2016.06.03
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「未来を育てるマナビラボ」ってご存知ですか?

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

さっそくですが、以下の文章を読んでみなさんはどのように考えられますか?

この文章に少しでも共感された方にはぜひ見ていただきたいWebサイトがあります。

 

*アクティブラーニングを「これから新たに始めていくもの」と「見なさない」
 これまで多くの高校には、「アクティブラーニング」とラベルづけはされていないものの、
「インタラクティブで、かつ、優れた問題解決をなす授業があったはず」。事例調査、
  実態調査を通じて、「今あるもの」を「Rediscovery(再発見すること)」をめざしたい

 

*高校における「授業革新」の問題を、「高校だけが取り組む課題」であるとは捉えていません。
  むしろ、「高校ー大学ー社会(就業)」をトータルにとらえ、その移行が円滑にすすむこと
  を考えることが重要。

 

*「今ある現実」を「見える化」できていないものは、具体的に「将来を構想すること」はできません。
 「今ある現実」を「見える化」できたところから、生産的な議論がはじまります。

 

  これらに少しでも共感されたみなさんに見ていただきたいサイトは
 「未来を育てるマナビラボ~人はもともとアクティブラーナー~」。
  東京大学中原淳研究室と日本教育研究イノベーションセンターのプロジェクトです。

 

1、アクティブラーニングという言葉は広がったけど、、、
 


 さっそくですが、○に入る数字は何だと思いますか?

 

  1)アクティブラーニングの視点に立った参加型授業に取り組んでいる
      教科がある高校は全国の○○%である。

  2)○○科での参加型授業は、他の教科に比べて参加型授業のねらい、学習活動、
     工夫ともに、全体的に数値が低い傾向にある。

  3)アクティブラーニングに関する校内研修実施率が全国No.1は○○県である。

 

 人は自分の周囲の世界がすべてと思いがちで、全体がどうなっているかは案外わかりません。
 こうしたアクティブラーニング型授業に関するごく基本的な質問でも、
 改めて聞かれるとわからないということに気づきます。

 
  中原淳研究室は、一般社団法人 日本教育研究イノベーションセンターとの共同研究として、
  2015年7~9月にかけて「高等学校におけるアクティブラーニングの視点に立った
  参加型授業に関する全国調査」を実施されました。調査用紙を送付した全国の高等学校
  約3,983校のうち、62%にあたる2,414校からの回答を得たとのことです。
  調査では、学校長など学校代表者向け、各教科(国語、数学、理科、地歴・公民、外国語)の
  教科主任の先生向け、アクティブラーニング(AL)の視点に立った参加型授業を実践している先生向けの
  3種類の調査用紙を用意されました。マナビラボにはこの調査結果も紹介されていて、
  たとえば以下のページに先ほどのクイズの答えが書かれています。

      http://manabilab.jp/article/357

      http://manabilab.jp/article/1158/3

      http://manabilab.jp/article/1081

 

  個人的には数学での参加型授業が予想以上に行われていないことが驚きでした。悩みについても
  数値が低いとのことでしたので、取り組もうとしていないから、悩みもあまりないのでしょうか。

 人は印象や、自分の知っている世界からすべてを語る傾向があります。自分も同じです。
   だからこそ、全国的な調査がわかりやすくまとめられているこのような調査は貴重だと思います。

 マナビラボでは信念の一つに徹底した見える化を挙げ、「日本全国の高校のアクティブラーニングの
   視点に立った参加型授業の実態」を「見える化」することを目指されています。
   これからも継続的な調査に期待したいと思います。今ある現実を「見える化」できたところから、
   生産的な議論がはじまるという信念、私も同じように感じています。

 

2、見どころ満載のマナビラボ

 

 マナビラボには有名人も登場します。たとえばオリンピックに3度の出場を果たした
   元陸上選手、為末大さんと中原淳先生の対談ページがあります。これは「15歳の未来予想図」
   というコーナーで、教育に熱意のある著名人の方をお招きして「これからの社会」や
  「これからの教育」について、中原淳先生と著名人がざっくばらんに語り合います。

 高校生が紹介されているページもあります。たとえば最近の例で言えば、豚からデグー、
   ポニーやアルパカまで、13種類100個体以上の動物を飼育管理する、大阪府立農芸高等学校
   資源動物科のふれあい動物部が紹介されました。
   動物介在教育(Animal Assisted Education)の普及を目的として、幼稚園や小学校、
   児童養護施設、高齢者介護施設などに動物を連れて行き、「動物との正しい接し方」や「命の大切さ」
   について考えるきっかけを提供しているのですが、活動の中身や想いなども紹介されています。

 アクティブラーニングをはじめ、授業方法に関する高校生の先生たちの悩み・質問に答えるページ、
   高校生が発信するページ、さらにはお笑いコンビ・モクレンがコントを披露するページもあります。


 「マナビをひらく!授業のひみつ」も必見です。
    いろいろな先生の実践紹介と、その先生のインタビューとの2回に分けて掲載されています。
    数学の教員として一番のおすすめは、つい先日掲載された岩佐先生です。
  「話し合って問題を解くと数学が得意科目になる!?」には授業の様子が、
  「生徒を観察することがアクティブラーニングの第一歩」にインタビューが掲載されています。
    ぜひご覧ください。

     http://manabilab.jp/article/1714 

     http://manabilab.jp/article/1763

 

    実は自分もここで取り上げていただきました。ご覧いただければうれしいです。

  「一歩踏み出すための学び−今が将来につながるために−」(前編、後編)です。

  http://manabilab.jp/article/1609

  http://manabilab.jp/article/1555
 

3、みんなが当事者になれるのか!?


   大学のプロジェクトであるマナビラボですが、高校に焦点を当てていることは重要な視点だと思います。
   そして、高校教員として、マナビラボが高校における授業革新の課題を高校だけが取り組む課題ととらえず、
   高校-大学-社会をトータルにとらえているということから学ぶことは多いと思います。
   私はこのとらえかたは、大学発のプロジェクトであるマナビラボが、
   高校に対しても当事者として関わろうとする意識のあらわれだと思っています。

 
    最近「連携」ということがよく言われます。「小中連携」「中高連携」「高大連携」「大学と社会の連携」、、、
  「中大連携という言葉さえも聞くようになりました。しかし連携というときに、評論家的に自分とは違う
    学校のことを論じて、一方的に期待だけしている場面も少なくないように思います。実際高校現場でも、
    中高連携という名のもとに中学校に対して「あれもしてほしい」「これもできる生徒がほしい」、
    さらには「最近の生徒はこれができない」「これくらいできるようにしてほしい」。
    このようなことを聞くときがあります。
    しかし、それぞれの現場では、いろいろな状況を抱えながら、一生懸命生徒を育てられているのです。
    本当に連携というならば、当事者として、自分と違う校種を理解することではないでしょうか。
    これは異文化理解というべきことかもしれません。


  時代が大きく変わる、教育も変わらないといけないといわれます。実際そうでしょう。
    だからこそ今教育現場に問われていることは、みんなが当事者になり、知恵を出し合って、
    より良い姿を考えることだと思います。少なくとも評論家的に自分が所属していない学校に
    注文だけつけることではないでしょう。
    大学発のマナビラボが、高校の良さを見える化しようとされている姿からこんなことを感じました。

 

  ここまで読んでいただきありがとうございました。

  次回はキャリア教育授業を通して発見した、生徒のキャリア意識について書きたいと思います。

  引き続きよろしくお願いします。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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