2016.10.19
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かつお節が踊るひみつ 【食と科学】[小3以上・理科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第119回目の単元は「かつお節が踊るひみつ」です。

あつあつのたこ焼きにかつお節を振り掛けると、湯気に合わせてかつお節が踊り出す。そんな光景を見たことはありませんか。どうしてかつお節は踊り出すのでしょうか。かつお節に見立てたセロハンを使ってその理由を探ってみましょう。科学クラブなどで取り上げることができる実験です。

用意するもの

用意するもの

用意するもの

次のものを揃えてください。
○ボール
○ぬるま湯
○台ふきん
○セロハン
○トレーシングペーパー
○輪ゴム

方法

手順は次の通りです。
1.お湯を張ったボールに台ふきんを被せ、輪ゴムで留める。
2.好みの形に切ったセロハンを台ふきんの上に乗せる。
3.セロハンが踊るように動き出す。

ゆらゆら踊るかつお節

ゆらゆら踊っているように見えるセロハン

ゆらゆら踊っているように見えるセロハン

かつお節のように長方形に切ったセロハン。セロハンをボールの上に置いてみると……。あれ? 不思議。くるくる、ゆらゆらセロハンが踊っているように見えます。その様子を見た子ども達には、笑顔と驚きの表情がありました。

「えっ、動いている」

と驚く子ども。

「踊っているみたい」

と喜ぶ子ども。皆、色んな表情を見せてくれました。

そこで、

「この踊っているセロハン、何かの食べ物で見たことない?」

と尋ねます。すかさず子ども達から

「かつお節」

と元気な答え。

「そう、かつお節ですね。かつお節も、たこ焼きの上に乗せるとふわふわ動いていますよね。このセロハンは下にあるお湯の水蒸気を吸って伸び、乾燥すると縮みます。この繰り返しが踊るような動きを作っています。たこ焼きの上のかつお節が、ひらひら動くのも同じ理由なのですよ」

と、かつお節が踊る理由を伝えました。子ども達は、

「へぇ」

と感心していました。

教師が解説した後は、子ども達自身で実験してみます。4名程度の班に、かつお節を躍らすボールを一つずつ置いていきます。この時、やけどに気をつけるようにしましょう。子ども達にも、お湯が入っていること、ボールを動かす時は大人と一緒に行うなど注意すべきことを伝えておいてあげましょう。

セロハンは赤・青・黄・緑など色とりどりに用意すると見た目もきれいです。子ども達は配られたセロハンを一生懸命切っています。ぎざぎざに切る子、魚やクラゲの形に切って水族館のようにする子、人の形に切る子、切り方も様々です。中には、切らずに大きなセロハンをそのまま置く子もいました。

また、切り方によって曲がり方が違うことも、子ども達は知ります。子どもの学年に合わせて、皆でセロハンを躍らせた後、切り方の違いについて確認すると理解が深まります。子ども達が楽しんでいる様子を見ていると、ペットボトルのラベルを切って一生懸命に踊らないか実験している子もいました。そんな姿を見た他の子は、飴の袋を薄く切って踊らないか実験しています。こうやって、セロハンのように踊るものや食べ物はないかという研究につなげることもできます。

踊るひみつ

トレーシングペーパーでも踊る

トレーシングペーパーでも踊る

秘密は、セロハンが水分を吸っているからです。セロハンを台ふきんの上に置くと、お湯から出る湯気の水分をセロハンが吸い込み伸びるのです。セロハンの片面だけが水分を吸収すると、吸収した面だけが伸びます。このため、セロハンが丸まったり伸びたりして、踊っているように見えるのです。これはかつお節が踊る理由と同じです。

トレッシングペーパーでも踊るかつお節の実験はできます。セロハンと同じように踊り出します。一度、試してみてください。

手のひらで踊る?

今度は、手のひらサイズに切ったセロハンを用意します。手の上に乗せて、子ども達に見せます。すると、急にセロハンは踊り出します。子ども達も驚いて「わぁ!」という歓声が沸き上がります。子ども達は、なぜセロハンが動くのか、もう釘付けです。

秘密は、手のひらから出る水分をセロハンが吸っているからです。この時、命令して動いているように仕掛けても面白いと思います。実は、セロハンには切り方によって踊り出す方向が異なるという性質があります。セロハンの伸びやすい方向を考えて切り取れば自由な向きに曲げられます。縦に曲がるように切って「縦に伸びろ」と命令してみたり、くるりと丸まるように切って「くるりと回れ」と命令してみたりすると、まるで魔法を使って動かしているように見えます。

授業の展開例
  • 湿度が高いと伸びて、低いと縮むという特徴を利用してセロハン湿度計を作ってみましょう。
  • セロハン以外にゆらゆら動くものはないか、食べ物ではどうか、実験してみましょう。チョコレートやピスタチオを薄く削って踊り出すかどうか、試してみましょう。

松井 香奈(まつい かな)

武庫川女子大学大学院在籍中。教育学の研究の傍ら、ワークショップを取り入れた楽しみながら学ぶ食育の授業プラン作成にも取り組んでいる。現在、「宇宙食」をテーマにした食育プランを開発中。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・松井香奈/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

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