2024.10.28
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努力と友人

友達が、少ない。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 今村 行

どうも、今村です。
教育実習が終わりました。

東京学芸大学附属大泉小学校の教育実習は、前後期に分かれています。前後期それぞれ3〜5名程度の学生が実習生として学級に配置され、3週間を過ごします。合計6週間、教室にずっと3〜5名の教育実習生がいる、という状況です。1年生から6年生まで、毎年ですから、6週間×6年間で36週間教育実習生と過ごすということになります。これはなかなかすごいものです。

教育実習の終わりに「努力」ってなんだろう?という話を、餞の言葉として送りました。今回はそこで話したことをベースに、改めて今「努力」について考えることをつれづれなるままに書いてみます。

ロジェ・ルメール氏の言葉から

「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」
これは2001年に日本で行われた「第2回フットボールカンファレンス」の講師を務めたロジェ・ルメール氏(当時のサッカーのフランス代表監督)が、日本の指導者に向けて放った冒頭の一言です。

この言葉は教師をしていると身に沁みて感じることです。教員という仕事は、学び続ける仕事である、と改めて思わされます。
学ぶということは、努力するということでしょうか?

確かに試験勉強をいっぱいして、志望校に合格したとしたら、「努力が報われた」なんて表現することもあるでしょう。でも、努力をするというときに、「努力しなくては」と思い、歯を食いしばってなんとか踏ん張る、ということをしている限りは、あまりいい結果は出ないのではないかと思います。やっぱり最後は、「勉強を苦しみながら頑張る人」よりも「勉強を愉しむ人」に軍配が上がるものだと思います。仮に両者が試験に合格したとしても、前者は合格を機に勉強を辞め(苦しみですからね)、後者は変わらず学び続けます(愉しみですからね)。その先にどのようなことが待っているかは想像に難くありません。

ロジェ・ルメール氏の言葉も、「学ぶことを愉しめなくなったら、教えることをやめなければならない」とも受け取れるのではないでしょうか。教えるということをする人間にとって「学ぶこと」は一種の義務でもあります。ただ、義務感や強制力によってスタートした「学ぶこと」も、それが愉しみへと昇華しなければ効果は半減してしまうでしょう。学ぶことを愉しめない人間に教えられて、学ぶことを愉しむ子どもたちが育まれるとは、私はどうしても思えないのです。

学ぶことを愉しむ人間でありたいし、自分ではそれを努力とも思っていない状態でありたい。それが教師として、目指すべき一つの姿だと思っています。

失った友人も、得られた友人もいる。

そして、学びを愉しみ、努力を努力とも思わず夢中になっている状態になった時には、友人が減るのではないか、と思います。

学びが苦しくてできれば逃れたいという人から見ると、学びを愉しみ、夢中になっている人というのは眩しく見えてしまいます。そして自分を見て惨めな気持ちになる。だから、近くに居ないようにするか、悪ければ相手を攻撃して目の前から消そうとする。いずれにしても、そういう状態で関係を良好に保つということは難しい。友人ではいられないでしょう。

もし実習生たちが、この教育実習で学ぶことの愉しさに触れたり、目の前の子どもたちに向けて授業を創るための努力を努力とも思わず夢中になれたりしたのだとしたら、やっぱりそれは、実習に来る前と後では少し違う人間になっているということなのだと思います。
そうなると、もしかしたらこれまでの大学の友人関係に変化が生まれるかもしれない。もしかしたらこれまでの人間関係では満足できない自分になってしまっているかもしれない。

自分が教育実習生の立場だった時に、指導教官の先生に言っていただいていまだに忘れられない一言があります。
「努力が報われないのではない。努力が足りないのだ」

その言葉は、自分の教師としての生き方に強い影響を与えたと思います。こういう言葉って、今はあんまり流行らないでしょうし、みんながいいねと言うようなものでもない。ですから、この言葉を胸に努力を愉しもうとすれば、一緒にいられる人は減っていきます。

でも、そうした中で出会うことができた友人も、やっぱりいるんです。
学びを愉しむということで失った友人もいるかもしれないけれど、得られた友人もいる。
僕は、得られた友人の方が大切だと、今思っています。

今村 行(いまむら すすむ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

東京都板橋区立紅梅小学校で5年勤めた後、東京学芸大学附属大泉小学校にやってきて今に至ります。教室で目の前の人たちと、基本を大切に、愉しさをつくることを忘れずに、過ごしていたいと思っています。

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