2021.04.13
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チーム学校で推進するGIGAスクール時代の授業づくり(後編) ICTを核とした働き方改革

すべての児童生徒に確かな学力を身に付けさせるためにICT活用を推進している浦安市。市立高洲小学校では202010月より、小学6年生に11台の児童用端末が整備された。これまでもパソコン教室や1クラス分のタブレットが整備され、ICTを活用できる環境ではあったが、11台活用になってからはどのようなことが実現できたのだろうか。石橋校長や齋藤教諭に話をうかがった。

「使いたい」と思った時にすぐ使えるのが1人1台活用の魅力

図工の飾り付け用チャネル

ー1人1台の端末導入によって、どのような変化が起こったかお聞かせください。

齋藤教諭 授業中、「この資料を見せたい」と思いついた時に、すぐ実現できるようになったことが大きな変化ですね。導入前は、総合的な学習の時間など一部の教科でのみで児童用端末を使っていましたが、1人1台になったことですべての教科に活用できるようになったのも大きなポイントです。また、これまでも浦安市から支給されたタブレット端末40台を全校で共有していましたが、それでも使えるのは1週間に2回が限界。パソコン教室を利用できるのは週に1回程度だったので、劇的な変化と言えますね。

―授業ではどのように児童用端末を活用していますか。

齋藤教諭 まず、プログラミング的思考と親和性が高い算数と理科から活用をスタートしました。算数では時間が余った時、オンラインプログラミング学習サービス「ハロー・プログラミング」を使用する日もあります。関数やグラフ、場合の数などの応用には大変役立っていますね。このように「隙間時間」を有効的に使えるようになったことも大きいです。以前では児童用端末を使いたくても、パソコン教室に行かなくてはならなかったので、そのような時間の使い方は不可能でした。図工では「造形遊び」という校内の色々な場所に飾りを付けるという授業がありますが、先生と離れていてもTeamsを使えば「先生、校庭のここに来てください!」「ここはどうやればいいですか?」などと、その場で会話できるので利便性の高さを感じました。今年は、卒業文集もWordで書いていて、思い出の動画も1人ずつ作りました。

学びの振り返りや責任感醸成にも有効

齋藤教諭

―1人1台活用が特に有効だと感じる場面をお聞かせください。

齋藤教諭 学んだことを振り返る時ですね。「リフレクションシート」を活用すれば、学びをデジタルに残すことができ、さらに他の子からコメントをもらうことが可能です。ノートをめくるよりもデジタルの方が子どもにとって振り返りやすく、学びを見直し、次につなげることに役立っていると感じています。

―導入によって子どもに変化は見られましたか。

齋藤教諭 自分専用の端末を使えることがとても嬉しいようで、学習への意欲が向上したと見受けられます。ローマ字学習という意味でも大きな成果ですね。導入直後はタイピングができない子も大勢いましたが、今では全体的にスピードが上がりました。データやフォルダの整理方法も身につき、授業中に私が「あのデータを出して」と言うと、速やかに探せています。端末の管理もしっかり行えていて、責任感の醸成にもつながったと言えます。1学年分整備された端末を各学年に1クラス分として導入するのではなく、「下学年が使いたい場合は貸し出すが、6年生専用」として良かったと思っています。

―子どもが1人1台端末を利用する中で問題などは発生しましたか。

齋藤教諭 起こりそうな問題を予測して事前に対策をしっかり立てたので、大きな問題は起きていません。あえて言えば、8割の子どもがスマホを持っていて、SNSでの会話が習慣化していることもあり、Teamsでチャットする際にLINEのノリでwなどを入れながら書く子どもが多いことがわかり、言葉遣いについても遊びとは異なると指導しました。また、昨年は浦安警察署の方をお呼びして、パソコンやスマホの扱い方のアドバイスをしていただきました。不注意で落として破損してしまったというのも2件ありました。

―学校外でICTを活用されている場面はありますか。

齋藤教諭 色々な事情で学校に来ることが難しいお子さんが本校に数人おり、そのようなお子さんに端末を貸し出し、自宅でのオンライン学習を進められたことが良かったと考えます。教室にパソコンを置いて授業をリアルタイムで配信し、Teamsを通して参加してもらう形です。自宅にいても、他の子と一緒に勉強している気持ちになり、すごく励みになっているようです。いつか学校へ来ようと思えるきっかけになればいいですね。

2回目の緊急事態宣言が発令された1月には、念のため3回、5時間目に持ち帰り、6時間目にオンライン授業を試しました。学級担任が担当している、学活、国語、家庭科の授業を双方向で行いましたが、手芸はお互いの手元を映せるので好評でした。

情報のデジタル化によって、教員同士の情報共有も容易に

6年生教員用チーム

―教科担任制はいつから導入されたのですか。

石橋校長 数年前から徐々に取り組んでいましたが、本格的に始めたのは昨年です。低学年は毎時間ではありませんが、すべての学年で取り入れています。学年の構成や教員の得意分野をふまえながら、どの教員がどの教科を担当するかを決めました。教科担任制を実施するにあたっては教員同士の情報共有が不可欠ですが、データがデジタルで残されていることにより、スムーズに行えています。

教材研究に時間をかけられるだけでなく、若手教員も1クラス目の授業での反省点をすぐ2クラス目の授業で改善できるので、授業力がつきますし、気になる児童がいれば複数の先生で見守ることができるようになり、大変有意義だと感じています。

プリントの印刷・配布・回収の手間が軽減し、業務効率化にもつながった

石橋校長

―先生方の仕事における効率性に変化はありましたか。

齋藤教諭 課題をデータで提出することが増えたので、教員側の作業時間が減りましたね。今まではプリントを子どもに配布し、それを集め、さらに出席番号順に揃えるなど、時間も手間もかかっていました。中には提出しない子もいるわけなのですが、データで管理することで、誰が提出していないかも一目瞭然になります。私からのコメントも、手書きのときより短時間で入れることができます。従来のプリント作業と比べて、費やす時間も大幅に減ったところも大きな価値がありますね。従来の教員仕事はアナログ作業が多かったので、慣れるまでは一時的に業務時間が増えるかもしれませんが、中長期的に見れば間違いなく働き方改革にもつながると思います。

―具体的に削減された時間がわかりましたらお聞かせください。

石橋校長 教員の平均退勤時刻では1時間〜1時間半くらいの削減になったと言えます。従来では黒板に貼るための資料作成で、拡大機という1枚印刷するのに10分もかかる印刷機を使っていましたが、子どもが資料をそれぞれの端末で見るようになったので準備時間も減りました。

技能教科を含む全教科でICTを活用

杉山ICT支援員と齋藤教諭

―ICTが苦手な先生もいらっしゃると思いますが、使い方などの相談にのる体制があるのですか。

石橋校長 2018年4月からICT支援員が週に1回来校しています。以前は導入当初の一定期間だけで、本格的に使い始める頃には来なくなっていて相談できず、活用が進まないという状況でした。定期的に来校されるようになって、私たちがやりたいことの実現方法の提案を速やかにしていただけますし、質問してもすぐに回答をもらえるので助けられています。

例えば、雰囲気だけでも全校児童が集まって合唱できないかなあと相談すると、Teamsの1画面に集合させる方法を提案してもらえたり、算数の図形を動かして説明したいと相談すると、PowerPointで作ってくれたりといった支援です。プログラミングの授業中などには教室にいてもらうこともあります。全教科にわたりサポートしてくださるので、学校としては本当に有り難く、心強い存在です。私たちにとってもスキルもアップになったと実感しています。

―今後、ICTを活用した新しい取り組みは考えられていますか。

石橋校長 初めは国語・算数・理科・社会での活用が多かったのですが、音楽や図工、体育といった技能教科でもICTを活用できるようになって自信がつき、価値があったと感じています。そういう意味で、今後も全教科で積極的に活用していきたいですね。

齋藤教諭 どんどん新しい情報技術が出てきて、常に変化し続けます。これでいいという形はありません。そのため、ICT活用を指導する上では、教員自身が社会の流れを察知し、学び続ける必然性を感じています。それには様々な先生に情報を発信し、フィードバックをもらうことがカギとなってくるのではないかと思います。

記者の目

今回、3クラスの授業を取材し、何よりも子どもたちがパソコンを自然体で、大人顔負けに使いこなしている姿が印象的だった。ネットでの情報収集や画像の検索、パワーポイントでの資料作り、スムーズなタイピング、どれをとっても社会人並みに見えた。情報端末の活用について、筆者(41)が小6の時とはもはや180度変化していることを改めて実感した。この子たちが将来、社会でどのように活躍していくのか楽しみで仕方ない。

取材・構成・文・写真:学びの場.com編集部

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