2024.07.16
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主語が変わる。

主語って大事ですよね、という大切な話。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 今村 行

1学期のふりかえり

どうも、今村です。
学校にお勤めの皆様は、そろそろ夏休みが始まる頃でしょうか。本校は3学期制なので、無事に1学期が終わりました。
一つの区切りを迎えると、そこまでの日々を振り返ります。この1学期は、私にとっては決して簡単ではないものでした。

主語が変わる。

6年うめ組という、担任させていただいている子供たちへの感謝を形にしたものを、今回は掲載します。
「主語が変わる」というタイトルで書いた文章です。

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ひとまず、1学期が終わります。6うめ(6年うめ組)の皆さん、本当に有難うございました。
一体何が「有難うございました」なのか。

お恥ずかしい話ですが、僕は少し迷子になりかけていたんだと思います。自分が今ここに立っていていいんだろか。自分の役割がここであるんだろうか。自分に価値があるんだろうか。
「大切な誰かの代わりにはなれない」と口にして始まった4月から、じゃあ自分には何ができるんだろうか、と問い続けた3ヶ月でしたが、その答えは特に見つかっていません。「今村行だからこそ」の存在価値なんてものは、自分でもそう簡単には見つけられません。

でね、途中で「別にそんなもん今見つからなくてもいーじゃん」と思えたんです。開き直る、というわけじゃないのですけど。
1日、また1日と6うめのみんなと過ごしていくうちに、やっぱり、本当に愉しくなってきたんです。「こいつは本当に人を傷つけない笑いを生み出す天才だな」とか「この前まで全然抽象的な思考してなかったのにいきなり発動してるじゃんどういうこと!?」とか、「なんで授業の時あんなにクレバーなのに休み時間ではこんなしょうもない喧嘩してんだろう…」とか「まさに『帰り道』的なすれ違い起こってんじゃん嘘でしょ青春すぎるでしょ」とか「俺が自分のことおばさんって言ってたら違和感なくガールズトークに入れてくれるようになっちゃったけどこれ大丈夫なんだろうか」とか、毎日あらゆる角度から面白いことが降ってきました(笑)

そうするとね、「自分は…」という主語で考えていたことが、だんだんと6うめの一人一人の名前を主語にした思考に変わってきたんです。自分のことを一回棚に上げておいて、目の前のあなたのことをもっと考えたくなった。あなたと、みんなと過ごす時間に、だんだんと夢中になっていった。
そうなってから、ふと「自分」を見つめてみたら、ちょっと違う角度から価値付けをすることもできたり。なんだかいい循環が生まれてきました。

自分にフォーカスを当てて考えるべき瞬間も当然あるけれど、自分ではなく、目の前の人に、目の前で起こっていることにフォーカスを当てるべき瞬間もまたあります。6年生という時期、もしかしたらあなたも、どうしても自分のことで頭がいっぱいになって心配になったり、不安になったり、心細くなったりするかもしれません。その時間が無駄だとは言いません。でも、今そこにだけフォーカスを当てているのは、ちょっともったいないかもしれない。
だって、目の前には、こんなにおもろい人たちがいるんですから。

これからも、どうぞよろしく。僕に29もの考えたい主語をくれて、どうも有難う。

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自分に安易に酔ってる場合じゃない。

5年生の頃の担任の方が、制度上どうしても異動をしなければならなくなり、代わりに私が担任として学級に入ることになりました。
書いてある通りですが、4月のはじめは「自分に何ができるのか…」ということにこだわりすぎていました。自分のことばっかりで、目の前の人たちのことを見ていなかった。
酷い状況ですね。

これは、今回に限った話ではなく、自分に何ができるのか、周りからどう見られているのか、評価されているのか、ビクビクしている自分がいます。
周りから承認されれば安心して、されなければ不安。
今やっていることが、本当に自分のこうありたいという生き方から選択したことなのか、周りから何か言われることに怯えながら選択したことなのか、だんだん分からなくなってくる。

自分が、自分がと自分のことばかり考えて、自分のことも見えなくなり、当然近くにいてくれる人のことも見えていませんでした。モヤモヤした幻想の中を勝手に迷子になっているような。

それが、主語が少しずつ変わってきたことで、見えるものが変わってきた。
自分に安易に酔っている場合ではありませんね。
目を見開いて、2学期走ります。

今村 行(いまむら すすむ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

東京都板橋区立紅梅小学校で5年勤めた後、東京学芸大学附属大泉小学校にやってきて今に至ります。教室で目の前の人たちと、基本を大切に、愉しさをつくることを忘れずに、過ごしていたいと思っています。

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