2021.11.15
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授業から垣間見るBYODによる教育活動の展開 北海道教育大学附属函館中学校の先駆的な取組(前編)

文部科学省が進めるGIGAスクール構想により、2021年度より全国の小中学校で1人台端末環境が実現した。多くの学校では2021年が導入初年度という状況だが、北海道函館市にある北海道教育大学附属函館中学校(以下、同校)では、1人台端末環境を整備してから2021年度で9年目を迎えた。
同校の生徒は1人Chromebookを購入。端末を駆使し、Google検索はもちろんGoogleドライブや、Googleスプレッドシートなどクラウド環境を活用しながら授業が展開されている。BYOD(Bring Your Own Device)による教育活動の展開や課題を取材した。

授業①3年社会科:現代の民主政治と社会 地方自治と私たち

BYODを情報収集と整理に活かす

ICTをフル活用しながら地方自治の基本的な考え方と地方公共団体の仕組みや住民の権利・義務についての授業が行われていた。

授業の前半は、郡司教諭がGoogleスライドを教室前面に映しながら、地方財政など地方公共団体の基本的な知識と、後半に行われるグループワークの進め方について説明。後半は3~4人のグループで任意の市区町村を一つ選定し、その市区町村の課題を明らかにして政策案を立案するという学習課題に取り組んだ。

社会科 郡司 直孝 教諭・研究主任

授業後半のグループワークでは、グループごとに市区町村の地方行政と人口構成を調べて、各自がGoogleスプレッドシートに記載していった。みなパソコンに向かいインターネット検索しつつも、グループ内で情報を共有したり相談したりしながら真剣さとともに和やかさを感じられる雰囲気だ。

ここでの課題の一つは、世の中にさまざまな情報が溢れる中、いかに適切なサイトから情報を引用できるか。この単元の狙いは、社会科の公民分野に関する知識と理解を深めるとともに、ICTを活用した情報収集の技能を磨くことも学びながら実践するという意図もある。

生徒ごとの進捗具合をはじめ、どのサイトから何の情報を引用しているかは、各生徒が記載したGoogleスプレッドシートを見れば一目瞭然。教諭が教室内を見回り質問を受けるだけではなく適宜適切なアドバイスもしやすい環境のためか、結果的にほとんどの生徒が適切なサイトから情報を引用できていたようである。

板書を写す時間に他の活動を

授業の前半、生徒の受講姿勢がそれぞれ異なっていたのが印象的だった。各自の端末内にメモを打ち込みながら話を聞く者、ルーズリーフなどへ手書きでメモを記す者、メモはとらずに教諭の話に耳を傾ける者。一見するとみなバラバラな行動に映るが、郡司教諭はこれでよいと語る。

「ノートに書くことが大事なのではなく、必要だと感じたことをノートに手書きでメモするでも、付箋を教科書に貼るでも、PC内に記載して保存するでも、自分が整理できていればいいのです。ノートに写せば覚えられるわけではないので、『写経』は不要です。情報の収集と整理が大事なことなのです」

授業で映し出されている資料は事前にGoogleドライブへアップされているので、生徒は授業中に板書をする必要がない。授業中は教室前面を見ながらでも、自分のパソコン上で閲覧しながらでも話を聞くことが可能で、重要だと思ったことを生徒各自で記録を残せばよい。さらに自宅などで予習や復習する際にも閲覧もできる環境だ。

これらどれもが、BYODの環境下でICTを活用しているからこそできる授業展開だ。生徒も教諭も教育現場でICTを大いに活用していることを肌で感じられる授業であった。

授業② 2年数学:一次関数

数値の変化を表す図形を動かしながら提示

図形の面積の変化について調べ、一次関数の特徴など基礎的な知識や具体的な事象を考察する授業が行われていた。授業前半は教諭がGoogleスライドを教室前面に映しながら今回取り上げる一次関数の説明と設問を提示し、後半は3~4人のグループで設問に取り組むという流れだ。

社会科と同様に、数学においてもBYODの活用は進んでおり、教材はGoogleドライブにアップされていて、授業中はもちろんいつでもどこでも予習復習できる環境になっている。

数学科 有金 大輔 教諭

授業前半では、一次関数の数値の変化を表す図形を提示し、数値の変化とともに図形が変化していく様子を見せながら解説していた。図形が変化していく様子はまるで動画を見ているかのような感覚で、誌面上に印刷された図形を見るよりもはるかに変化のイメージがしやすく、理解しやすい内容であった。この図形もドライブ上にアップされているので、授業中は前を見て話を聞くこともできるし、自分のパソコンを見ながら話を聞くことも可能だ。

後半は、図形に合わせて方程式を求めるという課題に対し、グループで取り組んでいた。授業前半に見た変化する図形を各自の端末で確認しながら、どのような式になるのかを話し合って答えを探り、各自のデバイス内のワークシートに結論を記載していった。

手軽にノートを共有

この間、教諭は教室内を巡回し、質問を受けるだけではなく各グループの様子も見ながら参考やお手本になる事例をチェック。ほかの生徒たちのヒントになりそうな内容を見つけると、教諭が片手に持つタブレット端末で生徒の記載内容を撮影し、その場で教室に投影。

「はい、これいいですね、みなさんちょっと前を見てください」

タブレット端末上に書き込みしながら解説を加えて紹介していった。ヒントを得た生徒たちは議論がより弾み、続々と答えをパソコン上に記していたようである。ICTがなかったら実現できない授業展開だ。

情報収集と集約が多い社会科と異なり、数学ではグラフや表など数値の変化をわかりやすく、素早く示すことができるということがICTの一つのアドバンテージ。情報共有の手軽さも合わせ、数学でも十分活用が進んでいるようだった。

後編では、同校が以前よりICTを導入していた経緯と活用の狙いや課題など、郡司教諭と有金教諭、白川副校長にインタビューした様子をレポートする。

取材・構成・文・写真:学びの場.com編集部

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