2014.07.08
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19th New Education Expo 2014 in 東京 現地ルポ(vol.2)

19th New Education Expo 2014 in 東京 現地ルポ(vol.2)

「New Education Expo 2014 in 東京」が6月5~7日の3日間、東京・有明の東京ファッションタウンビルで開催された。2回目の現地ルポでは、情報モラル教育セミナーと、最新の電子黒板等で構築された「普通教室でのタブレット活用」コーナーを紹介する。新たな課題をいち早く取りあげ、鋭くメスを入れることで定評のある情報モラル教育セミナーの今年のテーマは、対応が急がれるSNSへの不適切投稿。例年にも増して来場者たちの注目が集まっていた。

より進化するICT時代。求められる情報モラル教育とは?

「いいね!」が席巻するネット社会 ~SNS不適切投稿の背景を考える~

【コーディネータ】熊本市立総合ビジネス専門学校 教頭……桑崎 剛 氏
文部科学省 スポーツ青少年局 青少年課 課長……川又 竹男 氏
筑波大学 人文社会系 教授……土井 隆義 氏
茨城県メディア教育指導員……鈴木 慶子 氏
日経BP社 日経デジタルマーケティング記者……小林 直樹 氏
安心ネットづくり促進協議会 事務局長……石原 友信 氏

なぜ子どもたちの不適切投稿は起こるのか?

熊本市立総合ビジネス専門学校 教頭 桑崎 剛 氏

「世界中 きみの一言 見ているよ」
これは、昨年に続いてコーディネータを務めた熊本市立総合ビジネス専門学校の桑崎剛教頭が冒頭に紹介した標語(平成26年度「情報通信の安心安全な利用のための標語」受賞作品)だ。

この標語が言い表している通り、近年、若者がアルバイト先での悪ふざけの画像や有名人の来店情報といった不適切な情報をSNS上で公開して“炎上”し、店側が閉店に追い込まれたり、本人への損害賠償請求に至ったりするケースがあとを絶たない。
「社会に与える影響の大きさから“バイトテロ”とも呼ばれていますが、その背景には、“いいね!”や“シェア”といった仲間からの反応を求める現代の子どもたちの人間関係があります」
と桑崎教頭は指摘する。

筑波大学 人文社会系 教授 土井 隆義 氏

では、今の子どもたちの人間関係の特徴とは、どのようなものなのだろうか。社会学の観点から青少年の問題に取り組んでいる筑波大学の土井隆義教授は、こう分析する。
「価値観の多様化によって、子どもたちは『同じクラスだから私たちは友だち』といった制度的な枠組みによる人間関係を強制されなくなりました。気の合う人とだけ付き合う傾向が強まり、『私たちは友だち』という互いの感覚にのみ支えられた、狭く閉じられた人間関係を築いているのです」

しかし、誰もが自由に友だちを選べるということは、自分が相手から選んでもらえないことにもつながる。さらに、今の子どもたちは「友だちが多いほど人間としての価値が高い」と捉える傾向が強い。それが一層、彼らの不安を煽り、人間関係の悩みやストレスを抱える子どもが増えているのだという。
「そうした不安を解消するため、友だちの確保や友人関係の維持に常時活用されているのがスマホやSNSです。価値観の多様化によって、子どもたちは普遍性のある思想や信念ではなく、友だちからの評価や承認に人生のナビゲーションの役割を求める傾向が強くなっており、常に仲間からの反応を欲しています。また、彼らは仲間内だけでつながるツールとしてネットを活用しているため、自分の投稿が世界中の人々から見られているという実感がありません。それが安易な不適切投稿につながっているのです」。

不適切投稿を防ぐために有効な対策とは

茨城県メディア教育指導員 鈴木 慶子 氏

では、不適切投稿を防止するには、どのような対策が必要なのだろうか。現場で実践していることを紹介してくれたのは、青少年を有害情報から守るための取り組みを行っている茨城県メディア教育指導員の鈴木慶子氏だ。
「一般論の押しつけでなく、具体的な不適切投稿事例を取り上げて注意喚起しています。最近、特に増えている画像投稿のトラブルについては、一度ネットに投稿した画像は回収できず、先々までずっと残るのだということを伝えています。また、自分たちを傷つけずにスマホを利用する「『ウチらルール』をつくろう」と提案しています」。

日経BP社 日経デジタルマーケティング記者 小林 直樹 氏

日経BP社の記者で、ネットの炎上事件を追い続けている小林直樹氏は、「大人の不適切発言による炎上事件も頻発していますから、誰もが当事者意識を持って取り組むべきです」と提言する。
「不適切投稿をしてはいけません、と頭ごなしに言うだけでは子どもたちには自分のこととして浸透していかないため、実例を交えた教育が必要だと思います。教師と児童生徒が一緒にガイドラインを作るといったワークショップ的な教育ができれば、なお良いですね」。

文部科学省 スポーツ青少年局 青少年課 課長 川又 竹男 氏

一方、行政側もさまざまな対策に取り組んでいる。文部科学省スポーツ青少年局青少年課の川又竹男課長は、同省が行っている情報モラル教育活動について、
「有識者の方々や文部科学省からも全国に出向いてネットモラルの啓発活動や、小中高での情報モラル教育の推進、多くの子どもたちがスマホデビューする新入学の時期に合わせた啓発活動の他、ネット利用に際しての注意点やアドバイスをまとめた小中高生向けリーフレットの配布にも力を入れています」
と説明した。このリーフレットには不適切投稿を含むトラブルや犯罪被害の事例がマンガ入りで紹介されており、子どもたちが親しみやすくわかりやすい内容に仕上がっていた。

安心ネットづくり促進協議会 事務局長 石原 友信 氏

産官学連携で青少年のネット啓発を行っている安心ネットづくり促進協議会では、青少年のスマホ利用に関するポイントをまとめた保護者向けのリーフレットを作成している。また、これからの情報モラル教育について、事務局長の石原友信氏は次のように述べている。
「私たちが行った研究では、単に警告するよりも、しっかりと規範意識を植え付けた方が子どもたちのリスク回避能力が高まるという結果が出ています。これを踏まえ、子ども自身に考えさせる教育をしていくことが必要だと思います」。

不適切投稿を教育の問題と捉え、当事者意識を持った対応を

最後に、桑崎教頭と土井教授による総括が行われた。桑崎教頭は、
「教育の問題として不適切投稿の背景をしっかりと分析することが重要です。規制を厳しくすれば解決するというものではなく、公開範囲が限定されるSNS範囲内なら炎上しないからOKというものでもありません。モラルとして不適切な内容はもともといけないと子どもたちに教えるべきです」
と指摘。それには、ガイドラインによる指導だけでなく、結論に至るプロセスそのものが学びとなるワークショップ型の教育が有効だとした。

土井教授は、「最近は大人が子どもたちを安全圏へと囲い込み過ぎているのではないか」と疑問を提起し、
「安全圏にいれば危ないものを見分ける嗅覚は育ちません。禁止やフィルタリングをして終わり、ではなく、嗅覚を鍛える道具としてネットを活用する等、その次にどうするかを私たち大人が考えていかなくてはいけません」
と提言した。

本セミナーでは、不適切投稿の背景にあるものを知り、教育現場が取り組むべき課題を具体的に捉えることができた。今後に向けた対策のヒントも満載で、得るものの多い2時間だった。

展示ゾーン

[普通教室でのタブレット活用]より使いやすく進化した電子黒板と授業支援システム

マグネットスクリーンを使った「eB-S wireless for school」の活用例

内田洋行が出展する「普通教室でのタブレット活用」コーナーでは、「黒板常設型電子黒板+タブレット型授業支援システム」と「マルチOS対応タブレット型授業支援システム」の二つにゾーンを分け、普通教室でもコストを抑え、ICT活用の授業を実現する、最先端のシステムや機器が展示されていた。

操作シートを電子ペンでタッチするだけで、書き込み、拡大、画面の保存などが行える

「黒板常設型電子黒板+タブレット型授業支援システム」ゾーンでひときわ目を引いたのが、既存の黒板やホワイトボードに設置できるユニット型電子黒板「eB-S wireless for school」だ。ハードウェアは小型・軽量の電子ペンとスティック型の本体、マグネット式操作シートの3点のみなので、持ち運びもラクラク。今年は改良により完全無線化され、コードのひっかかりに煩わされることもなくなった。

「wivia(R)3」は4台の端末の画像を転送し、画面を4分割して表示することもできる。設置や操作が簡単な点もポイント

このゾーンには、プロジェクター等にPCやタブレット端末の画面をワイヤレスで投影できるプレゼンテーション用機器「wivia(R)3」も展示されていた。既存の表示機器や有線LAN、無線LANアクセスポイントを活用できることから注目を集めており、複数台導入してグループ学習に活用している学校もあるという。

使用端末を問わず恊働学習に必要な機能が操作できる「Learning Canvas for Multi OS」

「マルチOS対応タブレット型授業支援システム」ゾーンでは、iOS、Android、Windowsの三つのOSに対応した新しい協働学習支援システム「Learning Canvas for Multi OS」の展示が行われていた。OSによる操作の違いがないので、BYOD(Bring Your Own Device:児童生徒が個人で所有するタブレット端末を授業に用いること)等、OSの異なるタブレット端末が混在する教室でも問題なく電子黒板と連動した授業が行える。

さらに、この協働学習支援システムには、教育現場の声を反映し、無線LANが切断した際にアプリを自動で復旧・再開する「自動リカバリ通信機能」が搭載されている点も注目だ。無線LANの切断で教材の配布が中断しても、接続再開時に自動的に再配布してくれるので、ICT機器の操作に不慣れな教員でも安心して利用できる。この他、校外に遠隔通信する機能もあり、タブレット端末を持ち出しての体験学習や他校との恊働学習等、新たな授業の実践が可能となっている。

写真:赤石 仁/取材・文:吉田秀道、吉田教子

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

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