2024.12.09
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強みに着目する

人の「強み」を生かし、組織の中で力を発揮させていくことの重要性は、組織づくりの研究においては、昔から主張されていることだと思います。しかし、実際にどう考えて、どう実行していけばよいのかとなるとわからないことも多く、少しずつ学んでいるところです。学校という組織の中で教職員の強みを考えていくことは、自然とクラスの子どもの強みを考えていくことにもつながると思います。

大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作

強みに着目する

 クラスの中で子どもの様子を見ていると、自然と目に入ってくることは、子どもが「できていないこと」ではないでしょうか。職業柄、子どもの成長を支える仕事ですから当然です。それを評価し、改善策を考えていくのですが、一方でその子も持つ「良さ」や「強み」は意識的に見ていかないと見えないことが多いように思います。

同じように教職員同士でも「できていないこと」「やれていないこと」「苦手とすること」「弱み」などは、意識しなくても見てしまったり、考えてしまったりすることがあるのではないでしょうか。そういうことを超越されている方もおられるでしょうが、自分はなかなかそういう教職員の「強み」に着目することが難しいこともありますし、そもそもその方の教職員の「強み」を見れていないと思うことが多々ありました。その方の「強み」を見つけ、それをその方に伝え、その方が気持ちよく働き、結果として子どもに還元されていく・・ことができたら良いなあとぼんやり考えていました。

ストレングスファインダー

自分が考えていた「強み」は、その方の「良いところ」という感じで捉えていたのですが、組織開発ではそういった意味合いではない「ストレングスファインダー」という「強み」を判断するツールが活用されていることを知りました。『さあ、自分の才能に目覚めよう あなたの5つの強みを見出し、生かす』(マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン 田口俊樹訳、2001、日本経済新聞出版社)の書籍で有名になっていますが、アメリカのギャラップ社(統計調査の会社)が開発した200万人へのインタビューの結果をもとに強み(資質)を34種類にパターン化したものです
今年は教職員の方にもこのストレングスファインダー(約120問くらいで30~40分かかりました)を実施してもらい、自分の強みの1位から5位までを把握してもらいました。

そこで、今年の夏の研修で組織開発ファシリテーターの長尾彰さんに「強み」の意味や、「強み」を活用することについての研修をしていただきました。
「強み」は「ジグソーパズルのピースが人だとして、その凸の部分」「他人よりも自分のほうが、低コスト(経済的コスト、時間的コスト、肉体的コスト、頭脳的コスト、精神的コスト)で楽しくできること」ということであり、自然とやっていて苦ではない「性格・資質」ということになるようです。
「強み」は持ち前の性質なので、うまく使えば強みになり、誤用すれば弱みになります。自分にとって当たり前のことなので、自分が一番気づいていない可能性があるから、ストレングスファインダーをやる意味がでてきます。

教職員で診断をしたのですが、その方の強みを5つ聞くたびに「わかる」「納得する」「やっぱり」というような会話があちこちでおこり、かなり対話が増えたように思います。一方で「こんな強みは嫌だ」「本当に?」「思ってもみなかった」ような反応もあり、自分で気づいていない「強み」があることに驚きがある方もいらっしゃいました。ちなみに私は①学習欲②内省③達成欲④調和性⑤収集心であり、至極納得しています。

なお、長尾彰さんが「強みのあるある」として例を紹介して資料をくださったのですが、かなり面白かったです。いくらでも聞きたくなりました。

強みを活かすとは?

「強み」を知ることで、まずは当たり前ですが、自分と人は「違う」ということを改めて自覚することができます。また、自分の「強み」を発揮している時は、自分がやって楽しいことを楽にやっていることで、自分もうれしいですし、他人の役に立つこともあります。逆に、自分が苦手とする「弱み」を「強み」にしている人がいるので、仕事を気持ちよく任せたり、感謝したりすることが起こってくることが考えられます。

当然、そんなにうまくいくことばかりではありませんが、組織だからこそ自分の強みを活かすことができますし、自分の「弱み」が補われます。このような視点をもつことは、メリットが大きいと考えます。

デメリットの部分としては、「あの人は強みの○○がない」といった評価や「自分は◇◇がないから無理」といったような言い訳になってしまう可能性があることです。

強みを活かせているか?

では、実際、教職員のお互いの「強み」を活かせているのでしょうか?正直、「これが活かした状況だ」というものはありませんが、お互いのことを少しでも知る機会になったことや職員室の会話の中で「強みがでているのではないか」などと話題になるようになったことは、組織としてほんの少しですが、前進だと捉えています。ただ、「強み」の思考に振り回されないようにとも自分に言い聞かせています。

石元 周作(いしもと しゅうさく)

大阪市立野田小学校 教頭


ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。

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