2023.11.07
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そういう人から老けていく

足るを知ることも大切だし、改善し続けることもだいじ。
それは決して矛盾しない。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 今村 行

どうも、今村です。

実年齢とは関係なく、この人若々しいなぁとか、やけに老け込んでるなぁとか、感じることがあります。この人は若いのに老け込んでるなぁとか、この人はお歳を召しているのにすごく生き生きと若々しいなぁとか、様々なことを思うわけです(極端な例を言えば、小学生でも老け込んじゃってるなぁ、と感じることがあります)。身に付けているものの影響もあるでしょうが、もっとも影響を与えるのはその顔つきなのではないか、と思います。それは一体何なのだろう、ということを自分なりに考えたことを書きます。

目の前の事実から目を逸らす

先に僕なりの仮説を申し上げると、「目の前の事実から目を逸らした人から老けていく」のではないか。

例えば教員で言えば、自戒を込めて言うのですが、目の前の授業を適当に流すようになると、一気に老けます。教員の仕事というのは、ルーティンワークに当てはめようとすれば、当てはめることができる仕事です。学習指導要領が改定されない限り、同じ学年であれば教えることは変わらない。1年生を連続で持ったとすれば、前年と同じ教科書を使うわけです。前年に取り組んだことをそのまま「再生」すれば、一応時間は過ごせてしまいます。

ですが、当たり前の話ですが、目の前の子どもが違います。前年の子どもたちと、今年の子どもたちでは、共通点も数多くあるでしょうが、差異も当然ある。そして、僕ら教員が目を注がなければならないのは、共通点ではなく、その差異であるはずです。

A「去年の子たちと全然違って、ここが伝わらなくて、も〜どうしてって思うんだよね」
B「去年の子たちと全然違うから、こうやって伝え方を変えてみたんだよね」

AとBの台詞を言っている自分の表情を思い浮かべてみていただきたいのですが、どっちがいい顔をしていますか?
僕は、いい顔を積み重ねていけば若々しくいられるし、自分としては「それは卑しいな」と思う表情を積み重ねていけば老け込んでいってしまうのではないかと思います。

手段と目的

これはおそらく、手段と目的ということにも繋がる部分です。
結局、授業をどのように捉え取り組んでいくことができるか。
これも自戒を込めて言うのですが、研究のために授業を手段として捉える度合いが高まりすぎると、目の前の子どもが見えなくなっていきます。学校におけるカリキュラム研究、教科研究等が、研究のための研究になってしまう、研究が子どもの笑顔につながっていない、という状況はおそらく手段と目的を履き違えています。研究のために時間を割かなければいけないから、目の前の子どもたちとの時間を大幅に削らざるを得ない、なんていうのは本末転倒のお手本のような状況だと思います。

広い視野で遠くの目標を見定めた上で目の前の現実に向き合うということと、遠くの目標に目が眩み目の前の現実を疎かにするということは全然違うことです。それこそ、若さと老いの分岐点になるのではないか。

学ぶ喜びを失わない

これは子どもの置かれている状況にも当てはまるのではないか。
例えば、塾にたくさん通っている子どもの中に、妙に老け込んじゃってるなぁ、大丈夫かなぁ、と心配になる表情があります。
放課後の時間も使っているから、疲れが溜まっていて表情が冴えない、ということもあるかもしれません。
ですが、表情に光が失われていく要因として一番大きいのは、学ぶ喜びが失われていっていることなのではないか。
「もうそれは知っている」というつもりになって、目の前の授業で起こっている事実に向き合うことができない。そこで生まれている考えの積み重ねの面白さには目がいかず、「自分はそれをもう知っています。こういうことです。どうですか、正しいでしょう?」と訴えるのに必死になってしまう。
それは本当に愉しいことで、学ぶ喜びを実感できることだろうか、と思います。
そういう時の表情って、手段と目的を履き違えて目の前の現実を見られなくなった大人の表情と酷似しているんです。

教師がそのような状況を「救ってあげたい」なんて思うこともおこがましいのかもしれませんが、教室での授業は、新たな発見がそれぞれの中に生まれる時間であってほしい。生き生きとした表情が行き交う場所であってほしい。ある意味、子どもも教師も、若返るような場であってほしい。
その「ほしい」を現実のものにするために、日々の授業をつくっている。

今村 行(いまむら すすむ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

東京都板橋区立紅梅小学校で5年勤めた後、東京学芸大学附属大泉小学校にやってきて今に至ります。教室で目の前の人たちと、基本を大切に、愉しさをつくることを忘れずに、過ごしていたいと思っています。

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