「だったら...」と追究したくなる教材<3年「たし算の筆算」(回文数探し)> 「はてな?」「なるほど!」「だったら…」で作る算数授業(第13回)
「しんぶんし」のように、左から読んでも右から読んでも同じになる文を回文(パリンドローム palindrome)といいます。これを数で考えた場合、「131」や「25652」などは同じように回文になっていることから、「回文数」と呼ばれています。
今回は、この回文数が、ある手順で計算すると現れる教材を紹介します。
回文数にする計算の手順
回文数にする計算の手順の動画
- 2桁の数を選ぶ。
例:39 - その数と逆から並べた数をたす。(ここで回文数になったら終わり)
例:39+93=132 - 2で求めた和を、さらに逆から並べてたす。(回文数になるまで繰り返す)
例:132+231=363

この手順で0から99までの数が何回で回文数になるかを表にまとめてみました。
この表から、この教材には3つの特徴があると言えます。
(ア)選んだ数によって、回文数になるまでの計算の回数が違う。
例:11…0回
37…2回
95…3回
(イ)根気強く計算が必要な数がある。
例:79(97)…6回
89(98)…24回

(ウ)表には対称性がある。
左上から右下に斜めに並ぶ0を境に、左下部分と右上部分に対称性があります。
※より完璧な対称を求めるなら、例えば、9はこのままでも回文数ですが、「9+90=99」と計算すると1回で回文数と言えることから、十の位が0の行のすべてを「1」と書き換えると、より対称性が高まります。
このように、手順に従えばほとんどの数が回文数になりますが、何回で現れるのかは不規則で、たまに回数が多かったり現れなかったりします。この特徴が、「この数は回文数かな…」と、わくわくしながら計算に取り組む姿を引き出すことができると考えました。
どのようにして計算技能を定着させるかは、算数の指導において、どの先生でも一度は悩む課題だと思います。私は、第7回で書いたように、計算ドリル一辺倒に手詰まりを感じ、計算することで楽しくなる教材を探し、取り組ませるようになりました。この回文数探しは、そのような教材の一つと言えます。
先ほどの表を見ると、一の位や十の位が8や9の数の場合でないと回文数になる回数が少ないことが分かります。本時は計算練習を兼ねているので、回文数になるまでの回数が多くなる数を扱いたいものです。
授業の導入で扱う数を「90、91、92、…」と順番に1つずつ大きくすることも考えましたが、「9、19、29、…」と順番に10ずつ大きくする方が扱う数をどんどん大きくしているイメージがもてると思い、後者の方で授業の進めることにしました。
また、対称性に気付くことを期待して、9は1回で回文数になると扱います。
この授業では、子供たちから次のような「だっだら…」が聞こえてくることが期待できます。
「(29が回文数になった後に)だったら、39も回文数になるかな…」
「だったら、一の位が9じゃなくても回文数になるのかな…」
「だったら、3桁でも回文数になるのかな…」
「39が2回で回文数になったから、だったら、93も2回で回文数になるのかな…」
授業では耳をすまして、このような子供が自ら統合・発展的に考える姿をうまく取り上げたいと思います。
参考までですが、回文数にならない数(リクレル数)があります。
196(691)や295(592)です。
子供たちがたして887になる計算を見かけたら、早めに違う数に目を向けさせる必要が出てきます。
なお、この回文数の教材は、片桐重雄先生(元文部省初等教育教科調査官・横浜国立大学教授・文教大学教授)の書いた雑誌の連載で知ったものです。(この記事はネットで購入可能です。)
ご存じの方も多いと思いますが、片桐先生といえば「数学的な考え方」の第一人者です。私も文献でたくさん勉強させていただきました。
最近では、半年ほど前に朝日新聞や読売新聞で「国分寺市算数教室」の様子が取り上げられて、100歳でまだ現役で子供たちに算数を教えている姿を知り、感銘を受けました。
授業の様子
はてな?
まず、「トマトになる計算」と黒板に書きました。3年生なので、「回文数」より「トマトになる計算」の方が、どの子にもすっと耳に入ると考えたからです。言葉のインパクトに引かれたのか、ノートに写し終わると数人が手を挙げて質問しました。
「計算したら『トマト』になるってことですか?」
「計算の仕方は、どうやるんですか?」
同じように考えた子を挙手させると、ほとんどの子が手を挙げました。
「9」を例にやり方を説明しました。
黒板に筆算をしながら、「9だとすると、見えない0が十の位にあるから、逆に並べて90。それらをたすと…」と投げかけると、「99!」とクラスの半分くらいの子の声が挙がりました。
そして、
「そっか!」
「わかった!」
とつぶやきが聞こえました。
子供たちを観察すると、隣の子に説明している子もいますが、まだ、首を傾げている子も見られました。

そこで、次は「19」を例に一緒に計算をしました。
「19だったら逆にして91、『19+91=110』。110を逆にして11、『110+11=121』…」と言いながら、いつもは、分けて筆算しますが、今日だけは特別に筆算の和に続けて計算することを約束しました。
「おっ、なった!」
「今回は2回か…。」
「分かった!右から読んでも左から読んでも同じになる計算だね。」
この子の話が分かりやすかったので、黒板に書き留めました。すると、首を傾げていた子も笑顔に変わりました。
念のため、「29」も一緒に計算しました。
「29だったら逆にして92、『29+92』は…」と投げかけると、「121」と元気な声が返ってきました。
3回も一緒にやったのは理由が2つあります。
- 計算の仕方の理解を徹底するため。
ここでやり方が分からないと、この後、各自で取り組む場面になったとき、何も動けなくなります。どの子も理解できるよう、計算の仕方は丁寧に指導しました。 - 「自分でやりたい!」という気持ちを高めるため。
学習に取り組むエネルギーを高めるには、少し我慢させる時間が必要です。子供たちから、「計算したい!」という声が出るのを待っていたからです。
案の定、次の数はいくつか問いかけると、Aさんがこんなことを言いました。
「次は39、その次は49、59でしょ。そろそろ自分でどんどん計算したいな。」
Aさんの声を聞いて、みんなはどうしたいかを聞きました。
「自分もどんどん計算したい。」
「2回でトマトになる数を探したい。」
「好きな数で計算したい。」
子供たちの話を聞いて、次のように進めることを確認しました。
- 15分間、おしゃべりしないで取り組むこと。
- 39→49→59→…と進めること。
- 何回でトマトになるかを予想してから計算すること。
なるほど!
15分経ちました。「39」から順番にいくつになったか、黒板に筆算させながら確認していきました。
39…363(2回)
49…484(2回)
59…1111(3回)
69…4884(4回)
79…44044(6回)

自分の計算が合っていたことを喜んでいる子の中で、Bさんはノートに計算を続けていました。Bさんに何が気になっているか聞いてみました。
「89が何回を続けても、トマトにならないんです。これってトマトになるんですか?」
Bさんと同じことを考えた人を挙手させると、4人ほどいました。
そこで、和は「8兆8132億0002万3188」、回数は「24」であることを教えました。
Bさんは、そんな大きな数を聞いても怯むことなく、
「この後もやりたい。終わらなかったら、宿題でやっていいですか?」
と言い、みんなから拍手をもらいました。
だったら…
Bさん以外のみんなが、この後、何を調べたいかノートに書いてもらい、4名に発表してもらいました。
Cさん「1から順番に調べたい。」
Dさん「31とか、好きな数で調べたい。」
Eさん「1回でトマトになる数は繰り上がりがないみたいなので、本当か確かめたい。」
Fさん「今日の宿題にしてくれるなら、99、109、119なども調べたい。」
そこで、残った時間と今日の宿題は、トマトになる計算の続きをやることにしました。
次回は、番外編「キズネール棒(ロッド)を使った算数授業」です。
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種市 芳丈(たねいち よしたけ)
小中一貫三戸学園 三戸町⽴三戸⼩学校・三戸中学校 教頭
子供たちが夢中になる算数授業づくりに取り組んでいます。算数専科や複式学級の指導の経験あります。今、チャレンジしているのは、算数の教材研究や授業分析でのGoogle NotebookLMの活用です。算数の教材づくりの会「ガウスの会(代表:細水保宏)」の会員。
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