2023.06.05
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

社会科の授業づくり~終末のポイント~

 前回は社会科の授業づくりにおける「展開部」のポイント(一側面ですが)について書かせていただきました。
今回は単元の「終末」についてです。

大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作

単元の「終末」について

社会科の授業の終末は、基本的には単元の導入で共有した学習問題の解決の場となります。単元を通して学んできたことを総合的にまとめ、整理する学習といってもいいでしょう。例えば、4年生の水の学習では、学習問題が「水はどのようにして私たちのもとに届いているのだろう」というようなものが一般的だと思います。その学習問題に対して「水は~にして私たちのもとに届いている」と表現できるようになるということです。単元全体を俯瞰して学んできたことを総合的に思考することから、高度な学習であると同時に問題解決的な学習において必須の重要な学習場面といえるでしょう。また、この終末において子どもが単元の目標に到達している必要もあります。

さらに、単元で学んだことをもとに価値判断をすることもあると思います。単元で学んだことの蓄積があれば、根拠をもって「~すべき」「~したほうがよい」という考えが生まれやすいでしょう。

表現物

単元の終末において表現するものは、社会科においては、

〇文章でまとめる  〇新聞  〇地図  

〇パンフレット   〇関係図 〇ポスター  

などが一般的でしょうか。田口(2023)は、社会科で多用されるまとめ活動の表現物は「要素表現物」(単独でも単元内容などを網羅するような表現物となるが、レポートや新聞といった総合表現物を構成する要素にもなる表現物。例としては地図、年表、図表など)と「総合表現物」(文章といくつかの要素表現物で構成される総合的な表現物。例としてはレポート、新聞、Webページなど)にあると述べ、まずは要素表現物からスタートすることがよいことを提案しています。

学習者端末の普及により、パワーポイントで「絵・図+キーワード」などでまとめることも多いと思いますが、総合表現物としてかなり高度なので、段階を考えた丁寧な指導が必要でしょう。学習問題の解決の場として考えるとどの表現物でも構わないでしょうが、パンフレットやポスターなど時間がかかると想定されるものは、パフォーマンス課題にように子どもたちに最初に提示する必要があるでしょう。

終末のポイント

実際に単元の終末で学習問題に対する自分なりの答えを考えるにあたり、学習問題を再度確認し、「では、書いてください」といったところで難しいと思います。読者のみなさんも様々な手立てをやられていると思います。私は時間的な問題も考慮し、シンプルに文章にまとめることが多いのですが、そこにはスモールステップのポイントがあると思います。  
それは

1.毎時間の問いとまとめを活用する

2.キーワードを示す

3.子どものまとめを共有する

 などが考えられます。

1に関しては、ノートやPCの毎時間の問いとまとめを確認し、まずはそれをつなげて書いていくという方法からスタートするものありだと思います。「~して、つぎに~して、~については~で・・」のようにただつなげただけということもあるでしょうが、まずはそこからのスタートだと思います。新聞やパンフレットの場合は、一つの記事や一つの項目が1時間の問いとまとめとして対応して表現することが可能になると考えます。田口(2023)の述べる「要素表現物」をうまく活用するということです。

2に関しては、まとめとして必要な重要な語をあらかじめ提示しておくとその語が出てくる学習内容を振り返ることになり、少し書きやすくなると考えます。

3は、一番効果的ではないでしょうか。子どものまとめをモデルとして提示し、それを教師が価値づけることでイメージが持ちやすくなると思います。

ただ、いずれにせよ、単元を俯瞰し、総合する思考は先述した通り、高度ですので、継続的な積み重ねが必要だと思います。どの単元でも地道にやっていくことでできるようになると考えます。そして、授業の中で「つまりどういうこと?」と概念的な思考を促す問いかけを常におこなっていくことも大切だと考えます。子どもたちが「つまり」(抽象)と「例えば」(具体)が使えるようになれば終末のまとめも表現しやすくなるのではないでしょうか。

終末は終末ではなく・・・。

単元のまとめとしての終末を述べてきましたが、実は次の単元へつなげることができることも大いにあると思います。終末なので、「終わり」という意識ではなく、他単元とのつながりを匂わしたり、前の単元とのつながりを子どもに問うたり、その学年の学習のひとつの要素としての意味合いを説明したりして、そこで終わりではなく、社会科として続いているものという意識をもつこと(教師も子どもも)大切だと考えています。

また、いったん終末のまとめをした後、興味がでてきたこと、もっと調べたくなったことを2~3時間追究するような学習も可能だと思います。家庭での自学などでも可能ですが、いわゆるオープンエンドな学習の個性化が実現しやすいと思っています。

石元 周作(いしもと しゅうさく)

大阪市立野田小学校 教頭


ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop