2005.11.22
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実践重視の環境教育 スウェーデンからエコスクール事情

今回はストックホルム在住の船渡和音さんからの話題です。スウェーデンのエコスクールでは、教育に環境の視点を取り入れた活動をかなり本格的に行っています。さて、その効果とは?

コンポスト機に入れて1ヶ月後には、生ゴミもこのような堆肥にかわる。

コンポスト機に入れて1ヶ月後には、生ゴミもこのような堆肥にかわる。

「あー(汁が)付いちゃった」「キャー重たーい」と、はしゃぎながらも、せっせと仕分けしてゴミを捨てる子どもたち。指導する補助教員のマイサンさんは、ストックホルムの南、ナッカ市立の学校、ビヨルクネススコーラで環境の授業を受け持っている。この学校は環境への取り組みに送られる、グリーンフラッグの認定を97年に受けた、環境重視の学校だ。

グリーンフラッグとは、世界的にはエコスクールと呼ばれている活動のスウェーデン版。エコスクールとは、FEE(Foundation for Environmental Education、URLはhttp://www.fee-international.org)というデンマークに本部を置き、世界41カ国に協力支部があるNGO組織が94年に始めた。ただ教育に環境の視点を取り入れましょう、というレベルではない。かなり本腰をいれないとできない、本格的な運動だ。

コンポストから得られた堆肥を使って、校庭内には畑も作った。今年はおいもを収穫。

コンポストから得られた堆肥を使って、校庭内には畑も作った。今年はおいもを収穫。

ISOといった環境マネジメントシステムに基づいた制度を導入し、参加、目標設定、評価、報告のプロセスに沿って活動が進む。参加も、生徒はもちろん、教師、保護者なども含めた環境委員会を設け、テーマと具体的な目標の設定をし、1年の活動後に達成度を評価して事務局に報告する、という一連の活動ができてはじめてグリーンフラッグの認定が得られるほどの厳しさである。にもかかわらず、スウェーデンでは実に1300校以上がこの認定を受けている。
給食調理室の横にあるコンポスト機。サーシャが生ゴミを入れるふたを開けて見せてくれた。

給食調理室の横にあるコンポスト機。サーシャが生ゴミを入れるふたを開けて見せてくれた。

調理室のすみにまとめられたゴミ。

調理室のすみにまとめられたゴミ。

テーマは事務局があげる、水、エネルギー、森、リサイクル、ライフスタイルと健康-の5つの中から選ぶ。マイサンさんの学校では、リサイクルを取り上げた。「身近なので教えやすいことと、実践的だったことからリサイクルを選びました」。実践的とは、学校がこの活動から利益を得ることができたという、教育効果以外の実利があるということ。つまり、学校からでるゴミを処分するために、月に2度ほど来てもらっていた市のゴミ処理トラックを頼む必要がなくなったおかげで、その分の費用(およそ年60万円ほど)が、ほかの活動にまわせるようになった。
学校校庭内の環境ステーション(分別ごみ収集所)

学校校庭内の環境ステーション(分別ごみ収集所)

ビヨルクネススコーラは大きい。保育園も併設され、日本の小学校1年生から中学校3年生までが通うので、全校生徒900人あまり。マイサンさんは、毎週3日、この中から4人づつを授業から引っ張り出して、45分ほどをエコスクール活動に参加させる。ただ、保育園児と小学校1年生だけは、みんなで落ち葉を集めて掃除することにしている。
ダニエルとエリックがゴミを分別して捨てる

ダニエルとエリックがゴミを分別して捨てる

マイサンさんは休憩時間と環境教育を担当している。

マイサンさんは休憩時間と環境教育を担当している。

今日の4人は小学校4年生のセシリア、サーシャ、エリック、ダニエル。まずは給食調理室のすみにまとめられたゴミを外に出す。職員らがまとめておいたダンボール箱類も外へ。生ゴミはコンポスト処理機に。その他のゴミは校庭内に設置された環境ステーション(分別処理収集所)へ運ぶ。ここでダンボール、プラスチック、ガラス、金属に分別して捨てる。ここまでが実習。残りの時間はこのゴミは何に分別されるか、分別されたゴミがどう処理されるか、などをマイサンさんのお部屋で学習する。そのほかにも、授業の自由研究で学校のこの活動を取り上げたクラスもあり、学校から1年に1.8トンのゴミが出ていると報告があった。
マイサンさんは、実物を見せながらゴミ分別の説明をする。

マイサンさんは、実物を見せながらゴミ分別の説明をする。

「休憩時間の続きみたいで、授業に出るより楽しいよ」という子どもたちだが、「ここで教えて反応のいい子でも、家で同じように分別するかどうかはまた別なのよね」とマイサンさん。それでも校庭のゴミを自主的に拾うようになった子供たちがいたりして、学校は以前よりきれいになったそう。そして何よりも、コンポスト処理機から作られる堆肥を利用した畑での収穫が、毎年の楽しみだ。このように楽しく実践することで、リサイクルの知識と習慣は、確実に子どもたちの身についていっているようだ。
関連情報
記事協力:海外書き人クラブ
http://www.kaigaikakibito.com/

海外書き人クラブお世話係 柳沢有紀夫さん の本もご覧ください!
 『オーストラリアの小学校に子どもたちが飛び込んだ.

ストックホルム在住/船渡和音

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