2024.11.16
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地域産品を活かしたクラウドファンディング挑戦~高校生が挑んだMakuakeプロジェクト~ 【食と地域】[高校2・3年生・商業]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイデア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子どもたちの興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第210回目の単元は「地域産品を活かしたクラウドファンディング挑戦」です。

授業情報

テーマ:食と地域

教科:商業

学年:高校2・3年

プロジェクト概要

兵庫県立小野高等学校では、地域資源を活用しながら、マーケティングや起業体験を通じて「ビジネスをリアルに学ぶ」授業を展開しています。この取り組みは、都内でブランディングデザイン・コンサルティング会社を経営するOBの協力のもと、2022年から本格的に始動しました。

今回のプロジェクトでは、クラウドファンディング・プラットフォーム「Makuake」を活用し、生徒たちが商品の企画から宣伝・販売戦略までを自ら手掛けました。地元の牧場で作られたヨーグルトと、地元農家のとうもろこしを使ったジェラートの販売に挑戦し、地域の魅力を発信する取り組みとなりました。

授業の流れとポイント

導入:地域企業との連携とプロジェクトの立ち上げ

私たちはまず、プロジェクトのテーマに沿って市場調査を実施し、地元の魅力ある企業や地域資源をピックアップしました。その後、選定した企業に対して訪問と交渉を重ね、協力の了承を得ることができました。この過程では、企業との信頼関係を築き、地域の資源をどのように全国に広めるかを話し合いました。

展開①商品開発とマーケティング戦略の策定

生徒たちは、地域の特産品を使った商品の企画をスタート。自分たちが取り組む商品に「どんなストーリーを持たせるか」をグループで話し合い、商品の価値を魅力的に伝えるアイデアを出し合います。

「ただの特産品」ではなく、「なぜこの商品が必要なのか?」というメッセージを考えることで、商品の付加価値を引き出しました。生徒たちは、クラウドファンディングページのデザインや文章も自ら担当し、どんな言葉が共感を生むかを工夫しました。

展開②クラウドファンディングを通じた販売活動

収支シミュレーションと販売価格の決定

販売価格の設定にあたっては、まず複数の販売セット案を作成し、低価格帯から高価格帯まで幅広い選択肢を用意しました。これにより、幅広い層の購入者にアプローチできるように工夫しました。次に、商品の原価や送料を計算し、企業側の利益に加え、人件費や光熱費などの費用も含めた収支シミュレーションを行いました。企業から提示されたコストをもとに、最終的な価格を決定しました。
また、早期購入を促進するために、「超早割」や「早割」といった特別割引を設け、支援者の購入意欲を高める仕組みを導入しました。

広告・宣伝活動

販売活動では、文化祭を活用し、既存商品の販売やプロジェクトの紹介を行うとともに、Makuakeでの購入方法を説明しました。これにより、学校内外の関係者にプロジェクトへの関心を高めてもらいました。
また、学校の公式Instagramでは、販売開始までのカウントダウン投稿や商品紹介を行い、フォロワーに向けてプロジェクトの注目度を高めました。さらに、X(旧Twitter)では、企業の商品を過去に紹介していたユーザーや料理家に依頼し、アレンジレシピを投稿してもらうなどのコラボレーションも展開しました。

活動レポートによる情報発信

クラウドファンディングの進捗は、Makuakeサイト内の「活動レポート」で発信しました。このレポートは支援者以外のユーザーも閲覧可能で、プロジェクトの進行状況や盛り上がりを伝える大切なツールです。
レポートでは、プロジェクトの開始・終了の報告、支援者の紹介、目標金額達成のお知らせ、活動内容の紹介などを投稿しました。投稿の際は、写真を多用し、文章を短くまとめることで、情報が視覚的に伝わりやすいよう工夫しました。これにより、サポーターや一般ユーザーに親しみを感じてもらい、支援の輪を広げることができました。

生徒たちが手掛けたクラウドファンディングページは、以下よりご覧いただけます。

関東では入手困難!兵庫県民が愛する共進牧場が作った、関西で大人気の幻のヨーグルト

朝食にもおすすめ!?とうもろこしの甘味と香りが広がる「奇跡のジェラート」

展開③振り返りと次のステップへ

クラウドファンディング終了後、生徒たちはプロジェクトの成果を振り返り、仮説の検証と改善点をまとめました。数字で成果を「見える化」したことで、目標に到達できた要因や、足りなかった部分が明確になり、次のステップに向けた学びを深めました。

また、クラウドファンディングに成功したことで、「自分たちにもビジネスができる」という自信を得た生徒たちは、企業へ改善提案を行い、さらなる地域貢献を目指しています。

プロジェクトの成果と今後の展望

このプロジェクトを通じ、生徒たちは「ビジネスのリアル」を体験し、マーケティングや商品開発のプロセスを実践的に学びました。単なる教室内の活動にとどまらず、実社会での成功体験を得たことで、生徒たちのキャリア形成にも大きな自信をもたらしました。

さらに、この活動は「地元資源を使って何ができるか」を再発見するきっかけともなりました。将来的には、今回の経験を通じて、生徒たちが地域での起業に挑戦し、次世代のビジネスリーダーとして地域活性化に貢献することが期待されています。卒業後もOB・OGが母校に戻り、後輩たちを支援する循環が生まれることを目指しています。

授業の展開例
・自身の地元の魅力ある企業や地域資源をピックアップして、全国に広めましょう

植村庸平、一色卓磨

兵庫県立小野高等学校教諭

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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