理科の研究発表 アメリカ・オハイオ州より
アメリカ・オハイオ州のアライアンス市から、理科の研究発表についてレポートします。日本の夏休みの自由研究と同様、アメリカでも理科の研究発表があります。少し趣の違う、アメリカでの仕組みをご紹介!
アライアンス市立グレード・スクール(8年制小学校)では、7年生(12歳)と8年生(13歳)が理科研究を行います。化学物質を合成して噴火火山の模型を作成したり、いろいろな色の光を当てて植物を観察したり、さまざまな釣り糸の強度実験をしたり、「M&M(日本でもおなじみの、カラフルな砂糖コーティングがなされたチョコレート)は、色によって味が違うのではないか」との題目で研究を行ったり。子供たちの創造力には驚かされることがあります。
まずは、子供たちが研究を進めていく過程から紹介します。ここでは例えば、「お風呂のタイル洗剤について」が題目であるとして進めていきましょう。
- まず子供たちは、テーマを決めて「仮説」を設定します。「お風呂のタイル洗剤」がテーマですから、例えば仮説は「値段の高い洗剤ほどよく汚れが落ちる」と設定することができます。こうして、事前に結果を予測して自分の意見をはっきりさせることで、実験への興味をより高め、または自分の予想と実際の結果が違った場合、その驚きと発見を明確に表すことができることとなります。
- 実際の実験です。値段にばらつきのある5種類のタイル洗剤とタイル5枚を購入し、2週間に渡って汚れた石鹸水を一日4回スプレーして乾かすという作業を繰り返して実験材料を作ります。15日目にタイル洗剤を各タイルにスプレーし、その落ち具合を比べます。ここでは、より明確・正確なデータの蓄積とその記録法を学びます。
- 次は集めたデータの分析です。どうしてこのような結果がでたのか?安価な洗剤の方が良く汚れが落ちたのはなぜか?これら5種類の洗剤に共通している化学物質は何か?等、データをもとにいろいろな疑問について考え、答えを導き出します。ここで発表用の展示物を作成し、より分かりやすい展示の仕方、グラフの作り方等を学びます。
- 最後に、この理科研究で学んだことを箇条書きにします。例えば、表の作り方を学んだ、グラフの作り方を学んだ、新しい単語のスペルを学んだ、自分の研究への誇りを持てた、毎日同じ作業を4回繰り返すことにより自分の一日を計画的に過ごすことができた等、実際理科には関係ない項目もたくさん挙がります。
ここでは、集まった教員や家族全員の前でひとりずつが発表するのではなく、一人一人の子供が自分の研究を展示したブースを作り、まわってくる審査員や一般の方々に研究発表を行うこととなります。ここで子供たちは、見知らぬ人達を相手に物怖じすることなくはきはきと発表を行い、質問に答え、自分の意見を述べることを学びます。私はこの部分が、非常にアメリカらしいと感じ、また子供たちにとってとても有意義であると考えています。
審査員の審査表もまた、テーマの創造性、実験方法、研究への熱意と興味、展示の仕方、データの分析方法の他に、実となった知識について自信を持って発表ができているかという点にも重点をおいて審査を行うようになっています。
関連情報
記事協力:海外書き人クラブ http://gogo.chips.jp/kakibito/ 海外書き人クラブお世話係 柳沢有紀夫さん の本もご覧ください! |
アメリカ・オハイオ州在住:西村久美子
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