2023.05.16
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社会科の授業づくり~展開部のポイント~

前回は社会科の授業づくりにおける「導入」について書かせていただきました。単元を導入、展開、終末と3つの学習過程で考えることは社会科授業において一般的だと考えます。今回は「展開部」についてです。

大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作

「展開部」のポイントについて

社会科の授業の展開部は、導入で立てた学習問題を追究していく段階となります。社会科の学習においてメインであり、社会的事象や社会的事象の意味や意義などを理解し、学習問題を解決していきます。展開部のポイントといっても、様々な視点から多岐にわたるポイントがあるでしょうから、今回は、最近私が意識している①「社会的事象の意味や意義などを考える場面におけるポイント」と、②「単元構成におけるポイント」について述べさせていただきます。

社会的事象の意味や意義を考える

社会的事象の意味や意義を考える際は、まず社会的事象を理解する必要があります。事実が何なのかをつかまないとその意味や意義を考えることができません。その社会的事象をつかんだうえで「なぜ」と考えることが意味や意義につながります。具体的な発問としては「なぜ」だけではなく様々な発問が考えられますが、単元の中で「なぜ」と考える場面があることがよく言われる「暗記教科の社会科」から脱却できます。ただし、宗實(2021)が述べているように「なぜ」は何に対しての「なぜ」なのかをはっきりさせないと思考が拡散してしまうので、「○○は~なのに、なぜ~なのか」といった複文型の問いが有効です。 

考える際の視点

社会的事象の意味や意義を考える際にポイントとなるのが「視点」だと最近考えています。上野(1985)が「視点」は「どこから見ているかというときの“どこ”をさす」と述べているように社会科でいう「立場」と言い換えてもいいかもしれません。「だれにとって」「だれが考えると」というこの視点を意識すると思考が深まるように思います.

 例えば「なぜ工場が海沿いに集中しているのか」については、「材料や製品を船で運びやすいから」「海沿いに都市が多く、働く人や製品を使う人がたくさんいるから」のように考えると思います。ここでは船で輸送をする人、工業製品をつくる人、工場で働く人、製品を利用する人などが思考の中で登場します。そこをあえて「だれの考えですか」「どの立場の人の意見ですか?」のように問い返すことでだれの視点からの思考なのかを意識できるようになると考えます。また、「秀吉はなぜ刀狩を行ったのか」についても、秀吉の視点(為政者の視点)、農民など庶民の視点で思考することになります。これを繰り返すことで、多角的思考が促され、視点が変わることで見えてくるものが違うことに気付くと考えます。このことを意識しておくことで、教師もその視点を転換させる発問や資料の提示など展開が広がります。

対抗社会化

最近、もうひとつ意識しているのは、単元の中で子どもたちの思考に変化を促すことです。批判的思考をつけること、と言ってもいいかもしれません。

小学校社会科において、社会的事象を共感的に理解することは目標の一つです。人の営みの工夫や努力を理解していく過程は、「社会化」(社会集団の価値・規範や、生活・文化・政治・経済等の知識や技能、様式を形成していく過程)であり、必要な学習です。しかし、「社会化にできるだけブレーキをかけながら社会化を行っていく意図的・意識的な営み」である「対抗社会化」を意識することで、工夫や努力の先へ進み、より社会を理解することにつながると思います。

たとえば、水道の学習において、水道局の工夫と努力により、安全で良質な水が24時間提供されていることを学習します。その上で水道利用の減少や地震対策のための水道管工事により、水道料金を上げないと今のレベルでの提供が難しくなるという水道局の悩みを知らせることで、水道局の工夫や努力に留まらない、社会の複雑さを理解することができるでしょう。

このように、すべての単元では難しいですが、単元構成において「対抗社会化」となる事象を組み込むことをポイントとして考えています。

石元 周作(いしもと しゅうさく)

大阪市立野田小学校 教頭


ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。

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