2023.03.20
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SNSのよりよい利用の仕方を考えよう(前編) 東京都東大和市立第八小学校「情報モラル」授業リポート

GIGAスクール構想による11台端末の整備、スマホ利用の低年齢化など、子どもたちがインターネットを利用する機会は年々増えている。この動きはさらに加速すると予想され、ICTモラル教育の重要性は一層高まると言えるだろう。今後、学校や教員はどのように指導すべきなのだろうか。

今回はICT教育を積極的に行う、東京都東大和市立第八小学校での実践を取材した。前編では「SNSのより良い使い方」を子どもたちと考える授業の様子を紹介する。

授業概要

学年:小学3年生
教科:総合的な学習の時間
単元名 :「マイSNSルールを作ろう」
単元の目標:SNS やインターネットのモラルについて知り、自分だけでなく他の人にとっても良い使い方を考え、適切に情報を扱える態度を養う。
授業者:宮澤 大陸 教諭
使用教材・教具:タブレット、ロイロノート

SNSのより良い使い方について考える

単元は3回の授業で構成されており、本時は2回目となる。前時ではSNSの基礎学習として「4年生までにクラスみんなでやりたいこと」をテーマに「まなびポケット」でチャットを体験した。さらにSNSを使って「楽しかったこと」「楽しくなかったこと」を出し合った。本時では「SNSモラルとは」をテーマとし、SNSのより良い利用方法を考えていく。

冒頭では前時の振り返りが行われた。
宮澤教諭:「SNSには具体的にどんなものがあるでしょうか?」

ほぼ全員の子どもが手を上げ、「Twitter!」「YouTube!」「TikTok!」「LINE!」と次々に元気よく答えた。

宮澤教諭:「YouTubeを見たことある人はいますか?また、どんな動画を見ていますか?」

およそ9割の子どもが挙手。ゲームの攻略動画、アニメ関連動画を見ているという回答が目立った。中には「ゲーム攻略動画は見るとネタバレになってしまうから見ていません」という意見も。

宮澤教諭:「YouTubeは色々なことを知ることができて、便利であることがわかりますね」
SNSの利便性をあらためて確認したうえで、前時で挙げられたSNSにまつわる以下の経験談を分類していく。

  • みんなでパソコンを使って楽しかった
  • 遠くに住んでいるいとこと話ができた
  • ダメなことをやっていた人に注意した
  • 友だちが「いいね」とコメントをくれた
  • スプラトゥーン(※ゲームの名前)の話(ができた)
  • 好きなキャラクターの写真を載せた
  • 知らない人から連絡が来た
  • 人を笑わせるコメント(があった)

ここでは「ロイロノート」を活用。「楽しかったこと」のカードは座標軸のプラス側に、「楽しくなかったこと」のカードはマイナス側にそれぞれ並べていく。

1人で考える時間は10分ほど与えられた。子どもは試行錯誤しながら、器用に指を使いカードを動かしていた。

宮澤教諭:「完成したら、友だち同士で画面を見せ合ってください。また自分と同じところ、違うところを探してください」

「これはマイナスだと思うよ!」「僕とほとんど同じだ」「知らない人から連絡が来たら絶対に嫌!」などさまざまな意見が飛び交った。

続いて、各カードを座標軸(プラスorマイナス)に置く理由が発表された。

<知らない人から連絡が来た>
「フォロー中のYouTuberの動画に『すごいね』とコメントしたら、知らない人から『全然すごくないじゃん!』とコメントがついて嫌な思いをしました。だからマイナスだと思います」
「知らない人の中には不審者や泥棒がいるかもしれないのでマイナスです」

<遠くに住んでいるいとこと話ができた>
「いつもは長い時間をかけて移動しなければ話ができないけれど、パソコンを使えばすぐに話せるのでプラスだと思います」

<好きなキャラクターの写真を載せた>
「そのキャラクターを嫌いな人が嫌な思いをするのでマイナスです」
「キャラクターを知らない人が『このキャラクターは何?』と質問したら、『えっ、知らないの?』とバカにされて嫌な気持ちになるかもしれないからマイナスだと思います」

<スプラトゥーンの話(ができた)>
「自分がスプラトゥーンが好きだったらそのコメントは楽しいと思うからプラスです」
「ゲームをやりたくてもできない子にとっては、そのコメントを見たら嫌な気持ちになると思うからマイナスだと思います」

<人を笑わせるコメント(があった)>
「誰かをバカにするものもあるかもしれないからマイナスです」
「コメントの内容によってマイナス、プラスどちらにもなると思います」

動画を視聴し、軽い気持ちが人を傷つける可能性があることを知る

宮澤教諭:「SNSはコメントを書いた本人はもちろん、コメントを書かれた相手、さらには世界中の色々な人が見ています。ここをよく考えながら、次の動画を見てください」
教室前方のテレビでSNS事例動画を全員で視聴。SNSの利用には「相手」が大きく関係していることを気づかせる。

動画の内容

サッカーの練習中の転んでしまったA君を友だちのB君、C君が撮影し、ふざけてSNSに投稿。
その動画は瞬く間に拡散し、学校の誰もが目にすることに。
それを知ったA君は深く傷つき、学校を休み始める。
心配したA君の母親は学校に連絡。事情を話した。
B君とC君も学校に来ないA君を心配しており、軽い気持ちでSNSに投稿してしまったことを後悔した。

動画の視聴後、B君とC君の行為がなぜ悪いことなのか子ども同士で話し合う時間が与えられ、その後全体へ発表された。

以下のような意見が出された。

「人の気持ちを考えずに、勝手にネットに載せるのはいけないことです」
「相手に許可をもらってから写真を投稿しないとダメだと思います」
「勝手に投稿したことが大きな問題」
「悪いと思わず投稿したとしても、あっという間に世界に広がってしまうので、逮捕されるかもしれないと思います」

宮澤教諭:「B君とC君は最初、どんな気持ちで投稿しましたか?“A君に意地悪してやろう” “学校に来なくさせてやろう”と思っていましたか?」

児童:「遊び半分でした」

宮澤教諭:「そうです。面白いと思っただけですよね。ではA君はなぜ学校を休むことになったのでしょうか?」

児童:「学校に行ったらみんなに笑われて、辛い気持ちになるからです」

宮澤教諭:「“笑わせてやろう”という気持ちがマイナスになってしまったんですよね?」
B君とC 君はA君を最初から傷つけようとしたのではなく、面白半分でやったことが傷つけてしまったことを、宮澤教諭は強調した。

さらに子どもからは以下の意見が寄せられた。

「B君とC君が勝手に投稿することを誰かが注意していたらA君は傷つかなかったと思います」
「面白いと思って投稿するとしても相手の許可を取らなくてはダメです」

宮澤教諭:「SNSを投稿する時は人の気持ちをきちんと考えることが大事です。また、イラストや写真は書いた人、撮った人に権利があります。そのため、勝手にSNSに投稿してはいけないことを覚えてください」という言葉で授業は締めくくられた。

最後に学びの振り返りをロイロノートに記入。オンラインで宮澤教諭に提出する。ロイロノートには以下のような感想が書かれていた。

「相手を笑わせるコメントは内容によって傷つけることがわかった」
「ネットのいじめはダメだと思った」
「SNSを投稿する時は人の気持ちを考えて、本人に許可を取らなければいけないことがわかった」

後編では、授業者の宮澤大陸教諭、ICT研究主任の山﨑怜教諭へのインタビューを紹介する。

取材・文・写真:学びの場.com編集部

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