2025.06.17
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違った一面が見えること

この人こんな魅力が!という瞬間はいつだって愉しい。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 今村 行

どうも、今村です。
昨年度6年生を担任していたときに一緒に学年を組んでいたA先生と、今年は1年生の担任として一緒にチームを組んでいます。

2年連続で一緒に過ごしているわけなのですが、今年になってA先生の魅力にたくさん気付かされています…笑。もちろん、去年もめちゃくちゃ魅力的で面白い方だなぁと思っていたんです。ただ、それを遥かに凌駕する魅力を見せつけられているのです。

〜A先生の基本情報〜
50代半ば男性(かっこいい!)
専門教科は算数(論理的!)
MILLETなどのアウトドアブランドを着こなしている(似合う!)
靴はアシックス派(わかる!)

では、いってみましょう!

魅力その①お茶目

50代半ばの経験を積んだ先生って、貫禄もあるじゃないですか。A先生ももちろん貫禄はあるんです。一緒に学年を組ませていただいていて、すごく安心感がある。それは去年から変わらないんです。ただ、今年はA先生はとてもお茶目な一面を見せてくださっています。

私、今村行(すすむ)は、時折子どもの前で「すす子」になることがあります。女性の人格ですね。例えば教室で、自由に立ち歩いてペアを作って交流する時間を取るときに、やり方を説明するじゃないですか。そういう時にすす子が登場します。

「あ、憧れのアキラ(仮名)さんだ。あたし、アキラさんのこと尊敬してるんだけど、緊張して今まで自分から話しかけられたことない。でも、そんなんじゃダメ、すす子!今日こそアキラさんに話しかける!アキラさん!一緒に交流しよ!!」

はい、こんな感じです。特定の相手といつも交流するんじゃなくて、自分からいろんな人に話しかけて交流できるように、と意図してこういうプレゼンをするわけですが、すす子は1年生の子どもたちにも大変人気がありまして、教室では「あ!憧れの〇〇さん!」という言葉も流行っております…。

1年生の学年集会でのこと。本校で行なっている探究という活動の発表会に向けて、やり方を説明するときに、すす子が登場したんですね。それでA先生にインタビューをする流れで、マイクを向けたんです。

そしたらですよ。

「わたし、A子!」

今年一緒に組んでいるもう一人のB先生と顔を見合わせて大爆笑。子どもたちも手を叩いて喜んでいます。繰り返しますが、A先生、50代半ばで貫禄もお持ちなんですよ。それがこんな軽やかなお茶目さを発揮するなんて、ズルい。最高でした。

魅力その②一緒に考えるのが愉しい

東京学芸大学附属大泉小学校は、国立大学附属の小学校としては初のIB(国際バカロレア)初等科プログラムであるPYP(Primary Years Programme、子どもの主体的な学びを重視する国際的な教育プログラム)認定校です。そこで先ほども申し上げた探究の時間というものがあり、それを中心として子どもたちの学びを構成していきます。その探究の単元を作る際に、学年の教員で綿密に意見を擦り合わせ、共通認識を作り出していく必要があります。そのために本校では毎週金曜日に児童の授業時数を1時間カットし、学年の教員が集まって探究の話をするという時間が設定されています。その探究ミーティングの時間が、とても愉しいんです。

探究の時間の活動を考えるときって、教科書があるわけでもないし、指導書があるわけでもないんです。だから、PYPで設定されているテーマに即して、わかりやすい正解がない中で教員一人ひとりが頭を絞って考えてそれを擦り合わせることによってしか、授業の具体を立ち上げることができないのです。

こういう話し合いって「ちゃんとしたこと言おう」とか、「間違ったことを言ったら恥ずかしいな」とか思っているとどんどん口が重たくなっちゃうんです。

これは偏見かもしれないですけれど、学校の先生方って「正解を言ってきた経験」が多いのか、こういう「答えのない話し合い」になると口を開くことに躊躇する方がそれなりに多いように感じます。昨年A先生と一緒に探究ミーティングをしていた時には、遠慮がちに発言を控えておられるような姿もあったように記憶しています。

それがですよ。今年のA先生は違います。答えのない話題に対しても、自分の経験から話をしてくださったり、視点を変えてくださる意見を言ってくださったり。もう一人のB先生との組み合わせもよかったのか、どんどん話し合いが盛り上がっていきます。僕自身、毎週この三人で話し合える時間をとても心待ちにしています。

勝手に作り上げた人物像の揺らぎ

もし今年もA先生と組ませていただくことがなかったら、二つの大きな魅力を知らないままに、「A先生ってこういう人」と1年間の付き合いから決めつけて、時々用事があって必要となれば話すくらいの関係になっていたかもしれません。

去年と今年、「学年部を一緒に担当する」という僕たちの間の関係性は変わっていないのに、僕からA先生への印象は大きく変わりました。これは、A先生がものすごく変化された、というわけではないと思うのです。接する子どもたちの年齢が変わったとか、一緒に組む教員のメンバーが変わったとかそういうちょっとした(でも大きな)変化によって、一緒にいる人への印象が変わる。これはなんだか面白いな、と思ったのですね。

いつの間にか、大人に対しても、子どもに対しても、自分が勝手に作り上げた人物像を通してしか見ることができなくなってしまっていることがあります。しばしば、否定的なニュアンスをもって(A先生の場合はそうではなかったけれど)。

その人物像が、一見ちょっとした、でも大きな出来事やきっかけによって大きく揺らぐことがあります。くれぐれも、そう簡単に人のことを決めつけたくはないよな、と改めて思ったのでした。

今村 行(いまむら すすむ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

東京都板橋区立紅梅小学校で5年勤めた後、東京学芸大学附属大泉小学校にやってきて今に至ります。教室で目の前の人たちと、基本を大切に、愉しさをつくることを忘れずに、過ごしていたいと思っています。

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