2006.07.25
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「夏休み!親子でできる危機管理」(Vol.1 ) 子どもとのコミュニケーションから始まる危機管理

今回から3回に渡り、「夏休み!親子でできる危機管理」を特集します。第1回目は、子どもとのコミュニケーションが子どもたちを守るうえでいかに大切か、についてお話します。

親にとっては不安な夏休み!?到来

さぁ夏休み。学校がお休みに入ると、子どもたちが自由に行動できる時間が増え、同時に行動範囲も広くなります。一方で保護者の方が24時間、子どもたちを見守ることは困難で、子どもをターゲットにした事件が多発する昨今では、親御さんの不安は募るばかりですね。
 それでは、どうすればよいのでしょう?

 最近では、地域ボランティアによる防犯パトロール等が強化されています。また、子どもや学校の先生を対象にした防犯講習会も増えています。こうした、地域や行政、警察、学校を巻き込んだ取り組みが進むというのは大変よいことですが、これらは多くの方々の協力があってはじめて実現することです。
 今回の特集では、各家庭で、親子で、すぐに実行に移せ、しかも効果的な対策というものをご紹介したいと思います。

まずは親子の会話から

さて、ここで質問です。皆さんは、お子さんと毎日どれくらい会話をしていますか?

a) 昨日お子さんがどこで誰と何をして遊んでいたか、ご存じですか?
b) 登校時の通学路と下校時の帰宅路はいつも同じ道でしょうか?
c) お子さんが最近、親や先生以外の大人と会話したことは?
d) 今月のお小遣いで買ったものは?

あなたは、どれくらい答えられましたか?

実は、これらをお子さんから聞き出すだけでも、子どもの身の回りにある危機に気づくチャンスが生まれるのです。上記の質問の答えが、以下のようなものだったら、あなたもドキッとするのではないですか?

答a) 「昨日は、メッキ工場の裏の水路にザリガニを探しに行ったよ」
答b) 「帰りは、林を抜ける近道を通るよ。○○ちゃんといっしょだから大丈夫」
答c) 「さっき、車に乗った若い男の人に駅までの道を聞かれたの」
答d) 「ゲームの攻略法が載ってる雑誌をインターネットで買ったけどまだ届かないんだ」

 どんな危機管理もまずは、情報収集が基本です。現状がわからなければ対策の打ちようもありません。親子の会話は、現状把握のチャンスであり、毎日のちょっとした時間を利用して誰にでもできる有効な方法なのです。

キーワードは「あなたならどうする?」

次に、この親子の会話を少し工夫することで、情報収集からもう一歩進んだ危機管理対策ができることをご説明しましょう。

 それは、「子どもに質問をして考えさせる」ということです。こうすることで、単に危機情報を聞き出すだけでなく、「それがなぜ危機なのか?」、「どうすれば危機を回避できるのか?」といったことを子ども自身に考えさせる機会を与えるのです。

 先ほどの4つの質問を例にあげてみましょう。それぞれにこう質問を返してみるのです。

問a) 「水路の水が毒だったらどうする? 友だちが水路に落ちたらどうする?」
問b) 「もしも林のなかから急に人が出てきたらどうする?」
問c) 「もしも車の人が駅までいっしょに乗ってって言ったらどうする?」
問d) 「友だちの分も雑誌を送るから友だちの住所も教えてってメールが来たらどうする?」

 これらは一例にすぎませんが、大切なのは「危険だ」と説明するまえに、「やめなさい」としかるまえに、子どもたち自身に考えさせることです。
 そうやって、質問を繰り返しながら、子どもたち自身が、危機の何たるかに自ら気づき、どう対処すればよいかを自分自身で判断する訓練を行うことができるのです。

須藤綾子(すどうあやこ) クライシスインテリジェンス所属。現在、危機管理・安全管理コンサルタントとして学校の安全管理および子どもの安全に関する指導、助言を行っている。

須藤綾子(すどうあやこ) クライシスインテリジェンス所属。現在、危機管理・安全管理コンサルタントとして学校の安全管理および子どもの安全に関する指導、助言を行っている。

もちろん頭のなかでシミュレーションした危機回避策が常に有効というわけではありません。例えば、私たちが小学校で行っている防犯ワークショップでは、大人の手をふりはらって逃げることができると思っている子どもが多いことに驚かされます。実際にやってみると、ふりはらうどころか捕まってしまい、頭で思っていたようにはいかないことに、はじめて気づくのです。

 確かに、子どもに対して「知らない人に声をかけられたらついていかないこと」「腕をつかまれたらふりはらって逃げる」など、「こうなったらこうする」と対処法を教えることは大切なことですが、さらに「自分ならどうするか」「本当に自分にできるのか」「なぜそうするのか」を理解し、危険を回避することを考える。この癖がつくと、状況に合わせた判断が素早くできるようになるのです。
 会話のタイミングは、おやつを食べながら、お風呂にいっしょに入って、テレビのニュースを見ながらなど、どんなきっかけでも構いません。常に「あなたならどうする?」と聞いてみることが、親子の習慣になるようにしたいものです。
 今日から、さっそくあなたのご家庭でもやってみませんか?

監修:浅利眞 文:須藤綾子 イラスト:じえじ)

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