意外と知らない"情報活用能力"(第2回) 子供たちが情報活用能力を身に付けるポイントと環境
第1回で紹介したとおり、情報活用能力は学習の基盤となる資質・能力です。そのため、教科横断的に育成していく必要があります。第2回は、情報活用能力を教科横断的に育成する際のポイントやその環境について紹介します。
情報活用能力を教科横断的に育成するとは?
こうした情報活用能力は,各教科等の学びを支える基盤であり,これを確実に育んでいくためには,各教科等の特質に応じて適切な学習場面で育成を図ることが重要であるとともに,そうして育まれた情報活用能力を発揮させることにより,各教科等における主体的・対話的で深い学びへとつながっていくことが一層期待されるものである。
(「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説」P.51より)
ポイント①:「各教科等の特質に応じて適切な学習場面で育成を図る」
ポイント②:「育まれた情報活用能力を発揮させる」
情報活用能力をある教科で育成したとしても、子供たちがそれを活用できるかどうかは別です。学んだことを発揮させる場面を各教科等の中でいくつも用意し、子供たちがその有用性を実感しながら活用できるようにすることが重要です。例えば、算数科でグラフの読み取り方を学んだ後、社会科で出てくるグラフを読み取ったり、国語科でキーボード入力を学んだ後、理科の実験レポートをコンピュータで作成したりするなど、育成したスキルを発揮する場面を各教科等の中で意図的に用意することが考えられます。
また、情報の収集、整理・比較、発信・伝達、保存・共有等に関しては、様々な場面で発揮できます。新聞や本、インターネットを使った情報の収集方法や、模造紙やプレゼンテーションソフトを使った情報の整理方法等は、一度方法を学んだ後、様々な教科等で発揮する場面を用意することで活用する機会が増え、子供たちの中に定着し、情報活用能力として使いこなせるようになるでしょう。
ポイント③:「情報活用能力を発揮させることにより,各教科等における主体的・対話的で深い学びへとつながっていく」
情報活用能力は、何度も活用させて使いこなせるようにすることで、各教科等において主体的・対話的で深い学びにつながっていきます。
新たな課題に直面したとき、アプローチの仕方を知らないと、課題への向き合い方に悩んでしまう子供もいるかもしれません。しかし、情報活用能力が身に付いていれば、教科の中で与えられる(もしくは自ら発見して設定する)課題に対し、子供たち自身で効率的かつ効果的な解決方法や手順を見つけて取り組むことができます。例えば、文字入力やインターネットでの適切な検索、表計算ソフトを活用したグラフ作成・統計的な分析、プレゼンテーションソフトを活用した発表、電子ファイルの共有等の方法を使って情報や考えを整理し、課題発見・解決の手掛かりとすることができます。
この手掛かりを基にすることで、新たな課題に粘り強く向き合いやすくなり主体的な学びにつながったり、多様な表現方法や共有方法を活用して対話的な学びにつながったりし、深い学びにつながっていくことが考えられます。
子供たちが情報活用能力を使いこなせるようになるまでには、少し時間がかかってしまうかもしれません。しかし、先述のとおり情報活用能力は「学習の基盤となる資質・能力」ですので、一度身に付けてしまえば、どこでも活用することができます。つまり、子供たちが身に付けた情報活用能力は、様々な教科や様々な場面で発揮され、新たな課題に直面しても主体的・対話的な活動が起こりやすくなり、深い学びに結びつくということが考えられるでしょう。
情報活用能力を育成する環境は?
初等中等教育段階について,①情報活用能力(必要な情報を収集・判断・表現・処理・創造し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力(ICTの基本的な操作スキルを含む)や,情報の科学的理解,情報社会に参画する態度)の育成(中略)④それらを実現するための基盤となる学校の ICT 環境整備の促進に取り組む。
(「第3期教育振興基本計画」P.84より)
・学習者用コンピュータを3クラスに1クラス分程度整備
・普通教室における無線 LAN の 100%整備
・超高速インターネットの 100%整備
(「第3期教育振興基本計画」P.84より)
これらのICT環境を整え、(場合によってはICT環境が整う前から)教科横断的な視点で情報活用能力を育成することが重要です。
次回は文部科学省が公開している「次世代の教育情報化推進事業(情報教育の推進等に関する調査研究)」成果報告書を参考に、情報活用能力を育成する際の工夫等について紹介します。
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構成・文・イラスト:内田洋行教育総合研究所 研究員 眞鍋悠介
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