2006.08.22
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「夏休み!親子でできる危機管理」(Vol.3) 入っててヨカッタこんなもの!オリジナル非常持ち出し袋をつくろう

もうすぐ防災の日。地域や学校での避難訓練も盛んになる頃ですね。今回は、お子さんと一緒に、我が家オリジナルの非常持ち出し袋(防災袋)を作ってみましょう。

"自分で詰める"ことに意味がある

最近は、初めからパックされた「防災袋」、「非常持ち出し袋」というものがどこででも手に入るようになりました。中身は、水や非常食、救急用品、懐中電灯やラジオなどが一般的ですね。一つ一つを自分で買いそろえる手間が省ける手軽さがうけて、とてもよく売れているそうです。

 一方で、買ってはみたものの、「一度も開けたことがない」、「機器や道具は説明書を読まないと使い方がわからない」、ひどい場合は「どこに置いたか忘れた」といったご家庭もあるのでは?

 あたりまえのことですが、非常持ち出し袋は、「非常時に」「持ち出して」「中身を使う」ことができて初めて「役に立った」といえます。ですから、「自分が使う」場面を具体的にイメージして、必要なモノを一つ一つ確かめながら袋に詰めるという行為は、実はとても重要なことなのです。

あなたの日常にとって必要なモノは?

私の親戚が中越地震で被災した時の話です。当時生まれたばかりの乳飲み子を抱えていた彼らは、しばらくの間自動車での避難生活を強いられたのですが、その時にあればよかったと思ったものが「おむつ」と「ミルク」だったということです。しかし、配給される備蓄品や物資の中にはそれらはなく、とても困ったと言っていました。

 「非常時」というのは「日常」ではない状態を指します。人間は、長い間このような状態に置かれると大きなストレスが生じ、肉体的・精神的に耐えられなくなってしまいます。ストレスが限界を超えれば、被災者同士の争いや、最悪の場合は暴動や略奪まで起きるでしょう。ですから、非常時においてもできるだけ日常に近い状態を維持または再現できるような備蓄品や持ち出し品が必要になってくるのです。

 そして、各家庭の日常生活やリズムにそれぞれ違いがある以上、「日常を維持するためのモノ」については一般的なパック商品や、行政側で用意される支援物資には含まれていないと考えるべきです。

 これはあくまで一例ですが、ヘビースモーカーの方なら「タバコ」と「ライター」は外せないでしょう。女性の方なら衛生用品のほか、「化粧水」や「口紅」などの化粧品類、「きれいな下着」などがあれば、少しは気持ちを明るくできるはず。べとべとの髪が耐えられない方なら、「水を使わないシャンプー」もお薦めですし、共同トイレはイヤ! という方には、「消臭スプレー」や「除菌ティッシュ」なども強い味方です。

 あなたの家庭にとって必要なモノは、あなたとご家族で考え、用意しておかなくてはなりません。

子どもが必要と思うモノ

私たちが行う防災キャンプや各種の研修では、子どもたちに、非常持ち出し袋に入れるものを考えさせるというカリキュラムがあります。そうすると「ゲーム」や「おもちゃ」といった一見、災害時に必要なものなの? と眉をひそめたくなるモノをあげる子どもが多いことに驚かされます。でも、これはあながち間違いではないのです。

 長引く避難生活の中で過度なストレスを抱えている時に、息抜きとしてゲームをすることは必要なことではないでしょうか。また、触っているだけで安心するぬいぐるみなど、皆さんも経験がおありでしょう。想像力の豊かな子どもは、自分なりに避難所での他人との共同生活をイメージし、半ば本能的に自分にとって必要なモノを選んでいるのかもしれませんね。

我が家仕様の防災袋を作ろう

手順1リストづくり  
 まずは、お子さんと一緒に非常持ち出しリストを作ってみましょう。親子別々にリストアップすると、子どもと大人の感覚の違いが出て面白いと思いますよ。「どうしてそれが必要なのか?」をお互いに説明し合いながら、リストをまとめていきましょう。

手順2 袋詰め
 袋詰めも親子で一緒にやることで、子ども自身が我が家の非常持ち出し袋の中身を覚えます。非常食を詰める時には「これは配給が来るまでの間に食べるものだよね」などと問いかけながら、「これはこんな時に使うものだね」と確認をしていくといいと思います。

 また、袋は大人用、子ども用に分けて、自分の大切なものは自分で管理するように、意識づけしておきましょう。袋詰めしたあとで実際に背負って走れるかを実験しておくことも大事です。

手順3 置き場所を決めましょう
 非常時に持ち出せなければ「持ち出し袋」にはなりません。寝ている時、リビングにいる時、お風呂に入っている時に、地震や火事が起きたらどう動くのか? その場合、持ち出し袋はどこにあれば良いのか? をよく考えて保管場所を決めましょう。最近では、家の中に置かず、車のトランクや物置に置いておくという方もいます。安全に保管でき、いざという時も取り出しやすい場所であれば良いのですが、スプレー缶などの可燃物を夏場の車内に置いておくのは危険ですので、中身と相談しながら適切な場所を選んでください。

クライシスインテリジェンス所属。現在、危機管理・安全管理コンサルタントとして学校の安全管理および子どもの安全に関する指導、助言を行っている。

クライシスインテリジェンス所属。現在、危機管理・安全管理コンサルタントとして学校の安全管理および子どもの安全に関する指導、助言を行っている。

手順4 本当に持ち出せるか? 確認をしよう。
 最後にもう一度、子どもたちと訓練をしておきましょう。
・ 真夜中に地震が起きた。停電になった。持ち出し袋の保管場所にたどりつけるのか。
・ 1階で火災発生。2階に取り残された。さて、どうする?
・ 地震で外に飛び出した。余震が続いている。持ち出し袋を取りに戻るべき?

手順4 メンテナンスを忘れずに。
 非常食や水には、消費期限があります。電池は使わなくても消耗します。せっかく作った非常持ち出し袋も何年も放っておいたらいざという時役に立ちません。毎年、防災の日に袋の中身を新しいものに替えるなど、定期的なメンテナンスを忘れずに行いましょう。単に中身を入れ替えるだけでなく、古いものは自宅の庭や公園で擬似避難キャンプを行い、そこで消費してしまうと無駄にならずによいでしょう。一晩だけ電気を点けず、非常食を食べるという経験をしてみると、避難生活がイメージできるかもしれませんよ。

 もうすぐ防災の日です。すでに非常持ち出し袋を用意しているご家庭では中身の見直しを、これからというご家庭ではこの機会に、お子さんと一緒に「我が家の非常持ち出し袋」を作ってみてはいかがでしょう。

(監修:浅利眞 文:須藤綾子 イラスト:じえじ)

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