2024.11.25
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意外と知らない"生成AIの教育利用"(第3回) アンケート分析や類題生成、発音チェックの事例

第2回では、文部科学省リーディングDXスクール事業の公式サイトに掲載されている2023年度に指定された「生成AIパイロット校」による実践事例を5つのカテゴリと20の具体的な項目に分類したことを紹介し、8つの事例を紹介しました。第3回では「データ処理・分析」「学習・問題解決支援」のカテゴリに分類された9つの事例を紹介します。

下表のカテゴリ「データ処理・分析」「学習・問題解決支援」の事例を紹介していきます。「学習・問題解決支援」は、児童生徒の利用では中等教育段階の事例が多く、中学校3事例、高等学校4事例を掲載しています。

カテゴリ 項目
創造・発想 ①アイデアを出させる
②生成AIと相談しながら思考を洗練・深堀する
③計画や案を作成させる
④絵や音楽、物語等を作成させる
文書・ドキュメント作成 ⑤文書のたたき台を作成させる
⑥文章を校正・添削させる
⑦要約させる
⑧翻訳させる
データ処理・分析 ⑨データを整理・分析させる
⑩画像や動画から情報を読み取らせる
学習・問題解決支援 ⑪チェック・評価させる
⑫物事を説明・解説させる
⑬問題を生成させる
⑭プログラム・コードを作成させる
⑮問題を解かせる/計算させる
⑯発音をチェックさせる
⑰文章を読み上げさせる
対話・コミュニケーション ⑱ディベート相手をさせる
⑲ペルソナを演じさせる
⑳英会話の相手をさせる

データ処理・分析

⑨生成AIにデータを整理・分析させる~小学校・保健体育~

小学校における活用事例です。Googleフォームに入力されたアンケート結果を生成AIに整理・分析させ、その結果を要約してもらいました。

生成AIは大量のデータを効率的に処理し、整理するのが得意です。多くの意見が集まっても、限られた授業時間内では整理が追いつかず、その後の活動まで手が回らないこともありますが、生成AIを活用することで、考察の時間をしっかり確保できました。

また、校務においては、学校評価アンケートの結果分析などに生成AIを活用する事例が多く報告されていました。

⑩生成AIに画像や動画から情報を読み取らせる~中学校1年・体育~

7年生(中学1年)、保健体育における活用事例です。マット運動の様子を動画で撮影し、生成AIに読み取らせて動きを分析し、お手本の動画とどれくらい一致しているかを比較しました。教師がいなくても、客観的なフィードバックを受けることが期待できます。

他にも、画像を生成AIに読み込ませて、その内容をテキスト形式で出力させる活用も見られました。

学習・問題解決支援

⑪生成AIにチェック・評価させる~中学校1年家庭科・中学校3年理科~

中学校における活用事例です。家庭科では、生徒が考えた献立を栄養バランスなどの観点から生成AIにチェックさせました。また、理科では、生徒が考えた実験方法を生成AIに評価させました。

生成AIを活用することで、他の生徒とは異なる視点からの客観的な評価を得られるというメリットがあります。ただし、生成AIは誤った情報を出力する(ハルシネーション)可能性があるため、AIの評価を鵜呑みにせず、あくまでアドバイスの一つとして活用するのが良いのではないでしょうか。

⑫生成AIに物事を説明・解説させる~高等学校・地学~

高等学校での活用事例です。教科書に記載されている内容について生成AIに質問し、理解を深めるために活用しました。生成AIに疑問点や難しい事柄を説明させ、その説明の誤りを生徒が見つけ出すことで、より深い理解を促す取り組みです。

ただし、生成AIは誤った情報を出力する(ハルシネーション)可能性があるため、辞書代わりに使用するのは注意が必要です。報告された事例のうち半数以上は、ファクトチェックの重要性を理解させる活動と並行して実施されていました。

⑬生成AIに問題を生成させる~高等学校3年・数学~

高等学校の数学での活用事例です。生徒は生成AIを活用しながら、ペアで数学の問題を作成し、お互いにその問題を解き合いました。生成AIは時折誤った答えを出すこともありますが、こうした誤りも想定しながら、学習の一環として活用しています。

なお、事例としては、教師が生成AIを活用して問題を作成するケースの方が数多く報告されています。

⑭生成AIにプログラム・コードを作成させる~高等学校・情報~

高等学校の情報科での活用事例です。生徒が生成AIに機能や挙動を指示し、その指示に基づいてプログラムを作成させました。生成AIはすぐに動作するプログラムを生成してくれるため、何度も試行錯誤を繰り返すことができ、プログラムについて理解が深まりやすいという意見がありました。

教育利用として報告されている全10件の事例のうち、高等学校での事例が7件を占めています。また、校務では、Excelを活用する際に、意図した挙動をするマクロを生成AIに作成させる事例などが報告されています。

⑮生成AIに問題を解かせる/計算させる~高等学校1年・数学~

高等学校の数学での活用事例です。生成AIに問題を回答させ、生徒がそれをたどることで、計算や解法の理解を深める活動です。生成AIは誤った解答をしてしまう可能性があるため、問題集の答えと比較する配慮をしています。

なお、教育利用として報告されている事例9件のうち、7件が数学における活用でした。

⑯生成AIに発音をチェックさせる~中学校・英語~

中学校の英語での活用事例です。生徒が英文を音読し、それを生成AIに読み込ませて、発音等の観点からフィードバックを受けました。

人数が多いクラスでは教師1人で発音をチェックするのは大変で時間もかかりますが、生成AIを使うことで生徒が個別にフィードバックを受けられるので、時間短縮につながります。また、相手が人間ではないことが、恥ずかしがりやの生徒にとっては安心して活動できる要素になっているかもしれません。

⑰生成AIに文章を読み上げさせる~中学校・英語~

中学校の英語での活用事例です。英文を生成AIに読み上げさせ、スピーチや音読練習の参考にしました。

もちろん、ALT(外国語指導助手)の発音には及びませんが、生成AIはネイティブに近い発音で読み上げてくれるため、発音練習やリスニングの練習に効果があります。また、生徒が自作した英文を読み上げてくれる点も好評です。

第4回では、最後のカテゴリ「対話・コミュニケーション」の事例と、集計結果を紹介します。

構成・文:内田洋行教育総合研究所 主任研究員 井上 信介

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

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