2007.06.19
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新人危機管理コンサルタント奮闘記(vol.3) 危険な場所、安全な場所ってどんなところ?

私達の生活圏内で危険な場所と安全な場所とは、一体どんなところを指すのでしょう? 新人危機管理コンサルタントの須藤綾子がお話します。

新学期が始まり、早いもので2ヶ月が過ぎました。梅雨に入り、子ども達も屋内で遊ぶことが多くなっていることでしょう。安全に楽しく元気に遊んで欲しいですね。

 危険な場所と安全な場所。私達が生活をしている中で、道や公園をこの二つに分けることができるのでしょうか。どんな場所が危険で、どんな場所が安全なのでしょう。
 第三回目の今回は、このことについてお話させていただきます。

同じ場所でも変化する危険と安全

子ども達と保護者の方と町歩きをして、危険な場所と安全な場所について考えていたときのこと。話をしているうちに、大人と子どもでは、危険だと感じる場所に違いがあることが分かってきました。

 公園にたどり着いたときのことです。周りには木々が鬱蒼と茂り、あまり人目につくような場所ではありませんでした。私は、何かあったときに助けを求められないように感じました。保護者の方も、「この公園は人目につかないし、子ども達も遊ばないと思いますよ」「昼間なのに木が茂っているせいで暗く感じるし」「人も少ないし」「何かあったら危ないから」とおっしゃっていました。
 しかし、実際の子ども達の反応は大人が考えていたものとは全く異なりました。「この公園はよく遊んでるよね」「あまり人もいないし」「そんなに危なくないよね」
 人があまりいないからよく遊ぶ…? 私の頭の中に「???」が浮かんできました。人があまりいないから「遊ぶ」、人がいないから「遊ばない」のではなく??

 子ども達の話では、その公園に大人(子ども達が言う変な人)が一人でいるところを見かけないし、大人がいても子連れのお母さんがいるくらいで、同じ時間に子ども達がたくさん遊んでいるとのこと。さらに、人通りが少ないと思っていた道も、帰る時間には、買い物帰りの人や学生が多く出歩いているということも分かりました。
 そこで、「もし遊んでる人があんまりいなかったらどうするの?」と聞いてみたところ、返ってきた答えは、「一人だったら遊ばないけど、友達がたくさんいたら遊ぶ」というものでした。

 私を含めた大人は、その公園によく行っていたわけではなく、人が少ないと人目につきにくい=何かあった時に助けを呼べない、というように考え、公園の見た目だけで危険だと判断していました。しかし、状況によってはそうとは言えない場合もあったのです。子ども達は、自分達の中でいろいろな条件を考えて、その公園を安全な場所として考えていました。私達大人は、子ども達との考え方の違いに、驚くばかりでした。

危険と安全は隣り合わせ

 大人と子どもでは、見える世界が異なります。背の高さや目の届く範囲もそうですし、今まで経験してきたこと、行動範囲も違います。
 大人が思っている「危険な場所」が、子ども達にとっても「危険な場所」とは限りません。もしかしたら、大人が「安全だ」と思っている場所が子ども達にとっては「危険な場所」、一人では行きたくない場所なのかもしれません。

 外からもよく目が届き、人もわりと多い公園。このような公園は、何かあっても助けを求められるだろうし、人目につきやすいから悪意をもった人間が子ども達に近づきにくいだろうと考えがちです。しかし実際には、人目につくところで堂々と優しい人のふりをして子ども達に近づくことも考えられ、大人が多いからこそ、そこに入ってしまえば目立ちにくいとも言えます。
 自分のいる状況、置かれている環境によって危険だと感じる場所は変わり、危険と安全が入れ替わることもあるのです。

 先にお話した子ども達のように、最終的には、子どもが自分で危険かどうかを判断するしかありません。だからこそ、大人と子どもが感じていることを確認しあい、大人は子ども達がどこで遊んでいるのか、その時間はどういう環境なのかを知ることが必要なのです。
 例えば、子どもに伝える時に、「あの公園で遊ぶときは、周りに知っている大人がいるときだけにしよう」とか、「この道は明るい時間だけ通ろう」というように、最も危険だと思う時間や場所を避けるように話をしてみてはいかがでしょう。
 その時に、大人が思っていることと子ども達が感じていることに違いが出てくるかもしれません。そうなったら、一緒に確認をしに行くのも一つの方法です。

 一言で「こういう場所は危険」と決めてしまうのは簡単です。しかし、一度そう決めてしまうとその条件に当てはまらない場所を安全だと思い込んでしまう可能性があります。このことこそ、自分の周りの状況を見ることができなくなってしまい、安全を過信してしまうことに繋がりかねません。
 100%の安全も、100%の危険もない。どんな場所でも、危険と安全が隣り合わせなのです。今回の活動から気づいたこのことを、子ども達に伝えていきたいと思います。

(文:須藤綾子)

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