2024.04.05
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地図とは何?

今回からこのつれづれ日誌も第35期となります。これまで32期、33期、34期と1年半書かせていただきました。しつこく社会科のことについて書かせていただきましたが、今回からも社会科の授業について・・・と思っています。今回からはこれまでの具体的な実践や新たな授業の構想についてできるだけ具体的に書きたいと思っています。

今回は、4月ということで授業開きの時期を意識して、3年生の地図学習の導入を紹介させていただきます。3年生から本格的に地図という社会科にとって必須の資料を活用していきますが、実は地図は何を表しているのかを理解するのに丁寧な指導がいると思います。

大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作

地図の必要性

ルートマップ図

多少、無理やりな感じがありますが、「違う学校の友だちが自分の学校にやってくる用事がある」という設定にします。友だちから「駅から学校までの行き方を教えて」と言われ、「説明できる人?」と子どもたちにたずねます。
すると、何人かの子どもが説明をするのですが、「駅から右へまっすぐ行って・・・そのあとコンビニのところを左に・・・」と言いながら途中で止まってしまいます。
「知っている人が聞いたらわかるけど、初めての人がきいたらわからないと思う」や「図じゃないから、どっちの道にいったらよいかわからなくなる」という感想が出ます。

では、図を見せるから、「図を見せたらわかるよね・・」と言いながらルートマップ図を見せます。

すると「こんなのわからない」「目印がないから説明できない」「こんなの地図ではない」という意見がでます。「では地図にはどんなものが必要ですか?」と問うことで「まわりに何があるのかがわかること」やランドマーク(目印となる建造物などの特徴物)の必要性に気づきます。また、「駅から右って言ってわかりますか?どこを向いて右ですか?」と問うことで「方位」の必要性にも気づくことができるでしょう。

縮尺

板書

地図には方位と目印になる建物などが必要であり、それが描かれていることを再確認します。
「だんだん地図のことがわかってきたね・・・。ではみなさんに○○小学校(自分の学校)を見つけてもらいます」と言うと、「簡単」「いけるいける」などと言う子もいるでしょう。
「では探してみて」と言いながら世界地図を出します。
すると「無理無理」「あかんあかん」などと言いだすと思います。そこでさらにとぼけます。

教師:みんなが言っていた通り、地図を出したよ
児童:世界地図ではわかるわけない。
児童:先生、何を考えてんの?
教師:なぜ?地図やのに?
児童:世界地図は、国とかそういうもっと広い範囲にものを知る時に使うから
児童:そんな地図には○○小学校なんかのっていない
教師:わかりましたよ・・・。では違う地図を出します。

と今度は日本地図を出します。すると、子どもらの声はもっと大きくなります。

児童:先生、ふざけるのはやめてください
児童:日本地図にも○○小学校は載っていません

といった声がでてくるので、「わかりました。これなら見つけることができますか?」と言いながら25000分の1の国土地理院の地図を提示します。

児童:これならやっとわかる
児童:でももっと大きく学校が載っているものがいい

という声もあると思いますので、最後に地域で配布されている2000分の1の地図を提示します。そして、今まで出した4つの地図を並べ、以下のようなやりとりをします。

教師:4つの地図は何がちがうのでしょう?
児童:大きさがちがいます
教師:大きさというのは何の大きさ?
児童:地図にのっている学校の大きさです。
教師:なるほど、みんなが見えているものの大きさが変わっているのですね。ということは、つまり見えている範囲が変わっているのですね。ではどうやったら見える範囲が変わるのでしょうか?

と言いながら地図を見る視点(上空から)に気づかせていきます。それを「鳥になって見ている」と表現し、Google EarthやGoogle マップで上下方向の高さの移動で見える範囲が変わることを確認します。その変化を「縮尺が変わっている」と伝えます。そして、自分が知りたい場所によって地図が変わることを確認します。

ICTを活用して

その後は、学習者用端末でGoogle Earthを自由に触ってみます。3Dと地形図を比較して、地図の表現を感覚的につかんだり、縮尺を変えることで見える範囲が変わることを実感できるでしょう。

このように3年生の初期段階では、地図の必要性や地図が何をどうやって表したものかを丁寧に指導していく必要があると思います。特に、日常生活において上空からの視点というのは体験が難しいと思います。そこでICTを思いっきり活用することができます。実際に校区を周ることとICTとの併用はもっと効果的になるでしょう。

地図の意味がわかる

このように「地図の意味がわかる」「地図を読むことができる」ことに困難を感じる子どもがいるにも関わらず、どんどん学習内容が進んでいくことがあるのではないでしょうか。それが社会科嫌いを生み出す一つの要因になってしまいます。「地図の意味を理解する」一例を紹介させていただきましたが、地図の意味は継続的な指導が必要だと感じています。

参考資料
  • 小谷恵津子(2017)「スケール認識の形成を視点とした小学校地図学習の改善―縮尺指導の授業構成と学習内容の検討を通して―」 新地理,65(2), pp.1-18

石元 周作(いしもと しゅうさく)

大阪市立野田小学校 教頭


ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。

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