簡単」
S3「ホウレンソウなら前の日に作れるし、便利ですよね」
T「いい所に気づきましたね。今だと、この野菜もお勧めです。(写真カードを提示しながら)さて、何の野菜でしょう?」
S1「ブロッコリー」
T「よく知っていましたね。すごい! 茹でて鰹節と和えたものが、給食にも出ていますね」
S2「あの料理、おいしいですよねえ」
T「ブロッコリーは、茎まで食べられるのは知っていましたか?」
S3「ええーっ? 茎? 本当ですか?」
T「シャキシャキして、食感も楽しめますよ」
S2「へえー、知らなかった。びっくりです」

このように生徒は、とても意欲的に授業に参加し活動していました。朝食のメニューでは、和食・洋食の区別はついていますが、適切な食事の量については、さほど意識していないように思えました。そこで、事前に生徒達が協力して作成した「栄養素の働き」図を見ながら食べ物を3色のシールに分類しました。

中には、自分の意見をはっきりと述べることが難しい生徒もいます。そのため、予め
「どのようなものが食べたいのか?」
「好きな食べ物は何か?」
などを、場に応じた適切な言葉でやりとりする会話の練習をしました。授業中発言に戸惑っている生徒には教材を指さしたり、困っている生徒には声を掛けたりするなど、助ける場面もありました。併せて「~です」と、丁寧な言葉を使う指導も行いました。また、困った場合は教師に、
「わかりません」
「忘れました」
と述べ、助言を求めることも、回答の一つであることを伝え、自尊感情の育成にも努めました。

食事内容を見ると、栄養素のバランスが黄色=炭水化物に偏っており、野菜が不足していました。このことに気づいた生徒が、自分で作ることができる簡単なメニューは何かを考え、発表する場面もありました。例えば、前日の夕食をアレンジしたものや、電子レンジを用いて短時間でできるもの、冷蔵庫の中にあるものを活用するなど、手軽にチャレンジできるものに話が及びました。メニューを聞いた生徒も
「これなら自分にもできそうだ!」
と料理に対し、意欲を見せる様子もありました。授業を通して、自分の考えを伝えたり、相手の意図を受け止めたりと、コミュニケーション力の育成になったようにも感じられました。また食品の写真カードを用いたことで、朝食とはどのようなものなのかを、イメージしやすかったと思いました。視覚支援にも繋がり、生徒達にはわかりやすかったようです。

栄養バランスのとれた朝食のメニューを考える

最後は、写真カードを用いて、栄養バランスのとれた朝食のメニューを考え、栄養教諭からのアドバイスを聞きます。

食材を赤・緑・黄に分類した栄養素の図

食材を赤・緑・黄に分類した栄養素の図

T「では、プレートを各自1枚ずつ取って下さい。準備ができたら『できました』と教えて下さい」
S1・S2・S3「(プレートを取り、準備をする)できました」
T「ここに、食べ物を示した“写真カード”があります。たくさんありますね。朝ご飯に食べたいなあと思うものを選んで下さい。ただし、気をつけないといけないことがあります。それは、どのようなことでしたか?」
S2「(栄養素の図を指でさしながら)何色?」
S1「赤・緑・黄色……」
S3「栄養素の……」
S2「わかった! 栄養素のバランスです」
T「そう、栄養素のバランスです。他にもう一つ、気をつけないといけないことがあります。さて、何でしょう?」
S3「食べる量…です」
T「そうでしたね。では、栄養素のバランスと食事の量を考えながら、食べ物をプレートに置きましょう。できたら、『できました』と教えて下さい」
S1・S2・S3「(食材をプレートに置く)できました」
T「では順番に、どのような食べ物を置いたのか、発表して下さい」
S3「私は、コーヒー、クロワッサン、キュウリとトマトのサラダです。ゆで卵もあります」
S2「私は、ご飯、魚、卵焼き、小松菜のおひたしです」
T「小松菜のおひたしは、給食のメニューにも、度々登場していますね。私は、根も食べますよ」
S2・S3「根っこ…ですか?」
T「細かく切って、葉や茎と一緒にすると気にならないですよ。長すぎる根は使いませんが、おいしいです。給食のように、ニンジンを混ぜると彩りもきれいです」
T「S1さんは、たくさんの食べ物をプレートに置いていますが…。発表して下さい」
S1「(鶏肉の)唐揚げ、コロッケ、キャベツ、ご飯、味噌汁…です」
S2「ちょっと多くない?」
S3「朝から唐揚げとコロッケは考え直した方が、良くないかなあ? どっちかにする?」
S1「(コロッケのカードを外す)……」
T「好きなものを食べたい、という気持ちはよくわかりました。でも、量や栄養素のバランスも大事ですよ」
S2「(S1に対して)大丈夫。野菜もあるし、安心して)
T「また、季節の野菜を取り入れるのもいいですよ。このようなことを漢字一文字で何と言うか知っていますか? わかった人は手を挙げて下さい」
S2「(手を挙げて)旬です」
T「身体は食べたもので作られていると言います。旬のものを身体に取り入れると、栄養面だけでなく、健康にも良いと思います。ぜひ、これらのことを意識して、食事のメニューを見直してみて下さい。また、冷蔵庫にあるものを使って、自分で簡単な調理ができるようになるといいですね。自分で料理ができるようになると、将来大人になった時、自立した生活が送れるようになると思います。インターネットでメニューを探すと、簡単にササッと作れるものが、たくさん載っていますよ。私も使っています。便利ですので、ぜひ活用してみて下さい。では、今日の授業を通して、わかったこと・気づいたこと・思ったことを書きましょう」

栄養教諭からアドバイスを受ける

栄養教諭からアドバイスを受ける

栄養教諭から、
「今後は主食・主菜・副菜が揃った食事を心がけるように」
との、アドバイスを受けました。
「野菜不足に関しても、味噌汁の具材に野菜をたくさん入れるようにすると摂取できる」
など。また「早寝・早起き・朝ごはん」という言葉にもあるように、“食べたものが身体を作る=食の大切さ”についての話もしていただきました。

10時間目には、全授業を通し、どのようなことを学んだのかを振り返りました。後日、本時の様子を学級通信や連絡帳で保護者に伝えると、
「今までは、この食べ物が好きだからと思い込み、毎日同じ食べ物ばかりを朝食のメニューにしていた。今回、わが子が朝食に食べたいものをたくさん写真カードでトレーに並べたことで、朝食のメニューのバリエーションを考え、見直すきっかけになった。子どもが色んなものを食べたいという思いも感じられ、嬉しかった」
との返事がありました。本時の授業を通じて、保護者にも食育について考えていただく、とても良い機会になったと思います。

授業の展開例
  • 野菜の種類や名前などについて、写真カードや図鑑を用いて正確な名前を学ぶ。【理科】
  • 野菜の主な生産地を調べ、都道府県名と場所を白地図で確認する。【社会】
  • 食べ物の味を表現する言葉の語彙数を増やす。また、作文を書く際に表現力が深まるように、調理や食材に関するオノマトペも学ぶ。【国語】

舩倉 麻由実(ふなくら まゆみ)

兵庫県加古郡稲美町立稲美中学校 教諭
26、27年度、文科省のスーパー食育スクール(SSS)の指定を受けて、各教科の学習の中に少しだけ食育の要素を取り入れ、教科学習と関連づけて食育を教える『ちょこっと食育』に学校全体で取り組みました。2年にわたって続けられた食育の取り組みを今後も引き継いでいきたいと思います。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学文学部教育学科 専任講師 小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・舩倉麻由実/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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