2014.11.04
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外国語活動の授業において担任ができること

倉敷市立連島南小学校 教諭 江尻 寛正

  BRASILの風(1)

前回のジョークの解説から。

 A 『日本人っていうのは時間をきちんと守るらしいぞ。』

 B 『へぇ。じゃあ、9時集合だったら、ちゃんと9時に来るってことか?わっはっはっ!』

 A 『まさか。日本人が来るのは、なんと8時55分だ!』

 AB『わっはっはっはっはっ!!!!!』

 

サンパウロには地下鉄が通っていますが、なんと時刻表がありません(2009年当時)。2分遅れたら放送でお詫びが流れる日本では信じられないことだと思います。サンパウロの街はバス社会ですが、路線バスにも時刻表がありません。ブラジル人はいつ来るかはっきり分からないけれど、「まあいつか来るよ」と待っています。友人とのパーティーがあっても、時間通りに行くのは逆に失礼なぐらいの感覚です。30分過ぎるぐらいでもいい感じだと思います。

そんな社会の中で、9時集合だったら9時には来る日本人は律儀すぎるというわけです。それを大げさに言って「なんと5分前に来るんだ!」というところがジョークなわけです。でも、実際に日本の教育現場では「5分前集合」という言葉をよく使います。ブラジル人にとっての大げさな表現が実は日本では当たり前に使われている・・・両方を知っている私にとってはそのギャップがまたおもしろく感じます。

この時間感覚について、某メガバンクのサンパウロ支社幹部の方と話をしたことがあります。その方からはこんなことを教えてもらいました。

「日本人の感覚もブラジル人の感覚もどちらも大事。自分は厳しく時間を守り、相手には寛容な態度で接すること。世界でやっていくにはその感覚を忘れてはいけないし、日本国内でも私はそうありたい。」

 とても心に残っている一言です。

 

 外国語活動の授業において担任ができること

 平成26年9月26日に文部科学省から「今後の英語教育の改善・充実方策について」という報告が出されました。お読みになられましたか? なかなか目が届かないと思いますが・・・。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/102/houkoku/attach/1352463.htm

これを読むと、小学校英語教育の指導者として担任への期待が大きいことが分かります。

しかし、現場からは「私は英語が嫌いだったから小学校教師になったのに」「僕は英語の免許をもっていないのに教えていいのか」といった声が聞こえてくることと思います。

それに対して文部科学省は研修の充実を計画しています。実際、英語教育推進リーダーの研修が始まっています。私も参加させてもらっていますが、今年度末より各地区での研修も始まる予定になっています。

ですが、研修だけでは「やらされ感」もあるでしょう。やはり、「担任が英語教育を行う意義」が分かっていてこそモチベーションが生まれることと思います。

そこで今回は、担任が外国語活動を行うメリットを2つ簡単に紹介したいと思います。

 

子どもの興味関心を一番分かっているのは学級担任!

「ジバニャンって何か知っていますか?」

ビジネスエリートに聞いても答えはNOだと思います。ネイティブに聞いてもおそらくNOでしょう。でも、小学校教師なら多くはYESだと思います。

このメリットを授業で活かすことが、子どものモチベーションを高めます。

インターネットのフリー素材を使って”How many apples are there?”と聞く授業と、おかしのパッケージを見せながら”How many 妖怪メダル do you have?”と聞く授業。数字を扱っている点ではどちらも同じですが、子どもの目が輝くのはどちらの授業だと思いますか?

英語の世界への入口に、どんなものを持ってくればいいかが一番分かるのが学級担任だと思います。子どもが興味あるものを、外国語活動に取り入れましょう! 

 

他教科の学びを活かす!

小学校教師は多くの教科を教えています。それらを関連させながら授業を行うと、より深い学びになります。私が実践してきた中から2つを紹介します。

(1)なわとびを英語で!(2004年度 日本児童英語教育学会(JASTEC)全国大会発表)

 低学年を担任していた時の”Number”の単元です。計画では、数字を見て英語で言ったり、おはじきの数を数えたりすることになっていました。ですが、数を数える必然性をつくりたかった私は自分の英語の師匠と渋谷で餃子を食べながら再考しました。その結果、体育で取り組んでいたなわとびを英語で行うことにしました。

2人跳びの回数を英語で数えたり、全員で何回跳べるかをみんなで大声で数えたりしました。なわとびという活動に意欲的なので、何度も何度も英語で数えました。Numberが定着したのはもとより、2人跳びの回数が予想以上で、結果として計画にはなかった100以上の数を英語で言えるようになってしまいました。うれしい誤算でした。

 

(2)既習の知識を活かす!(2006年度 第3回全国小学校英語活動実践研究会分科会発表)

6年生の単元”color”です。指導者同士がこんなやりとりをしています。

    ”What color is TOFU?"       "It's red."

 

読者のみなさんはどうしてか分かりますか?ちなみに、Appleはgreenで、Milkはredです。

これを繰り返すと、ある子が「分かったぁぁぁぁぁ!!!」と言いました。それにつられてほかの子も「そういうことかっ!」と言いながら、机の中のあるものを探し始めました。

出てきたものは・・・家庭科の教科書です。これらは栄養素の色だったのです。

 

ネイティブが考える単元計画にこれらの発想は生まれないはずです。それは「英語を教えよう」とし過ぎるからです。でも学級担任は「子どもに学ばせよう」とするので、既習の知識をいかした単元計画をつくることができるのです。こういった実践は他教科も教えている学級担任だからこその授業です。Hi,friends!だけで授業をすすめるのではなく、他の教科で学ぶことをどんどん取り入れてみましょう!それができると内容に深みが出て思考することになります。それができるのが学級担任です!!

  

BRASILの風(2)

私が住んでいたサンパウロは大都会です。近代的なビルが立ち並び、1500万人が暮らしています。東京より大きい街なわけです。

そんな大都会で、スーツを着こなすビジネスマン達がよく道にゴミを投げ捨てます。

日本だと非難されることなので、私はとても不思議に思って「どうして捨てるんだ?」と聞いてみました。返ってきた答えは・・・解説は次回に!

江尻 寛正(えじり ひろまさ)

倉敷市立連島南小学校 教諭
アクティブラーニングを意識した“子どもが学修する”小学校英語教育実践を紹介したいと思います。平成26年度「わたしの教育記録」(日本児童教育振興財団)特選受賞、「小学校外国語活動研修ガイドブック」(文部科学省)や「英語教育」(大修館書店)等で執筆協力。

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  • 常名 剛司

    静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭

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