2014.12.10
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担任だからできるコミュニケーション能力の素地の育て方!

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

 BRASILの風(3)の解説

次のうち、ブラジルに本当にある祝日はどれでしょう。

 (1)おいしくコーヒーを飲む日

 (2)サッカーのブラジル代表戦

 (3)カーニバルで燃え尽きた日

 

正解は(2)です。W杯法という法律で休みにできるようになりました。実際2週間休みになったところもあるようです。ですが、私がブラジル在住当時でさえも、サンパウロ市内で代表戦がある時は休みもしくは午前までの勤務の会社があったように思います。実際、サンパウロ日本人学校もサンパウロ市内で試合がある時は午前授業で帰ったことがありました。さすがサッカー王国ですよね。

(3)は字面だけを見ると正解に思えます。カーニバルはカトリックのお祭りです。イースター(復活祭)に向けての禁欲期間へ入る直前の大騒ぎです。土曜日から火曜日まで行い、終わった次の日は「灰の水曜日」と呼ばれる休日です。最初私は、大騒ぎして燃え尽きたからこういう休日なのだと思っていましたが、これは宗教的な意味合いがあるそうです。

(1)は残念ながら違います。でも、ブラジル人はコーヒーをよく飲みます。スーパーやレストランの入口には、無料のコーヒーが置かれていることが多いです(有料のものは注文して飲みます)。日本人にとってのお茶や水のようなものです。コーヒーが無料だなんて、日本人からすると驚くことだと思います。逆に日本ではレストランで水が無料なのは当たり前ですが、外国から見ると驚くことです。違いを知って認めることが国際理解の一歩だと思います。

 

 担任だからできるコミュニケーション能力の素地の育成!

外国語活動の目標は、「コミュニケーション能力の素地を養うこと」です。コミュニケーション能力の素地とは・・・(文部科学省のHPより)

 ○言語や文化に対する体験的な理解

 ○積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度

 ○外国語の音声や基本的な表現への慣れ親しみ

これらを週に1時間の外国語活動だけで養うことはできるのでしょうか。私は難しいと思います。でも、小学校の担任が外国語活動を行うなら、この目標の達成は可能だと思います。小学校の担任は、週に1回の外国語活動以外にも、他教科を教え、生活全般にかかわっているからです。

コミュニケーション能力の素地を養うために、小学校担任が大切にしていきたい具体的なことを今号と次号で提案したいと思います。

 

Here you are と言われたら・・・

学校ではプリントを配布する回数がとても多いです。プリントの渡し方はどうしているでしょうか。

「思いやり」のある渡し方として、その子と目を合わせ、必ず「どうぞ」と言ってプリントを渡す元筑波大学附属小学校の有田先生の実践が有名です。教師がそう言うからこそ、子どもから「ありがとう」が出るのだと思います。こういうクラスで外国語活動を行い、何かを渡す時に「Here you are.」と言えば、おそらく子どもからは「ありがとう」もしくは「Thank you.」という言葉が返ってくるでしょう。

でも、有田先生のようにしていない場合はどうでしょう。視線は子どもの目ではなく、プリントの枚数を数えることに注がれている。子どもに声をかけることもなく、機械的に机の上に置いていく。こういうクラスで、外国語活動の時に「Here you are.」と言ったらどうでしょう。おそらく子どもは何も言わないでしょう。そのうえで指導者が「こういう時は、Thank youと言いなさい。」と言えばどうなるか。子どもは何のことか分からず、コミュニケーションギャップが起こることでしょう。そして、万が一子どもがThank youと言ったとしても、「言いなさいと言われたから言っただけ」で、これを「コミュニケーション能力の素地」とは言えないのは明らかだと思います。

 

Do you have a pen? と聞かれたら・・・

Do you have a pen?と聞かれたら、何と答えますか?

もちろん”Yes, I do.”ですよね。

自分が経験してきた英語教育ではこれが当たり前でした。でも、小学校の外国語活動にかかわり始めて分かったのは、答えは”Yes, I do.”だけではないということでした。

小学校の外国語活動では場面設定がとても重要です。例えば、Do you have a pen?という疑問文が単体で存在しているのではなく、それがどういう場面で使われるかが大事ということです。Do you have a pen?ならば、どんな状況でしょうか。子どもに聞くと、「筆箱を忘れた時!」と返ってくることが多いです。そうなると、答えが変わってきます。自分が筆箱を忘れて”Do you have a pen?”と隣の子に聞いたなら、”Here you are.”がうれしいと思います。

こういう思いやりの気持ちや、言葉の裏にあるものを想像する力は、人とコミュニケーションをはかるうえでは何より大切なものだと思います。

私自身、ブラジルに住んでいた時、マンションのスタッフたちとお互いに言葉が分からなくても何とかやっていけたのは、彼ら彼女らがただひたすらに優しかったからだと思います。人のことを憂う優しい思いやりがあったからだと思います。

そしてこの思いやりは、外国語活動だけで育てられるものではありません。生活全般の中で、少しずつ担任が声をかけ、率先垂範で行動する中で育つものだと思います。

 

つまり、「言語の働きを体験的に理解するため」「積極的にコミュニケーションをはかる態度を養うため」には、生活全般で子どもとかかわっている学級担任のかかわり方や立ち振る舞いが大事だということです。それを意識して普段から子どもとかかわっていけば、週に一度の外国語活動の中でコミュニケーション能力の素地を養うことができるのだと思います。 

これ以外にも、コミュニケーション能力を養うために学級担任ができることはたくさんあります。それについて次回に続けて紹介したいと思います。

  

BRASILの風(4)

サンパウロは日系人が世界一多い都市です。だから日本食材も手に入るし、日本食レストランも数多くあります。

では、私が聞いた中でのブラジル人がイメージする「日本食」とはなんだったでしょう。

1つ目は寿司。これはすぐに思い浮かぶと思います。

2つ目は焼きそば。これは意外に思う方も多いかもしれません。

では、3つ目は?

この答えは意外です。でも、サンパウロの日本食の食べ放題レストランに行くと、必ずあります。日本人街にある屋台でもいくつか店として出ています。

さてそれは?正解は次回に!

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

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  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

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