2026.10.22
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「だったら...」を引き出す教材4 <3年「わり算」> 「はてな?」「なるほど!」「だったら…」で作る算数授業(第19回)

今回は、わり算のきまりの教材です。わり算のきまりとは、わり算ではわられる数とわる数に同じ数をかけてもわっても商は変わらないきまりのことです。

わり算のきまり

学習指導要領では、「除法に関して成り立つ性質」として明記されています。これを式で表すと次のようになります。

a÷b=cのとき
(a×m)÷(b×m)=c
(a÷m)÷(b÷m)=c

第5回や第6回でも触れましたが、5年「小数のかけ算・わり算」や6年「分数のかけ算・わり算」で児童自ら計算の仕方を創り出すための大切な知識です。しかし、全国学力・学習状況調査の過去のデータから、このわり算のきまりは、児童にとって少し難しいことが分かっています。

平成31年度の全国学力・学習状況調査の算数の問題では、次の2問でその調査が行われています。

【3】(2)示された計算の仕方を解釈し、減法の場合を基に、除法に関して成り立つ性質を言葉を用いて記述できるかどうかをみる。

 正答…31.3%
 誤答…58.0%
 無回答…10.7%

【3】(3)示された計算の仕方を解釈し、被除数と除数にかける数や被除数と除数を割る数を選び、計算しやすい式にして計算することができるかどうかをみる。

 正答…75.0%
 誤答…22.9%
 無回答…2.1%

これらの結果から、具体的な数値を入れて計算することができても、言葉を用いて表現することが難しいことが分かりました。また、報告書の問題(3)の解答類型と反応率をみると、約14%が、わられる数とわる数に同じ数をかけたり割ったりすることができないことも分かりました。

これらの課題を踏まえて、授業では、次の3つの工夫をしたいと考えます。

  1. わり算のきまりを子供が自ら見いだす場面
  2. 被除数・除数の数の範囲を子供が自ら広げる場面
  3. 見いだしたわり算のきまりを表現させ、一般化する場面

1.については、スクールプレゼンターで作った「わり算スロットマシーン」を使い、商が3になる式をばらばらにいくつか提示します。出た順に黒板に貼っていた式を被除数・除数に目をつけて並び替える場面をとることで、まだ出ていない式やわり算のきまりに気付くことができると考えます。

2.については、提示する式に被除数と除数が空欄のものを用意し、教師が困った場面を見せます。子供たちから「だったら、自分たちで式を作ればいい!」と動き出す場面をとります。わり算のきまりを活用しながら、被除数・除数の数の範囲を広げていくと考えます。

3.については、はじめのうちはわり算のきまりを具体的な数で表現すると予想されるので、「~のときだけなんだね。」や「どの数でも当てはまるような言い方にできないかな?」など問い返し、算数の言葉を使った一般的な表現に高まるように促します。

「教科調査問題アーカイブ」の紹介

今回の原稿作成でも活用しましたが、10月6日から「教科調査問題アーカイブ」(国立教育政策研究所)が公開されています。全国学力・学習状況調査の過去のデータの検索が、素早くできるようになっています。

例えば、キーワードに「除法に関して成り立つ性質」、教科に「算数・数学」、学校段階に「小学校」を入力・選択すると、「解説資料」「報告書」「授業アイデア例」を横断的に検索し、その結果を見ることができます。※図はその検索結果の画面を転記したものです。

注意したい点は、今のところデータの検索範囲が、令和3年度から令和7年度までになっていることです。それ以外の年度は、教育課程研究センター「全国学力・学習状況調査」から知りたい年度のデータを開いて調べることになります。これはけっこう面倒な作業になるので、私は、過去の報告書全てのPDFをGemin Notebookに読み込ませ、それで検索しています。それでも今回紹介した「教科調査問題アーカイブ」の手軽さには敵いません。早くデータの対象範囲が広がることを期待しています。

授業の様子

はてな?

まず、「わり算スロットマシーン」と黒板に書きました。

そして、電子黒板の画面上の「スタート」をマウスでクリックし、わり算の式がスロットマシーンのように動き出す様子を見せました。

「マウスで『ストップ』をクリックしたい人は手を挙げてください。」と子供たちに投げかけました。

このように詳しい説明もなくテンポよく進めたのは、この後、式を10個以上扱ったり、わり算のきまりの表現の一般化させたりするのに時間がかかると予想していたからです。「だったら…」をメインで扱う授業は、後半の時間を確保する工夫が必要です。

元気よく手を挙げたAさんにマウスを渡し、ストップをクリックしてもらいました。

出た式は「12÷4」です。こちらから発問しなくても、「答えは3!」とあちらこちら声が上がりました。

あらかじめ用意した短冊カードに「12÷4=3」と答えを書いて貼りました。

すると、「はい!」と揃った声が聞こえました。自分もクリックをしたい子たちが進んで手を挙げたからです。

Aさんに次の子を指名してもらいました。
次の式は「18÷6」。

先ほどと同じように「答えは3!」とあちらこちら声が上がり、「18÷6=3」と書いた短冊カードを「12÷4=3」の式の下に貼りました。

このようなやりとりを繰り返して、黒板に以下の4つの式が上から順に貼られた状態になりました。

 12÷4=3
 18÷6=3
 6÷2=3
 24÷8=3

「これを見て、何か見えないかな?」と発問しました。

実は、「18÷6=3」の後、「また答えは3かな?」や「答えが3になる式しか出ないんじゃない?」などのつぶやきが聞こえていましたが、敢えて聞こえないふりをしていました。前回の連載の第12回や第34回でも紹介した手法です。つぶやくのではなく、挙手して説明するくらいまでエネルギーが高まることを期待していたからです。

期待どおり、先ほどつぶやいていたうちの一人のBさんが手を挙げたので、指名しました。

「3だけ答えが出る。」
とBさんが発表しました。

周りの子が頷いている中で、Cさんだけがもっと言いたそうな顔をしたので指名しました。

「3の答えになりそう。」
とCさんが言いました。

ともするとBさんとCさんは同じことを言っていそうです。

しかし、Bさんは今までもデータから帰納的に考えて共通している「商が3」について話し、CさんはBさんの話を踏まえ類推的に考えてこれから出る式も商が3になることを話しています。

そこで、Bさんの発表を褒めた後、Cさんの考えをみんなで分かち合うことにしました。

なるほど!

「Cさんが『3の答えになりそう』と言っているけど、分かった人はいますか?」と発問しました。

すると、Dさんが手を挙げたので指名しました。

Dさんは、黒板の前に出てきて、
「もっと見やすくしていいですか?」
と短冊カードを動かし、次のように並び替えました。

・6÷2=3
(間)
・12÷4=3
(間)
・18÷6=3
(間)
・24÷8=3

そして、並び替え終わると、
「途中もある。」
と言い座席に戻りました。

みんなは黒板をじっと見て、しばらくすると、近くの子と見えてきたことを話し始めました。

「あそこは『9÷3=3』だ!」
「『15÷5=3』も入りそう。」
「『3÷1=3』もあるね。」

そこで、子供たちが見えてきた式を発表させ、短冊カードの間を埋めていきました。

黒板には、被除数は3~27までの式が順序よく並びました。

Eさんが大きな声を出して、
「大発見しました!」
と手を挙げたので、説明させました。

「3・6・9って3ずつ増えて、1・2・3って1ずつ増えている。」

具体的な数で表現していたので、「なるほど、3・6・9、1・2・3のときだけなんだね。」と問い返しました。

Eさんは少し困った顔をして、
「÷の左側が3ずつ増えて、右側が1ずつ増える。」
と言い直しました。

「『わられる数』と『わる数』で言い換えられないかな?」とさらに問い直しました。

Eさんは、ひらめいた顔をして、
「わられる数が3ずつ増えて、わる数が1ずつ増えた!」
と算数の言葉を使った表現になりました。

本来なら、さらに「わり算ではわられる数とわる数に同じ数をかけてもわっても商は変わらない」まで高めたいところですが、式が増えた時の方が分かりやすいと考え、後半に回すことにしました。

だったら…

再び、Aさんにわり算スロットマシーンのストップをクリックする子を選んでもらいました。

その子がストップをクリックすると、「え~!!」と驚きの声が上がりました。画面に「  ÷  」の式が出たからです。

「壊れたみたい…。これでわり算スロットマシーンは終わりだね。」と残念そうに発問すると、Fさんがこんなことを言い始めました。

「短冊カードがまだあるから、みんなでそれに新しく式を作って、パラパラして続ければいい。」

みんながいいねと言わんばかりに、頷いています。そこで、みんなで商が3になる式をノートに書いてもらうことにしました。

式をノートに書いている最中、机間巡視をしていると、

「いくつ書いてもいいの?」
「習っていない計算でもいいの?」
「答えが3かどうか自信がないな…」
などの質問を受けました。

今ここで、「わり算ではわられる数とわる数に同じ数をかけてもわっても商は変わらない」を確認するタイミングだと思い、その説明をしました。

子供たちのノートを見ると、わり算のきまりを使って次のような式が書かれていました。

  • 30÷10(『3÷1』にわられる数とわる数に10をかけた)
  • 120÷40(『12÷4』にわられる数とわる数に10をかけた)
  • 36÷12(『12÷4』にわられる数とわる数に3をかけた)
  • 45÷15(『9÷3』にわられる数とわる数に5をかけた)

子供が考えた式を短冊カードに書いている途中で、チャイムが鳴りました。次の時間、集めた式をパラパラをめくり、みんなで答えを確かめる約束をして授業を終えました。

次回は、1年「繰り上がりのあるたし算」です。お楽しみに!

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

小中一貫三戸学園 三戸町⽴三戸⼩学校・三戸中学校 教頭
子供たちが夢中になる算数授業づくりに取り組んでいます。算数専科や複式学級の指導の経験もあります。今、チャレンジしているのは、算数の教材研究や授業分析でのGemini Notebookの活用です。「Gemini認定教育者」を取得しました。算数の教材づくりの会「ガウスの会(代表:細水保宏)」の会員。

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