2011.09.29
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「荒畑美貴子さんへの返信」郡山市立大島小学校 教諭 小野 浩司

第十四回は、福島県の郡山市立大島小学校 教諭 小野 浩司さんの執筆です。

東久留米市立神宝小学校 教諭 荒畑美貴子 様

はじめまして。
応援メッセージ、ありがとうございました。
荒畑さんのやさしさ、そして教師としての真摯さ、一文一文からあふれていました。 一人じゃない…あらためて強く強く感じ取らせていただきました。

7月29日に離任式がありました。人事異動が4ヵ月凍結されたためです。
わかっていたこととはいえ、転出される先生方は口々に年度の途中で子どもたちと別れることの辛さを話しておられました。クラスの子どもたちも、同じ思いだったことでしょう。

8月25日には2学期が始まりました。
いくぶん過ごしやすくはなったとはいえ、まだまだ日中暑い日が続きます。朝から扇風機がフル稼働の日もあります。
いつもの2学期の初めなら、日に焼けて真っ黒な子たちばかりのはずだったのですが、今年はとても少なく、子どもたちの夏休みも変わってしまったことを感じました。

9月に入り、1学期で転校していった子どもたちを受け入れた旨の文書も多く届くようになりました。一人一人の子の顔を思い出し、新しい学校でも早く馴染んで、たくさんの友だちをつくってほしいと思わずにはいられません。

先日は一人の女の子がぼくに話しかけてきてくれました。6年生の女の子です。すでに担任の先生から転出予定の話を聞いていました。
「先生、クラブのことなんですが…」
彼女は、ぼくが担当する囲碁将棋オセロクラブの部長で、自分が転校すると部長がいなくなってしまうことの話でした。一緒にオセロなどをすることができなくなってしまうことは残念だけど、残った6年生たちでうまくクラブを運営していくから大丈夫との話をしました。そして、転校まで、勉強や修学旅行、その他の学校生活、精一杯がんばっていこう、心ゆくまで楽しんでいこうという話をしました。

そして、今日、9月11日、あの日から半年が経ちました。
テレビでは、あの時の映像が流れています。
たくさんのものごとを失ってしまいました。
たくさんのものごとが変わってしまいました。
悲しさ、怒り、もどかしさ…そんな負の感情をたくさん抱くことを経験してきました。

しかし、思い返してみると、それだけではないことも、経験することができました。
その中でも一番は、たくさんの人々との出会いです。
同じ市民の方、近隣の市町村の方、そして日本全国のたくさんの方と出会うことができました。
震災のこと、原発のこと、放射線のことについて心を砕いてくださっています。自分のことのように考えてくださっています。何かできることはないかと聞いてくださっています。何もできることはないけど…と声をかけてくださいます。
その一つ一つ、一言一言が、とてもうれしく、とても元気をもらい、とても勇気づけられました。

人は、やけどをしないと本当の熱さを知ることはない。
少し前に見かけた一文です。
ぼくは、この文を否定したいです。
人は経験することでたくさんのことを学びます。実体験をすることは、感情を伴って学習するのでより認知が深まります。真実だと思います。
しかし、人間には、想像力があります。たとえ、離れていても、想像の翼を広げることで、人を思うことが可能です。もし自分が○○だったら…と相手に置き換えることも可能です。

今回、荒畑さんからいただいたメッセージもそうでした。
クラスのお子さんたち、福島に来たことない子、たくさんいるのだろうと思います。それでも、自分自身のことのように問題を受け止めてくださっていること、とてもうれしく、ありがたく思いました。
荒畑さんのクラスのお子さんたち、柔軟で豊かな感受性をお持ちなのだと思います。それを、何かの制約をつけることをせず、伸び伸びと表現し育んでおられるのでしょうね。それは、担任の先生の姿勢の表れなのですよね。
このようなお子さんたちが成長していった将来は…と考えたら、とても明るい気持ちになることができました。そして明日からの子どもたちとの学習に新たな元気をいただきました。

本当にありがとうございました。
そして、これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

平成23年9月11日

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