2003.10.21
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

スペイン マドリッド日本人学校

今回は、情熱の国スペインのマドリッド日本人学校からのお便りをご紹介します。スペインの男の子があこがれるのが闘牛士。その闘牛士気分を味わえるイベント「牛追いの日」についてレポートしていただきました。

すべてのものを焼き尽くすような夏の太陽も去り、マドリッドにもつかの間の秋がやってきました。

マドリッドにとって秋は、特別な季節です。4月に入学式や始業式がある日本と違って、他のヨーロッパ諸国同様、スペインでは9月に新学期が始まります。また、楽しかった夏のバカンスが終わって、大人も職場に復帰するため、道路が渋滞したり、1ヶ月以上閉まっていた商店が店を開いたり、街にも急に人が増えます。
 子どもも大人も、「あーあ、夏が終わっちゃった・・・。来年のバカンスまで、しかたがない・・・、働く(勉強する)か・・・」と、いったところでしょうか。皆、表情が少し複雑です。
スペインっ子のあこがれ闘牛士

スペインっ子のあこがれ闘牛士

すでに涼しくなっているのですが、Tシャツがまだ恋しいこうした季節に秋祭りがやってくるのです。
 私の住んでいる街、マハダオンダ市(マドリッドの中心から西に15kmくらいの住宅地)では、9月にこの秋祭りがあります。2週間の秋祭りの間は、昼も夜も様々なイベントが行われます。子ども向けの人形劇、テニスやサッカーの大会、パレードや移動遊園地など、老若男女を問わず毎日楽しめます。特筆すべきは夜のコンサートと牛追い、闘牛でしょうか。
さあ、牛たちが入場

さあ、牛たちが入場

コンサートは街の広場で夜の10時頃から毎日行われます。たくさんの椅子が並べられ、野外ステージの音響も照明も本格的です。日替わりで出演者が変わり、夜中の3時頃まで騒ぎまくるのがこちらのやり方のようです。

 祭りの後半4日間は続けて牛追いと闘牛が行われます。牛追いというと、パンプローナのそれが世界的に有名ですが、スペインでは各地で行われています。闘牛は、人々にとって特別なものではなく、仮設の闘牛場がそれぞれの街で組み立てられるので、年中行事として大変身近なものです。
牛追いの始まり、始まり!

牛追いの始まり、始まり!

闘牛を一回見て、「牛を殺してかわいそう」という感想をもらす人が多いのですが、それだけでは決してありません。それは、闘牛士を見ていればわかります。闘牛はまさに命がけなのです。牛の闘争本能はすさまじく、ちょっと気を許すと闘牛士は体ごと角でとばされ、その場で命を奪われてしまいます。毎年、命を落としたベテラン闘牛士のことはニュースになりますし、私自身目の前で、闘牛士があっという間に牛の角で宙に浮かぶ場面を見ました。牛も人も、お互い生と死が隣り合わせで、相対しているのです。そうしたぎりぎりの緊張した状況で、観客に凄いと思わせるマレタ(赤い布)さばきをする闘牛士は、皆のあこがれで大変人気があり、また高給取りでもあります。実力のある闘牛士は一族の孫の代まで食べさせることができるとまで言われています。
  • 荒れ狂う牛の前を全力疾走!

    荒れ狂う牛の前を全力疾走!

  • 牛が向かってくるぞ! 必死で逃げる参加者たち

    牛が向かってくるぞ! 必死で逃げる参加者たち

  • 牛も人も命をかけた闘いです

    牛も人も命をかけた闘いです

男の子ならそんな闘牛士の真似をしたくなりますが、誰でもそれを実現できる機会があります。それが牛追いの日です。街の通りにフェンスがはられ、牛が放たれます。疾走する牛の前を勇気ある男たちが走るのです。最も勇気ある行為は牛のすぐ前を走り、角に触ることでしょうか。しかし、中には途中で転んでしまう人もいるので、大変な騒ぎになります。この牛と人は闘牛場まで走りますが、そこでも見せ場はたくさんあります。いきり立った牛は場所をかまわず闘牛場の中を突進していきます。その牛をひらりとかわす男たちを見たくて、たくさんの人が集まっているのです。こうした命がけの行為は、男の名誉として、また伝統として今も続けられています。

 さて、私はどうしたかというと、一度牛追いの通路に立って牛が来るのを待っていたのですが、逃げてくる人の先頭集団が見えると同時に、フェンスの上に逃げてしまいました。だらしないようですが、突進してくる闘牛は、近くで見るとものすごく怖いです。「本当ですか!」と、思われる方は、ぜひスペインまでいらっしゃってください。貴重な経験になること間違いありません。

マドリッド日本人学校 ペンネーム:シエンシア) 

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

pagetop