機会があれば、別々の学年でも一緒に カナダ
雄大な自然に育まれ、一般的にカナダ人は大らか、悪く言えば大雑把かもしれない。でも、その大らかさが教育に生かされると...カナダ、バンクーバーからのレポートです。
我が家の子どもたちが通う学校は全校生徒200人弱と小規模な学校だ。その分、縦のつながりが強い。日本でも"縦割り学級"があるが、子どもたちの学校ではちょっと違う。お国柄のせいか、とてもカジュアルな形態だ。
まず、長男が入学して数日したときのこと。「始業10分から15分は読み聞かせの時間。保護者も参加できるので、是非どうぞ」、という内容の連絡をもらってきた。
「保護者も参加?」びっくりして覗いてみたら、確かに読み聞かせタイム。保護者だけではない。上級生も2人教室にいる。聞いたら*7年生だという。上級生、保護者、担任教師でグループに分かれる。そして、各グループ、「この本、読んで!」という1年生のリクエストに読み聞かせを開始。まだ、ちゃんと座っていられない子、集中できない子がいるが、ウロウロする子もどこかのグループで、少なくとも数分は聞いている。
上級生だが、一日二人ずつ。順に当番がまわってくる。弟や妹のいない子どもも、お兄ちゃん気分を満喫できるし、何より、1年生と7年生など、ややもすれば、交流は殆どないということになるが、しっかり顔馴染みになることができる。「カナダの学校もなかなかやるじゃない?」感心した。
この上級生の"読み聞かせ"だが、教師によって教え方が違うので、毎年、どのクラスでも行っているわけではない。しかし、継続的に何らかのかたちで、上級生が下級生のヘルプにくるというのは変わっていない。また、いつも7年生が1年生を手伝うというわけではない。
特別な行事だけではない。取材を申し込んでおいたところ、2月、娘の担任から「明日、一つセッションをするから」と電話があった。
この日の授業は、まず、下級生のほうは「今日は6年生が来てお手伝いをしてくれます。ペアでするので、お兄さん、お姉さんが自分でやってしまうようなら、一緒にするのだよとはっきり言うのですよ」と注意。上級生のクラスでも担任が二人で協力して行うプロジェクトであることを強調する。
両クラスが集まり、1年生と6年生のペア分けをした後、教師がプロジェクトを紹介する。曲線や丸など、何種類かの図形があるので、そこに想像力を使って何か付け足し、新しい絵を作るというものだ。
カナダの子どもは日本人より、「ませている」と思うことが多いのだが、一見、「幼稚」「つまんない」と言われかねないような内容でも、抵抗なく上級生は下級生と力を合わせて取り組む。学年が上になるにしたがい、思考が固まってきて、幼児の頃の想像力にはかなわないところがある。「これって、蝶々に見える!」という下級生のアイデアを「ライアン、すごいぞ」と素直に取り入れ、ちゃんとした"見せる"絵にするのは上級生。輪郭を書いてあげて、下級生が色を塗ったりと、うまく役割分担が自然にできていて感心した。
「チャンスがあれば、上級生と下級生が一緒に何かに取り組めるような時間も作ります」とは担任のキャノン先生。「お互いに学ぶことは多いですよ」
ハイライトは年度末を締めくくる運動会。チーム分けは紅白ではなく4チームに分けるのだが、各学年から子どもたちの集まる混合チームで、最上級生の7年生がリーダーを務める。エールをかける練習、チームの看板など、上級生のリードで、皆で力を合わせて行う。
また、当日の競技はスプーンリレーなどリレー方式で全員が参加するものばかり。やはり低学年のちゃんと競技のできない子どもたちを上級生が助けるのを見ていると微笑ましい。
体系だったものもではなく、こんな肩肘張らない、「機会があれば、別々の学年でも一緒に」と、いかにもカナダらしいスタイル。教師も「上級生はちゃんと助けてあげなさい!」などとあまり口出ししない。その分、生徒の自発性に任されるわけだが、言われなくとも"お兄ちゃん、お姉ちゃん"は、小さい子どもを助けてあげるものだ。
注)*バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州では多くの小学校は1年生から7年生までが学ぶ。しかし、学校によっては、公立でも5年生までというケースもある。
加えて、1年生の前に1年間、キンダーガーデン(小学校に付属、教育費は無料)の児童として学校に通うことも可能。
関連情報
http://gogo.chips.jp/kakibito/
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『オーストラリアの小学校に子どもたちが飛び込んだ.』
カナダ、バンクーバー在住 西川桂子
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