2005.12.27
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自由の国オランダの子どもたちの食事事情

今回はオランダ在住のかおる・ホーフ・アッカーさんからの話題です。同性愛者同士の婚姻の合法化や安楽死の合法化など、人々の自由な発想から法が定められている国、オランダ。さて、そんな国の子どもたちの食事事情とは? これまた自由そのもの?

風車にチューリップ、のどかな田園風景……"ヨーロッパの庭"とも呼ばれるオランダ。
この小国に住む人々の心には、常に"自由"が存在する。この"自由"とは?
これなくして、オランダは語れない、と言っても過言ではない。人々を動かす原動力は、"自由"。人々の精神には自由が宿り、それに端を発してこの国の法律までもが選定されているからである。
ドラッグの半合法化、売春の合法化、同性愛者同士の婚姻の合法化、そして安楽死の合法化……。法に人がのっとっているのではなく、人々の自由な発想から法が定められているのが、オランダ式なのだ。故に、生活の随所にも、その"自由"が見え隠れするのは当然の事なのである。子どもたちの学校生活も然り。

4歳から義務教育が始まるオランダだが、児童は、というと、それこそ十人十色。学校へ、お気に入りのサッカー選手の格好をしていく子もいれば男子のピアスも当り前。ちょっとメイクアップをしておしゃれをする女子もいれば、正に優等生の鏡、のような子も。
どんな格好をしていようとも、それは自由。しかし、学校へ行くのだから、勉強だけはしっかりとする。そこだけにけじめがついていれば、あとはどんな格好であろうと構わないのだ。
さて、そんな子どもたちのお腹を満たす、食事事情はどうなっているかというと、これまた自由そのものである。参考までに、とあるオランダ人女子(8歳)の一日の食事を例に挙げよう。

パンにチーズ、ジャムを挟んだサンドイッチ(母親の手製)、紅茶。
間食 飴1個
パンにピーナッツバターを挟んだサンドイッチ(父親の手製)、牛乳1本(学校で支給される)
間食 チョコレート1枚、フレンチフライ(外食)
夕食 フライドチキン、フレンチフライ、サラダ(父親の手製)、コーラ
寝る前 ヨーグルト、水1杯
と、こんな具合である。
この朝食と昼食に注目して頂きたいのだが、このサンドイッチは毎日、全く同じものである。あくまでも、薄切りパンにバターを塗り、間に何かを挟む、至ってシンプルなものである。これだけを繰り返していればいいのだから、オランダの子の親は随分、楽にも思えてくる。母親または父親が、忙しくてこれさえ作れない場合は、子どもたちは勝手に自宅へと戻ってきて昼食を取り、また学校へと帰る事もある。オランダでは、越境入学は一般的ではなく、学校が至近距離にある場合が多いため、これも可能なわけだ。
給食もないわけではない。もちろん、親が給食代を払うわけだが、何事も安く済ませよう!というオランダの倹約的感覚からいくと自宅に戻ってきて食べたほうが安上がり、なのである。そうでなければ、クラスメートの家へ行って一緒に昼食を食べさせてもらう事もある。それも無理なら、スナックを売る店へ行って何か買って食べる。
学童用にか、学校の近くには"スナック・バー"と呼ばれる飲食店が必ずといっていいほど営業している。ここで売られているスナックだが、これまたシンプル。ジャガイモを油で揚げたフレンチフライ(フリット、と呼ばれる)にマヨネーズをつけて食べるものが、子供たちには1番の人気。昼食を取る方法を選ぶにも、これだけの自由な選択があるのだ。
これだけ昼食時に自由な行動を取っていても午後の授業ともなれば、きちんと皆、教室で着席していて授業再開、となるのだから、これは見事である。昼食を食べに帰ったついでに寄り道をして、授業をサボって……とか、そういう行動を取る子がいても、誰も何も言わない。自由にその子がやりたいようにすればいいからである。ただし、学校へ行かないと、遂にはどういう事になるか…?はその子の態度一つにかかっているわけだ。大袈裟に言えば、遊ぶか、学ぶか?、となる。
こうして見ていると、どうやらオランダの子どもたちは、与えられた自由の中で、小さい頃から一人で考え、自分で責任を取るにはどうしたらいいのかを選択する練習ができる環境に置かれているようである。
わが息子は、今年から学校へ通うようになった。昼食時は、帰宅する事もあればお友達と校内でお弁当を食べる時もある。お弁当持参の時には、その中に手製の手巻き寿司がちょくちょく登場するのだが、クラスメートにそれを全部あげてしまい、自宅に戻ってきて、パンをもそもそ食べている事もある。寿司も、日本さえも知らないクラスメートたちに遠い国の話をするのが、息子の自慢なのであるが……。
「普段、僕はオランダ人。でも、お弁当に寿司が入っている時は日本人!」というのが、息子らしい何とも自由な発想だ。
関連情報
記事協力:海外書き人クラブ  
http://www.kaigaikakibito.com/

海外書き人クラブお世話係 柳沢有紀夫さん の本もご覧ください!
 『オーストラリアの小学校に子どもたちが飛び込んだ.

オランダ在住:かおる ホーフ アッカー

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