2008.03.18
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新人危機管理コンサルタント奮闘記(vol.7) 1年生の防犯教室と家庭での防犯教育について

みなさんは小学校1年生などの幼い子どもに対して、どのような防犯教育を行っていますか? 今回は家庭でできる危機管理について、新人危機管理コンサルタントの須藤綾子がお話します。

みなさん、こんにちは。私がこのコラムを担当してから早いもので1年が経とうとしています。このコラムを通して、色々なことを学ぶことができました。これも、読んでくださる皆様のお陰です。
 さて、今回のお話は、今年度1年間をかけて実施した防犯教室を通して学んだことや、家庭でできる危機管理についてお話ししようと思います。

 今年度、小学校1年生対象の防犯教室を実施しました。
 この仕事に携わってから、小学生が対象の防犯教室には何度か参加をしてきましたが、小学校1年生(低学年)を対象としたものは、初めての経験です。
 実際に何校も回って授業を行ってきましたが、高学年の防犯教室とは違う難しさを感じました。

1年生に「防犯」を伝えることの難しさ

今まで行ってきた防犯ワークショップでは、高学年を対象にしており、自分達で防犯について考えるという内容でした。子どもたちから、意見を聞きだし、どうしたら恐い思いをしないのだろう、恐い思いをした後はどうしたらいいのだろう、ということを考え、防犯について考える授業でした。

 高学年であれば、ある程度自分で考え、行動することは可能です。グループ内で話し合い、意見を交換することもできます。しかし、1年生となると話は別。彼らにいかにして1時間の授業を行うのか、どうすれば話の内容が伝わるのか……。私にとっては大きな課題でした。

 「ぼうはん」という言葉1つをとってみても、1年生にわかるように説明をすることは非常に難しいことです。大人であれば、読んで字のごとく「防犯」=「犯罪を防ぐ」という意味であることは理解できます。しかし、入学したての子どもに対してこの説明では通じないでしょう。仮に、「犯罪を防ぐこと」と説明をしても、今度は「犯罪ってどんなことなの?」もあわせて説明しなくてはなりません。

 子どもたちの発達段階や理解力にあわせ、わかる言葉で、その意味とこちらが意図していることをきちんと伝えなければならないのです。教員ではない私にとっては、これが最初の壁でした。

家庭での防犯教育の重要性

学校で防犯の授業を行っていて感じたことは、防犯教育の中で、学校でできることは限られていること。学校という比較的守られた空間の中で危険な状況を想定しながら、いざという時の訓練をし、とっさの対処法を身に付けることは、教員にとっても児童にとっても一朝一夕にできることではありません。

 子どもたち自身が、危険を自分で判断し、回避できるようになることが防犯教育の目的のひとつですが、これを学校の中だけで身に付けられると考えるのは無理があるでしょう。やはり一番近くにいる親御さんが正しい知識とノウハウを持つことが必要です。そして、ご家庭での日常的な会話やルールを通して、子どもたちの自己防衛力を高めていくことが子どもを守るための王道だと思うのです。私自身、そのことを痛感した一年でもありました。

家庭でできることとは?

では、家庭でできることは、どんなことなのでしょうか・・・。
 まずは、子どもと話しをして、子どもが自然に親に話せる環境を作ることが第一歩です。こちらから根掘り葉掘り聞き出すという方法もありますが、子どもが、「口うるさい」とか「監視されている」というような感覚に陥ってしまいかねません。そうなると、子どもが口を閉ざしてしまう可能性があります。子どもがどんな危険を体験したのか、何を恐いと感じているのかを知ることが難しくなってしまいます。

 そうならないためには、できるだけ、子どもが自発的に親に話ができるような雰囲気を作ること。どんなことでも正面から一生懸命聞いているよというメッセージを親が子どもに伝えることができれば、「今日ケンカしちゃったよ」「公園でお兄さんが遊んでくれたんだ」などという些細な出来事も話してもらうことができるでしょう。

 つぎに大事なのは、子どもが話したこと、そのときの表情や態度。その中にある情報を見過ごさないことです。例えば、先に挙げた「公園でお兄さんが遊んでくれたんだ」という言葉。これにも、もしかしたら危険な要素が含まれているかも知れません。そのお兄さんは、友達の兄弟なのかもしれませんし、近所に住んでいる仲の良いお兄さんかもしれません。しかし、その人が始めて合う知らない人であるかもしれませんし、子どもは以前から知っていても、親のほうではどこの誰か把握できていない場合もあります。親は必ず、子どもの話に登場する人物がどんな人なのかを知っておく必要があります。

 最後に、もうひとつ効果的な方法をご紹介しましょう。簡単です。親子で交わす言葉の定義(意味)をしっかりと共有しておくということです。そのうえで、わかりやすく覚えやすい約束事も決めておくとよいですね。

 これは、以前もお話ししましたが、親子で「ひとりで知らない人にはついていかない」と決めたとしても、具体的に「知らない人」、「ひとりで」の意味が子どもに伝わっていないと有効なルールとはいえません。例えば「学校の帰り道で」、例えば「夕方の公園で」、例えば「ともだちと自転車に乗っていて」などなるべく具体的な状況を与え、そんなときにこのルールをどうやって適用するかの意識あわせを地道にやる作業です。多くの状況を想像すればするほど、子どもの応用力、つまり危機回避能力は高まっていくと思われます。 

 子どもの理解力や成長に合わせて、親もいっしょに勉強するつもりで、あせらず段階を踏んで進めていきましょう。
 私も、危機管理コンサルタントとして、勉強中です。実際に現場を見ながら、どうすればいいのか、自分ならどうするか、を考えていきたいと思います。

文:須藤綾子

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