2013.03.05
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中高生の金銭教育はどうすべき?

第46回目のテーマは「中高生ともなると、子どもによって金銭感覚に差が出てきます。金銭教育は必要でしょうか?」です。

親子でお金について話し合ってみましょう

小学生以下の金銭教育については以前アドバイスしました。中高生ともなると、家庭の経済状況やアルバイトをする・しない等によって、子どもそれぞれの金銭感覚に差が出てくる頃です。また、欲しいものもスマートフォン等、高額化してきますので、やはり金銭教育は行った方がよいでしょう。それにはまず、親子でお金について話し合うことが大事。その際、いくつか注意すべきポイントが考えられます。

第一に、子どもの意見を尊重すること。中高生にもなれば、すでに人格が形成されています。我が子といえども、一人の人間として扱いましょう。その上で、たとえばお小遣い制度について「定期的に渡すか、必要時に申告されたら渡すか」とか、「どのくらいの頻度で、いくら必要か」といったことを、先に子どもに聞いてみます。子どもの答えがもしも「毎月1,000円」であれば、親は「その1,000円は毎月どんなものに使いそう?」と聞き、子ども自身に自分のお金の使い道や管理方法について考えさせるのです。

従って、親が子どもの生活や行動を勝手に想像して、たとえば「うちの子、中学1年生だから、お小遣いは毎月2,000円くらいでいいだろう」などと、親だけで決め付けるのはよくありません。子どもの思う金額とあまりに食い違うと、その後、子どもが必要以上にお金を欲しがる、お金を得るために秘密でアルバイトを始める、といったことが生じるかもしれません。前述のような対話を通じて親子で一緒に考えていけば、それらも防げるのではないでしょうか。

ところで、中高生ともなるとほとんどの子が携帯電話を持つようになります。最近はスマートフォンが普及し、毎月の利用料金も馬鹿になりません。しかし、携帯電話やPC等の情報通信機器にかかる費用は、カバンや通学服、文房具等と同じく「必要経費」と考えるべきでしょう。今後もますます進展する知識基盤社会において、これら機器の役割は大きくなっていくはずです。とは言え、購入に際しては、課金制のコンテンツは利用しないとか、端末からは買い物をしない等、高額な請求が来ないような使い方を親子できちんと相談して決める必要はあるでしょう。なるべく節約できる使い方をしたいものです。子どもの卒業時、あるいは年度初め等をきっかけに、情報モラル教育も兼ねて、携帯電話・PC等の使い方を家庭で取り決めてはいかがでしょう。

子どもは親の背中を見て育ちます

そもそも子どもの金銭感覚は、親のそれとどうしても似てくるもの。たとえば、私の1番上の姉は元女優で、高級品を好み、いわゆる“セレブな”生活志向をしています。すると、その子どもも自然と高級志向となり、そのようなお金の使い方をするようになりました。2番目の姉は医者であり実業家でもあります。投資等、財産を増やすことが好きで、その子どもたちも金銭を最も大切なものとして考えるようになりました。一方、私自身はあまりお金に執着がありません。お金で買えないもの、お金がなくても楽しいことや幸せなことはたくさんある、という考え方です。すると、息子たちも同じような価値観を持つようになりました。

このように、子どもは親をよく見ていて似てくるものです。我が子に「倹約しなさい」と言いながら、親自身が贅沢をしていたら、子どもだって色々と欲しがるはず。ですから親は、自分のお金の使い方についてまず注意を払うべきです。そして、我が子に身につけてほしい金銭感覚は、親が実行して見せる。お金の使い方は、親子の間でフェアでなくてはならないと思います。

学校でもグローバルな視野でお金について話し合いましょう

学校でもできることがあると思います。道徳や社会科、家庭科など、お金に関連する科目の時間を使って、「お金で幸せは買えるか?」とか「100万円あったら何をするか?」といったテーマで議論し合うのです。

その際、身近な家族や地域、国内の事情だけでなく、世界の子どもたちにも話が及ぶとよいでしょう。日本では幼い子どもが貨幣に触れる機会もありますが、たとえばブータンの山奥の村では、貨幣など見たことも触ったこともない子どもたちがたくさんいます。自給自足が基本で、店がないからです。アフリカにもそういう子どもたちがいました。だからといって必ずしも彼らが不幸ではなく、「自分たちは幸せだ」と言う子どもたちにも多く出会いました。

「お金とは何か?」「幸せとは何か?」を考え、そこからさらに、消費社会の仕組みや通貨の発生等の学習に関連させていってはどうでしょう。また、自分は一体何にお金を使いたいか? 物質的なものに? それとも体を鍛えたり、資格や知識を得たり、交友を広げたり等の自分磨きに? 一度考えさせてはいかがでしょう。
 その人の金銭感覚には、生き方の価値観が反映されていると言えます。家庭でも学校でも、大人と子どもが一緒にお金について話し合うことは、とても意味のあることだと思います。

アグネス・チャン

1955年イギリス領香港生まれ。72年来日、「ひなげしの花」で歌手デビュー。上智大学国際学部を経て、78年カナダ・トロント大学(社会児童心理学科)を卒業。92年米国・スタンフォード大学教育学部博士課程修了、教育学博士号(Ph.D.)取得。目白大学客員教授を務め、子育て、教育に関する講演も多数。「教育の基本は家庭にある」という信念のもと、教育改革、親子の意識改革について積極的に言及している。エッセイスト、98年より日本ユニセフ協会大使、2016年よりユニセフ・アジア親善大使としても活躍。『みんな地球に生きるひと』(岩波ジュニア新書)、『アグネスのはじめての子育て』(佼成出版社)など著書多数。2009年4月1日、すべての人に開かれたインターネット動画番組「アグネス大学」開校。2015.6.3シングル『プロポーズ』release!!(Youtubeで公開中)

AGNES CHAN OFFICIAL SITE ~アグネス・チャン オフィシャルサイト

構成:菅原然子/イラスト:あべゆきえ

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