海外の学校から「学校帰りの楽しい?買い食い」 タイ・バンコクより
タイのバンコクでは、学校と名のつく場所の前には、午後の下校時間に合わせて屋台がずらりと並ぶ。アイスクリーム、カットフルーツ、クレープ、串に刺した揚げ菓子、氷入りの飲みもの......。そのどれもが5バーツ、10バーツといった小銭で買えて、しかもちょっと食べたり飲んだりするには格好のおやつなのだ。
学校帰りの子どもたちは校門を一歩出ると、まずこれらの菓子を買い求め、それを食べつつ家路に向かう。学年が上がって中学生くらいになると、お小遣いの額が増えるのか、屋台のそばを食べたり、コンビニでペットボトル入りのジュースを買い求めたりしている。
ワタシがその昔小学生だった頃は、学校帰りのお菓子の買い食いはいけないこととされていて、校門から十数メートルしか離れていない駄菓子屋に立ち寄るのはちょっとしたスリルを伴ったものだが、彼らにはそんな気負いはまったく見られない。なぜなら、学校関係者はおろか、保護者までもがこの買い食い行為を「いけないこと」と捉えていないからなのである。
タイでは地域の子どもたちを集めた集団登校というシステムがないため、スクールバスのサービスがない公立の幼稚園や小学校は、保護者が子どもを送り迎えするのが当然とされている。子どもたちは迎えに来た大人に菓子をねだり、また大人のほうもそれが当然のごとく、子どもが食べたいというものを買い与えている。
ところが、こうした食生活が糖分の取りすぎを招いてか、肥満や虫歯、果ては学習能力の低下にまでつながり、それが社会問題にもなっているのだ。
今年の3月には、「タイの子どもたちは間食から摂取するカロリーが多く、肥満児の17.8%は症状が表面化していないものの糖尿病にかかっている」という調査結果が新聞に掲載された。国立マヒドン大学の食品研究所は、2001年におけるタイ人の砂糖の年間消費量は29キロ(1日当たり約小さじ20杯)と発表し、バンコクを含む全国6県を対象にした間食と菓子類の消費に関する調査では、3~15歳までの子どもは、1日に必要なカロリーの27%を間食や菓子類から摂取していることがわかった(標準値は20%とされている)。
砂糖の大量消費は歯に影響を与え、6~8歳の子どもでは約7割が、永久歯が生えた13~15歳の子どもでも約6割が虫歯持ちという調査結果が出ている。歯の健康は食べものの咀嚼に関係し、野菜や果物などを食べたがらない子どもが増えると懸念されている。また、肥満の子どもたちの9割は睡眠中の呼吸に異常があり、その中の7%は睡眠中に呼吸停止をしているそうだ。これらの子どもたちの血中酸素濃度は、睡眠時間全体の半分に渡って低くなっているため、朝起きてから頭痛がしたり、日中に眠気をもよおしたりして、それが学習能力の低下につながっているとされている――。
タイ人の砂糖の年間消費量にはさすがに驚愕させられたが、タイでは料理でも菓子でも飲みものでも強烈に甘いものが多いので、なるほどそうかもしれないという感は否めない。
激しい暑さで体力を消耗しないようにという先人の知恵なのかもしれないが、庶民の生活に冷房が普及して、ちょっとした距離でも歩かずにバイクタクシーを使おうとするこのご時世には、甘い食べものは糖分の過剰摂取でしかないようだ。関連情報
http://gogo.chips.jp/kakibito/
海外書き人クラブお世話係 柳沢有紀夫さん の本もご覧ください!
『オーストラリアの小学校に子どもたちが飛び込んだ.』
タイ・バンコク在住:増成ヒトミ
地図画像著作権:白い地図工房&学びの場.com
※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。