2008.01.22
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新人危機管理コンサルタント奮闘記(vol.6) 見やすく、使いやすい危機管理マニュアルってどんなもの?

皆さんはいざという時の「危機管理マニュアル」を用意していますか? 今回は、実際に使えるマニュアルとはどういうものかについて、新人危機管理コンサルタントの須藤綾子がお話します。

2008年になりました。本年もよろしくお願いします。
この間、2007年が明けたと思いきや、新年を迎えるサイクルが年々早くなっているような気がする今日この頃です。
 ここのところ、とある地域の危機管理マニュアルの見直しをしています。そこで、今回は、マニュアル作成中に感じたこと、マニュアルってどんなものなのか・・・について感じたことをお話しようと思います。

使いやすくないと意味がない

今回の作業をするにあたり、いくつかのマニュアルを手に取りました。一言で「マニュアル」といっても、様々なものがありますよね。
皆さんも、日常生活で様々なマニュアルを目にしたことがあると思います。電化製品や携帯電話など、私達が普段目にするマニュアルは様々です。
その中で「マニュアルを読んでもよくわからない」「厚すぎて(文章が多くて)読む気がしない」なんて経験はありませんか?
 私自身も経験があります。文字だけで説明してあるもの、絵や図がないため、どこの部分を指しているのかわからないものもありました。さらには、あまりにも細かい字でビッシリ書いてあるため、読む気にならないものまで…。
 そんな時いつも「読んでもわからない、読む気にならないものって意味がない…」と心の中で呟いていました。 
 この仕事をして改めて「見やすく・使いやすいマニュアル」、逆に言えば、「読んでもらえる・見てもらえるマニュアル」の重要性に気がつきました。マニュアルは、読まなければ・使えなければ意味がないのだと。

いざという時に使えるマニュアルとは

今まで例に挙げたマニュアルは、いわば製品の取り扱い説明書で、危機管理マニュアルとは少し違うかもしれませんが、困った時に見るもの、方法を確認するためのものであることに変わりはありません。危機管理マニュアルもそうではないでしょうか。
 例えば、学校の不法侵入対応マニュアルを作成するとしましょう。不審に感じる人と学校内で出会ったらどうすればいいか、どう対処すればいいのか、を文章で書いてあるものと、図で次の行動を示してあるものとだったら、非常事態時にはどちらの方が見やすいでしょうか。
 もちろん、日頃から非常事態に備えて対応方法を頭に入れておくためのものとしては、手順や対応方法を細かく記しておく必要があります。
 しかし、非常事態時においては、普段は頭で理解していることでも、頭から抜けてしまうことがあります。
 例えば、自分が火災現場に遭遇したとしましょう。そんな時、皆さんは冷静に救急車を呼べる自身がありますか?
 私の知り合いの話になりますが、交通事故現場に居合わせた時、頭が真っ白になってしまい救急車を呼ぶのに119番が出てこなかったという話を聞きました。私自身も、数年前に火災の現場を目撃し、119番通報をしたものの、そこの住所も言えず、ただ「火が…火が…」を連呼してしまったことがあります。その時は周りの人が助けてくれたので、最終的には何とか住所等必要事項を伝えることが出来ましたが。
 しかし、こう対処したら次はこうする!というように、行動を導いてくれるものがあったらどうでしょう。

マニュアルとチェックシート

このように、人は非常事態になると、パニックを起こしてしまい、普段は普通にできることもできなくなってしまうものです。そのような時に、長い文章を読む余裕はありません。そうは言っても、非常事態が発生するとうまく行動できないことを考えると、日頃から読んでおくもの(マニュアル)と非常事態時に手順を確認するもの(チェックシート)の2種類が必要になるのです。
 では、実際にどのような点に注意して作成すればよいのでしょう。
 日頃から読んでおき、非常時にはどう対応したらよいかを頭に入れておくためのマニュアルは、項目ごとにわけて、細かく書いておく必要があります。それを全員が読んでおくことで、非常事態時の対応について共通認識を持つことができるようになります。
 しかし、非常事態時にこの細かいマニュアルを読んでいる余裕はありません。そこで、必要になるのがチェックシートです。チェックシートは、非常事態発生時に何をすればいいのかを順を追って見ることができるようにすることが重要になります。非常事態時に何枚もの紙を確認することは難しいため、実際に行うこと、「行動」だけを記し、1枚の紙で作成することも大切です。
 救急車や警察に通報をすることが必要となる場面では、通報先の電話番号も記しておくといいですね。そうすることで、パニックになって電話番号が出てこなくても、書いてある番号を見て電話をかけるだけでよくなります。

想定する危機を明確に

そして、安全管理マニュアルを作成する際には、どの非常事態を想定したものかをはっきりさせること、自分達に出来ることとやらなくてはいけないこととの差を事前に確認することも必要です。
 地震を想定したものなのか、不法侵入を想定したものなのか、火災を想定したものなのか…。その危機によって、対処方法も異なりますし、避難場所も変わってくるでしょう。
 非常事態が発生した場合、何をしなくてはいけないのか、そして自分達には何ができるのかを考えた時、自分達だけでは手の回らない部分が見つかるでしょう。その時に、その部分をどのように補うのかを考えておくことも必要なことです。
 さらに、一言で危機管理マニュアルといっても、場所や地域性、建物や場所の構造によって変わるものであり、必ずしも全てが同じものを使えるわけではありません。もし、今あるマニュアルが自分達にその内容がそぐわないと思ったら、見直しをしていけばいいのです。
新しい製品に古い製品のマニュアルが使えないように、危機管理マニュアルも、時が流れ、環境が変われば、同じものは使えません。必要に応じて内容を変えていくことになるでしょう。

まとめ

今回、危機管理マニュアルを作成してみて、その難しさを痛感しました。内容はもちろんですが、マニュアルに加えてそれを見れば非常事態のパニック状態の中であっても行動することが出来るチェックシートもなければ意味がないのだと感じました。使いやすさ、見やすさ、読みやすさに気をつけ、実際に使えるものも作成しなくてはいけないのだと。
 まだ作業は続きますが、詰め込みすぎることで見にくくなり、読んでもらえない、非常時に意味を成さないものだけは作成してはいけないと心に留め、今後も頑張っていきたいと思います。

(文:須藤綾子)

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