2009.03.24
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新人危機管理コンサルタント奮闘記(vol.12) 子どもたちの安全のために、大人ができること

もうすぐ新年度の始まりです。卒業式・終業式が終わると、子ども達の世界は広がっていきますね。子ども達が成長することは、親にとっても、また学校の先生にとっても喜ばしいことだと思います。しかし、同時に子ども達の世界が広がり、行動範囲も広がってくると、心配になるのはやはり「子どもの安全」ではないでしょうか。今回は、「子どものために大人は何ができるのか」について、新人危機管理コンサルタントの須藤綾子がお話しします。

「守ってあげる」には限界がある!

皆さんは、どこまで子ども達を守れますか? 幼少期は、親と一緒に行動し、親の目の届く範囲で生活していても、小学校へ入学したら、親から離れ、友達と行動する時間が増えていきます。毎日の登下校、友達と遊びに行く、習い事へ行くなど、子ども達の生活スタイルは、年齢と共に刻々と変化していきます。

 親の保護の下で生活することに変わりはなくても、子どもだけで行動する機会は増える一方ですし、おうちでお留守番をすることもあるでしょう。
 このように、生活環境が変わっていく子ども達を守るために、大人はどこまでのことができるのでしょうか。

 「子どもを守る」と一言で言っても、大人が1日24時間365日、子どもについていることは不可能です。もしそんなことをされたら、子ども達だって窮屈でしょう。常に大人が先回りをして、子どもを危険から守っていたら……。

 前回もお話しした「転んだら痛い」「刃物は切れる」というような「自ら小さなリスク体験を積み重ねて危険を知る、身をもって感じる」ということがないままに成長し、危険に対して無防備な大人になってしまうだけでなく、他人の痛みに対しても鈍感な人間に育ってしまうおそれさえあります。

 このコラムの開始当初から繰り返し申し上げていることですが、子ども自身が「自分の身を守る力を養う」ことが危機管理教育では最も重要となります。「危険を一切体験させない」ことほど危険なものはありません。子ども自身が、危険から身を守ることができるようになるために、まず「危険が存在する」という事実を教えた上で、「危険な目にあわない為にはどうしたらいいのか」を共に考え行動する機会を意識的に与えることが、大人が子どものためにできることなのです。

子ども達の為にできること

そのためには、「危険だからやらせない」のではなく「危険を管理した上でやらせてみる」ということが必要となります。ご家庭で包丁を使わせる時に、「包丁は切るためのもので、手を切れば痛い」ということを教えた上で、実際に使わせてみる。もちろんその際は、「包丁を使う時にはお母さんと一緒の時だけ」「包丁は人に向けない」というような約束を決めることが必要です。

 また、学校では、危ないから柔らかいボールを使用させるのではなく、硬いボールを使って遊ぶとどのような危険があるのか、体に当たるとどれくらい痛いか? を実際に遊びの中から経験させることも重要でしょう。

 最近では、公園で遊具の事故が発生するとすぐに撤去するというように、何でもかんでも禁止をする傾向が目立ちます。大人の側からすればこれが一番楽で確実な対処法に思えるかもしれませんが、安全に使用できるように日常の点検を欠かさない、正しい遊び方をさせるように、手間を掛けてでも大人が環境作りをすることが必要だと思います。

 そうすることで、子ども自身が「危ないからしない」「怪我をしないように注意して遊ぶ」ように判断する、判断できる力を身につけることができるのです。

 私たち大人には、子どもを守ってあげるだけでなく、危険を察知し、回避する能力を子ども達が養えるような環境を作ることが求められています。その為には、家庭や学校・地域の中で、時に優しく、また時には厳しい目で、子ども達を見守ることが必要なのではないでしょうか。

 ぜひ、ご家庭で、学校で、子どもたちの危機管理能力を高めるためにできることを考えてみてください。
 私自身も、子ども達の危機管理教育に関わる大人として、子ども達が自分を守る力を養えるプログラムを考え、実行していきます。

 さて、2年間連載させていただきました私のコラムも、今回が最終回となりました。ここで、私自身の活動や考えたことを皆さんに伝えることができ、様々なことを学び、とても実りのある2年間でした。

 これからも、子ども達が安全で楽しい毎日が送れるように、防犯教室やワークショップの開催に力を入れて邁進していきます。
 2年間にわたりご拝読いただき、本当にありがとうございました。

須藤 綾子(すどう あやこ)

クライシスインテリジェンス所属。現在、危機管理・安全管理コンサルタントとして学校の安全管理および子どもの安全に関する指導、助言を行っている。

文:須藤綾子

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