2026.07.23
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算数手品で「はてな?」を引き出す4<3年「たし算のひっ算」> 「はてな?」「なるほど!」「だったら…」で作る算数授業(第16回)

今回はたし算の筆算を使った算数手品です。3年生以上であればどの学年でもできますので、2学期はじめの算数授業にもお薦めです。

手品のやり方

動画のように子供と先生が順番に好きな2桁の数を言い、筆算の形に板書しながら、それらを合計します。2桁同士を4回も足す計算なのに、先生があっと言う間に合計を出すので、子供たちは驚きます。

さらに、合計も合っているので、あまりの不思議さに、思わす「もう一回やって!」と声が上がること間違いなしです。

<手順>

  1. 子供に2桁の好きな数を言ってもらう。(例:子供23)
  2. また、子供に2桁の好きな数を言ってもらう。(例:子供72)
  3. 今度は、先生が好きな数を言う。(例:先生27)
  4. 次に、子供に2桁の好きな数を言ってもらう。(例:子供55)
  5. 今度は、先生が好きな数を言う。(例:先生44)
  6. ここまでの合計を出す(例:合計221)

タネ明かしは、「2.と4.の子供が言った数の後に、先生は99になる補数を言う」と「1.の数から2少なくした数と200をたす」です。式で表すと以下のようになります。

23+72+27+55+44=23+(72+27)+(55+44)
              =23+99+99
              =23+(100-1)+(100-1)
              =(23―2)+200
              =221

子供たちからこの式変形を引き出すことは難しいでしょう。

しかし、このたし算の筆算の算数手品をしているうちに、答えの下2桁が最初に答えた数から2引いた数と一致していたり、先生が言う数が前の子が言った数と合わせて99になっていたりすることには、気付いてきます。

それらを生かしながら、先生の速く計算できる理由は、99を100より1小さい数と見ていることを理解させていきます。

この授業をとおして、数を多様に見たり工夫して計算したりする力を培うことができます。

この教材は、「参観授業で使いたい教材30(東洋館出版社・2013)」に掲載されている教材をアレンジしたものです。

本では101になるように先生が数を言いますが、本実践は99になるようにしています。また、本では式で板書しますが、本実践では筆算にしています。

子供の実態やねらいによって教材をアレンジすることで、授業力向上につながります。

この本でも細水保宏先生(ガウスの会会長、元筑波大学附属小学校校長、現明星学苑明星小学校校長)が巻頭言で、以下のような例を用いて多様な考え方が出てくるアレンジの仕方について触れています。

もとの問題 1+2+3+4+5+6+7+8+9(合計45)

アレンジ① 11+22+33+44+55+66+77+88+99(合計495)

アレンジ② 111+222+333+444+555+666+777+888+999(合計4995)

ほかにも参考になる教材がたくさん掲載されていますので、興味をもった方は手に取ってみてください。紙版は中古になりますが、電子版の購入も可能です。

授業の様子

はてな?

「この前修行をして、新しい計算手品ができるようになりました!」と言いながら、「計算手品」と黒板に書きました。

「今度はどんなの?」
と、何度か算数手品を披露しているせいでしょう、子供たちが楽しみにしている反応です。

やり方は言葉であれこれ説明するより、実際にやって見せるのが一番です。

まずは、日直のAさんに2桁の好きな数を言ってもらいました。

「10。」

黒板にその数を書き、Aさんの後ろのBさんに2桁の好きな数を聞きました。

「20!」

その数を10の下に書いた直後、先生の好きな数は79だと言いながら、黄色のチョークで書き足しました。

先生の言った数に黄色の色を使うのは、子供たちに先生が99になるように数を決めていることに気付いてもらうための工夫の一つです。

次にBさんの後ろのCさんに当てました。

「99!」

黒板にその数を書き、「そうなると、先生の好きな数は0になっちゃうな…」と困った素振りを見せながら、黄色のチョークで書き足しました。

この困った素振りも先生が99になるように数を決めていることに気付いてもらうための工夫です。

子供たちは算数手品のタネを見つけようと必死なため、些細な先生も態度も見逃さないからです。

「さて、皆さん、合計はいくつでしょう?合計は…、208ですね!本当かどうか計算してみてください。」
と問いかけると、子供たちは一斉に計算を始めました。

しばらくすると、
「え?合ってる!」
「なんで??」
「…もう一回お願いします!」
と計算が合っていたことに驚き、様々なつぶやきが上がりました。

この後、算数手品をあと3回披露しました。

  • 子供85→子供99→先生0→子供90→先生9、合計283
  • 子供89→子供15→先生84→子供40→先生59、合計287
  • 子供79→子供89→先生10→子供49→先生50、合計277

いつもなら3回目で一度止めるのですが、子供たちの「あと1回見たい!」の声に心が動き、4回目も披露しました。

以前、正木孝昌先生(第2回)に自分の授業を見ていただいた時、「教材との接触時間の確保の重要性」について指導助言を頂いたことがあります。

概略は、「教師はその教材を知っているから、一部の反応のいい子を見て、すぐ子供たち全員が分かったものだと思い込みがちである。しかし、子供の中には、初めて出合った教材を一生懸命理解しようとじっと考えているかもしれない。だからこそ、教材と触れ合う時間をしっかり確保するべきだ。」という内容です。

このことが脳裏をよぎったからです。

計算をし終えたDさんが、こんなことを言い始めました。
「先生、たして9になっている!」

それを聞いて、周り子たちが頷きました。

そこで、次のように発問し、自力解決の時間を取りました。

「どうやら、今までの筆算をよーく見ると、算数手品のタネが見えてくるようです。今から5分間、自分で気が付いたことをノートに書きましょう。」

子供たちは気付いたころをノートに書き始めました…。

なるほど!

5分経ったので、気付いたことを発表させました。

「今までの答えはみんな200だ。」

はじめに発表したFさんは、合計の百の位が2になっていることに気付きました。視覚的に分かるように、黒板に書いた合計の「2」の部分に赤で丸を付けました。

「9を入れると、先生は0を入れる」

次に発表したGさんは、Dさんのつぶやきを聞き、黒板の筆算を見直したのでしょう。9と0が対になっていることに気付きました。視覚的に分かるように、黒板に書いた合計の「9」の部分に赤で丸を付けました。

「99になるようにしている。」

このHさんの発表を聞き、一瞬、教室はシーンとなり、その後、「なるほど!」と至る所から声が聞こえてきました。しかし、よく見ると、数人が難しい顔をして、黒板をじっと見つめています。

そこで、Hさんがどこの部分を言っているか分かった人の中からIさんを指名し、黒板に書き込んでもらいました。

Iさんが囲み終えると、先ほど黒板をじっと見つめていた数人は、すっかり笑顔になっていました。

Jさんがこんなことをつぶやきました。
「でも、200や99があることは分かったけど、先生がどうやって計算しているか、まだ分からない…。」

すると、Kさんが、
「もう一回、算数手品をやってもらおうよ。何か見えてくるかもしれない!」

この「見える」という言葉は、算数授業で子供たちからたくさん出て欲しいキーワードです。「分かる」より直感的で感覚的で、その子らしい表現につながることが多いからです。

5回目の算数手品を披露しました。

一人目の子が99、二人目の子が59と発表すると、本来は先生の番ですが、子供たちから声が上がりました。
「40!」

なんで分かったのと驚いた様子を見せながら、その数を黄色で黒板に書きました。

三人目の子が50と発表すると、本来は先生の番ですが、先ほどと同じように子供たちから声が上がりました。
「49!」

再び、なんで分かったのと驚いた様子を見せながら、その数を黄色で黒板に書き、短冊に見えないように合計に数を書いて伏せて、子供たちに合計の数を予想させました。

「297かな?」
「いや、257かも…。」

短冊に書いた数(297)を見せると、Jさんが手を挙げたので、発表させました。
「たぶん、分かりました。先生は、最初の数の99から2を引いて、それに200を足しています。」

黒板に書いた99から矢印を引いて297と結び、視覚的に分かるようにしました。

さらにJさんは続けて発表しました。
「208だって、283だって、287だって、277だって、みんなそうなっています!」

黒板に書いた10、85、89、79から矢印を引いて、それらの数と結びました。

「なるほど!」
と声が上がり、周りの子から拍手が起きました。

高学年であれば、さらに99と200の関係まで考えさせたいところですが、3年生では難しいと思い、こちらから「99を2つ作るということは、200から2つ小さい数を作ったことと同じ」と黒板に図を描きながら説明をしました。

自分の経験ですが、4年生ぐらいまでは帰納的考え方に重点を置く授業、高学年から帰納的に見つけたことを演繹的に説明する授業が、子供たちの発達段階に合っていて算数好き育てることにつながると感じています。

だったら…

「先生、僕、みんなの前でこの算数手品をやってみたい!」
とLさんが手を挙げました。Lさんは算数手品の仕組みが分かったと実感したので、やってみたい気持ちが湧き上がってきたのでしょう。

ほかにも同じような気持ちの子がいないか聞いてみると、あと2人ほど手を挙げました。

残りの時間は、その子たちに先生役をしてもらい、合計をみんなで予想しました。先生役の子の3人目には、全員が合計を正しく予想することができました。

次回も、3年「たし算のひっ算」で活用できる算数手品を紹介します。お楽しみに!

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

小中一貫三戸学園 三戸町⽴三戸⼩学校・三戸中学校 教頭
子供たちが夢中になる算数授業づくりに取り組んでいます。算数専科や複式学級の指導の経験あります。今、チャレンジしているのは、算数の教材研究や授業分析でのGemini Notebook(旧NotebookLM)の活用です。「Gemini認定教育者」を取得しました。算数の教材づくりの会「ガウスの会(代表:細水保宏)」の会員。

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