2026.06.23
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算数手品で「はてな?」を引き出す3 <2年「かけ算」(数の石垣)> 「はてな?」「なるほど!」「だったら…」で作る算数授業(第15回)

今回は「数の石垣」を使った算数手品を紹介します。「数の石垣」とは、ドイツの小学校の教科書「数の本(Das Zahlenbuch)」にある計算教材です。東京書籍の教科書(2年下)でも、「けいさんピラミッド」として紹介されているので、見かけたことがあるという方も多いことでしょう。

数の石垣のやり方

数の石垣のやり方の動画

数の石垣のやり方は以下のとおりです。

  1. 一番下の段の隣り合った数字を足し、上の段に和を書く。
    (8+9=17、9+0=9)
  2. さらに、隣り合った数字を足し、上の段に和を書く。
    (17+9=23)
  3. 最上段に行きついたら終わり。

もし、一番下の段を連続する数に限定したらどうでしょうか。

例えば、「4・5・6」であれば、一番上の段は20、「3・4・5」であれば、一番上の段は16になります。

一番上の段の数は、「5×4=20」「4×4=16」のように、一番下の段の真ん中の数の4倍になるきまりを見出すことができます。

このことを文字式で考えてみます。

文字式で一番下の石垣を左から「A-1」「A」「A+1」とすると、一番上の段の計算式は、
{(A-1)+A}+{A+(A+1)}=(2A-1)+(2A+1)=4A

つまり、一番下の段の真ん中の数の4倍です。今回はこのきまりを使った算数手品に取り組みます。

なお、数の石垣の教材化には、以下のようなものもあります。

(ア)一番下の段に入れる数の順番を変える
 前述の「8・9・0」では、「9・8・0」だと25、「8・0・9」だと17です。一番大きくなる入れ方や一番小さくなる入れ方を考えさせることができます。

(イ)段の数を増やす
 今回は2年生なので3段ですが、3年生以上なら4段や5段の方が盛り上がります。

(ウ)一番下の段の一部を隠して途中の段の数を示す
(ア)や(イ)は加法の練習ですが、(ウ)は減法の練習にもなります。一番上の段だけ数を示した場合は、オーブンエンド的に取り組めます。

(エ)一番下の段を全て同じ数にする
 3段だと、今回紹介する手品(連続する数)を平均したことと同じなので、一番上の段は4倍です。4段だと、3の場合は一番上の段は24、4の場合は一番上の段は32のように、入れた数の8倍になります。このきまりを発見させたり、成り立つ理由を考えさせたりします。

数の石垣は、パズルのように計算したくなる魅力をもっています。

数の石垣についてもっと詳しく知りたい方は、『数の石垣: ドイツからやってきた計算学習』(東洋館出版社・2006年)を参照ください。子供たちが進んで計算したくなる教材を探している先生にお薦めします。絶版ですが、中古では入手可能なようです。

授業の様子

はてな?

「『計算ピラミッド』って知っていますか?」と黒板に書き、子供たちに問いかけました。

「『ピラミッド』なら知っているけど…。」
「え?見てみたい!」

子供たちは、初めて聞いた言葉に興味津々のようです。

本来の教材名は「数の石垣」ですが、2年生には「石垣」という言葉が耳慣れしていないと予想したため、「計算ピラミッド」で紹介することにしました。

まず、下から3こ・2こ・1こと積みあがる3段の空白のブロックをかき、一番下の段に左から「8・9・0」の数字を書き入れました。

そして、大きな声で「ここに注目!」と言ってから8と9の上に「17」を書き入れ、「9と0の上に入る数字が分かった人は、しゃべらないで指で先生に見せてください」と指示しました。

以前の連載の第13回第31回や、今の連載の第2回も書きましたがその教材のやり方を説明する場面は慎重さが必要です。ざわざわしているときに説明をしても上手く伝わらず、聞き逃しや勘違いが生まれ、本時の教材の話題について行けない子が出てくる可能性が高まるからです。今回は、「注目させる」と「全員に表現させる」という手法をとりました。

しばらくすると、手でグーや丸を作った子たちが5~6人現れました。

9と0の上に0を書き込むと、
「やったー!」
「そう思ったけど…。」
とつぶやきが聞こえました。

次に、「17と9の上に入る数字が分かった人は、しゃべらないで指で先生に見せてください」と同じように指示しました。

直ぐに両手を使って2と6を表したり、空書きで26を書いたりする子がクラスの3分の2くらいになりました。

17と9の上に26を書き込むと、
「計算ピラミッドって面白い!」
「もっとやりたい!」
とつぶやく声が至る所から聞こえました。

まだ3分の1の子は、計算ピラミッドのやり方が腑に落ちていないようです。次の問題は、その子たちのために、説明と書き込みを入れながら丁寧に扱っていくことにしました。前述しましたが、やり方が分からないと、この後の学習についていけなくなくなってしまうからです。

今度は、3段の空白のブロックをかき、一番下の段に左から「3・6・7」の数字を書き入れました。そして、「3と6の上に入る数字が9になる理由」や「6と7の上に入る数字は、『6』『7』『13』のどれかの説明」などをさせて、計算ピラミッドのやり方について理解を深めていきました…。

全員が計算ピラミッドのやり方を理解したようです。本題の算数手品を披露することにしました。

「この計算ピラミッドで、一番上の数が分かる算数手品ができます。見たい人?」と子供たちに投げかけました。

算数手品は何度か披露しているので、
「はーい!」
と全員が手を挙げました。

「でも、この手品をやるには、1つ約束があります。下の3つの数は、例えば『1・2・3』のような連続した数を入れます。」と言いながら、空の計算ピラミッドを黒板に描きました。

そして、日直のAさんに当て、入れる数を考えてもらいました。
「4・5・6?」

Aさんの言葉を聞いた直後に、A4の紙に数字(20)を見えないように書いて、折って黒板の端に貼りました。

子供たちは、言われなくても進んで計算をしています。

「20になったよ!」
「私も!」
と計算を終えた子たちから次々に声が上がりました。

各段の数字を確認にした後、子供たちの目の前で、先ほど書いた紙をゆっくり開きました。

「えっ、すごい!」と拍手が起きる中に、Bさんのこんなつぶやきが聞こえました。
「何か秘密がありそう…」

このBさんの発言に、すぐ飛びつきたくなりますが、第1回第2回で書いたように、その子がもう一度同じことをつぶやいたり、ほかの子も同じ内容をつぶやいたりするまで待つことが肝心です。Bさんの発言を敢えて取り上げずに進めていきます。

なるほど!

次はCさんに、入れる数を考えてもらいました。
「3・4・5」

先ほどと同じように、Cさんの言葉を聞いた直後に、A4の紙に数字(16)を見えないように書いて、折って黒板の端に貼りました。

子供たちの計算が終わった頃を見計らって、子供たちの目の前で、先ほど書いた紙をゆっくり開きました。

「すごい!」と拍手が起きした。

Bさんを見ると、隣の子に何か話していて、伝えたいエネルギーが高まってきたように見えました。

次はDさんに、入れる数を考えてもらいました。
「6・7・8」

先ほどと同じように、Dさんの言葉を聞いた直後に、A4の紙に数字(28)を見えないように書いて、折って黒板の端に貼りました。

子供たちの計算が終わった頃を見計らって、子供たちの目の前で、先ほど書いた紙をゆっくり開きました。

「すごい!」と拍手が起きる中、Bさんはぱっと手を挙げました。
「4の段!」

「4の段?」とそれを聞いた周り子たちが、自然に近くの子と相談を始めました。

机間巡視をして子供たちの話に耳を傾けると、「4の段」の意味が分からないという声が多かったです。

そこで、Bさんの「4の段」と言った気持ちが分かった子に手を挙げさせ、その中のEさんに説明をしてもらいました。
「20は『4×5』、16は『4×4』、28は『4×7』。」

その説明を聞いて、「なるほど…」と頷く子の中に、Fさんのこんなつぶやきがありました。
「なんで4をかけるの?」

Fさんの「4をかける」という表現は、正しくは「かけられる数が4」ですが、せっかくの友達の考えを真剣に理解しようとする勢いを止めてしまうと思い、修正せずにFさんに、みんなの前でもう一度言ってもらいました。

「確かに…。」と、この鋭い疑問にみんなは考え込んで、教室はしばらく静かになりました。

そんな中、Gさんがこんなことを言い始めました。
「4をかけるのはまだ分からないけど、後ろの『×5』や『×7』は分かった!」

みんながGさんの方を向いたので、黒板の前に出てきてもらって、説明してもらいました。
「『4×5』の5は、一番下の段(4・5・6)の左端の4に1をたした数、『4×7』の7は、一番下の段(6・7・8)の左端の6に1をたした数。」

この説明を聞いて、「なるほど、なるほど…」とつぶやきが聞こえました。

そして、Hさんが、
「『4×4』の4は、一番下の段(3・4・5)の左端の3に1をたした数かな?」
と付け足してくれました。

2年生はまだ「平均」を習っていません。「4・5・6」を均して「4・4・4」と見るのは思っていたより難しかったようです。それでも、何とか、場面と数を結び付けて「なるほど!」に至ろうとした姿に感動しました。

BさんやFさんの説明を先生も「なるほど!」と思ったことを伝えた後、先生のやり方を教えました。

「4・5・6なら、6から1つ4にあげると、5が3つになります。5が3つ並んだ計算ピラミッドになるから、2段目は5を4つ集まったことになります。だから、一番上の数は、真ん中の数の4倍です。先生は『5×4』でやっていました。」

このタネ明かしを聞いて、子供たちは、
「なるほど!だから、すぐ答えが分かったんだ!」
「3・4・5なら、『4×4=16』ってことか。」
「私たちも4が見えてたね!」
と盛り上がっていました。

だったら…

残った時間は、それぞれで思いついた連続する数を入れて、計算ピラミッドを楽しむ時間にしました。

その計算の中で、次のような質問を受けました。

「一番下に、同じ数を入れてもいいですか?」
「4段でやってもいいですか?」

子供たち自ら問題を発展させたことに大変驚きました。取り組むことで、より見えてくることがあると改めて思った場面でした。

次回は、3年「たし算のひっ算」です。お楽しみに。

種市 芳丈(たねいち よしたけ)

小中一貫三戸学園 三戸町⽴三戸⼩学校・三戸中学校 教頭
子供たちが夢中になる算数授業づくりに取り組んでいます。算数専科や複式学級の指導の経験あります。今、チャレンジしているのは、算数の教材研究や授業分析でのGoogle NotebookLMの活用です。算数の教材づくりの会「ガウスの会(代表:細水保宏)」の会員。

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