2026.03.03
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東日本大震災を題材にした授業実践(4) 15年前の福島から家族の大切さを学ぶ(さいたま市立植竹小学校 教諭 菊池 健一さん)

東日本大震災を題材にした授業について、さいたま市立植竹小学校教諭の菊池健一さんが、全6回にわたって連載します。震災から年月が経つ中で、記憶の風化が指摘される一方、学校教育において、命の大切さや日常の尊さを伝えることの重要性は今も変わりません。低学年の子どもたちが震災を自分事として受け止めていく学びの過程を、授業実践を通して報告します。
新聞記事や保護者の体験談を通じ、未経験の震災を子どもたちが「自分事」として捉えていく過程をレポートします。

東日本大震災の福島と家族を「新聞トーク」で学ぶ

家族は15年前の東日本大震災の時にどんなことをしていたんだろう。そして、どんなことを考えていたんだろう。
子どもたちと震災時の家族のことを調べ、震災について詳しく学んできました。保護者に協力を得て、当時の様子について子どもたちのインタビューに答えてもらいました。それだけの年月がたっているにもかかわらず、家族が昨日のことのように語ってくれるのを聞いて、子どもたちはびっくりしていました。

東日本大震災の時、福島県では原発事故があり本当に大変な状況でした。今では重点的に除染が進められ、住めるようになった地域もありますが、依然として避難を続けている方が大勢います。しかし、震災から間もなく15年になる現在、震災の風化という問題もあります。そこで、毎年この時期になると、朝の会の時間に震災関連の新聞記事を示しながら「新聞トーク」を行っています。

今回も、道徳の教科書にある福島県の震災時の資料に合わせて、現地の状況を伝える記事を取り上げて話をしました。
子どもたちは、「原発の近くでも人が住めるようになったのか」「新しい町はどんな街なのか」と関心を持ち、「まだまだ避難をしている人がたくさんいる」という記事の内容にも注目していました。子どもたちの関心も高まってきたところで、福島県での出来事を取り上げ、家族の大切さを学ぶ授業を行いました。

道徳の資料から震災当時の福島と家族を考える

 

浪江漁港から望む福島第一原発

道徳の教科書には、震災当時の福島県で、地震の後に家族のお迎えを待っていた子の記録を収録した資料があります。その資料を活用して、家族の大切さを考える授業を行いました。
資料の中で主人公は、不安な気持ちで家族を待っていたのですが、なかなか迎えが来ないことで不安になり、やっと迎えに来てくれた姉に文句を言ってしまいます。しかし、姉が電車も止まって大変な中で自分を迎えに来てくれたことを知り、今度は姉のために何かをしたいと考えるというお話です。

迎えが遅れた時の主人公の気持ちや、姉や心配してくれていた母の思いが分かった時の主人公の感情などを想像しながら、家族の大切さについて話し合いました。

「寂しかったから、迎えに来るのが遅くなったお姉さんに文句を言ってしまったんだね」
「お姉さんがどうして遅れたかを知った時にきっと後悔したと思うよ」

子どもたちはこのように考えを述べていました。震災について調べる活動をしてきたこともあり、「自分が主人公だったら」という視点で話し合いをすることができていました。先生や家族の震災の時の様子を知っているので、授業の内容がよりリアルに感じられたようです。真剣に話し合いをしている様子が見られました。

保護者アンケートで深まった家族の大切さ

震災遺構 浪江町立請戸小学校

授業の後で、改めて保護者からいただいた、子どもたちが生まれた時の様子や気持ちを書いたアンケートを紹介しました。出産するのが大変だったこと、生まれてきたことをみんなで喜んだこと、そしてずっと守っていきたいと思ったこと…などなど、心にしみるお話がたくさんありました。どのアンケートでも共通しているのは、子どもたちを大切に思っていることです。その思いが子どもたちに十分に伝わりました。

「家族が自分のことを大切に思ってくれることを知りました」
「わたしも家族のために何かをしたいです」

そんな感想が聞かれました。
震災の学習を通して、家族の大切さを伝えたいという思いで授業を行いましたが、十分に子どもたちの中にそんな気持ちが芽生えてきたと感じています。
この取り組みの後で、子どもたちにこう話しました。

「でもね、大切な家族と急に一緒にいられなくなってしまう…そんなことも起こるんだよね」

子どもたちはびっくりした表情。震災で幼い娘さんを亡くされた石巻の佐藤美香さんの顔が浮かびます。大事だった家族が震災によって離れ離れになってしまう……子どもたちにはそんなことは想像もつきません。言葉の出ない子どもたちに、私は静かに語りかけました。

「佐藤さんのお話を聞いて、家族の大切さを考えていけたらいいね」

震災の授業は、これからも続きます。次回は石巻の佐藤さんから命、そして家族の大切さについてお話しいただきます。きっと子どもたちの心に響くお話になると思っています。

次回は、石巻の語り部である佐藤美香さんにお話を聞いた授業についてレポートします。

文・写真:菊池健一

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