2023.04.21
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社会科の授業づくり~導入のポイント~

読者のみなさま、第32期に引き続き、第33期の教育つれづれ日誌の連載をどうぞよろしくお願いします。引き続き自分の研究教科である社会科のこと、書籍からの学びや学級経営などについて書かせていただきます。今回は第32期に引き続き、社会科の授業づくりにおける「導入」についてです。

大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作

導入場面の重要性

社会科の授業の導入というと、単元としての導入と、1時間(45分)の授業における導入の2つがあります。導入は子どもの知的好奇心を喚起し、「追究したい」という学習意欲を高めるための重要な学習場面だけに、社会科教育史においても貴重な知見の膨大な蓄積があります。私もそのような先行実践や理論を参考にさせていただきながら効果的に機能する導入を考え続けている日々です。

「問い」の重要性

社会科は、「課題を追究したり解決したりする活動」、つまり問題解決的な学習が基本的とされていますので、導入部分でのキーは「問い」でしょう。理想の問題解決的な学習なら、「問い」自体を子どもが発見することからスタートなのかもしれませんが、現実的には難しいでしょうし、問いが拡散し、収束が難しくなる可能性もあります。

北(2004)は社会科において単元の導入における「問い」(学習問題)について「子どもと教師の共同の営みのなかから生まれてくるものであり、教師にとってきわめて計画性の高いものである」と述べています。単元や毎時間の問いが、子どもの納得感や当事者性を醸成することが重要です。そうなれば、子どもは「調べたい」「知りたい」という意欲、自分の経験的には学習自体への期待感みたいなものが生まれてくると思います。

「問い」が生まれるとき

「問い」が生まれるメカニズムは、様々な知見がある中で、最近納得したものに以下の3つの説があります。

①知識欠如仮説
②知識対立仮説
③目標―障害仮説

①は「与えられた情報の中に欠落した情報がある」と問いが生まれることです。社会科では、時間軸で「AがBに変化しました」といった場合にA⇒Bの間にある欠落した情報を追究するような単元構成がよくあります。

②は「すでに持っている知識と新しい知識が対立する」と問いが生まれることです。「Aは○○なのにBは△△なのはなぜだろう」という複文型の問いがこの型になると思われます。

③は①と②を統合するかたちで「目標を達成する上で障害となる出来事に遭遇した場合」に問い生まれるということです。社会科では、Aさんが工夫や努力の末に達成したことにさらに課題がでてきてしまうことや社会問題の解決にどんなことを進めているのかなどがあてはまると思われます。

このような理論は分類することが目的ではなく、引きだしとして持っておくことが重要だと考えます。3つに共通することとして、知識や情報がないところから問いは生まれないということと何らかのズレがあることです。そのために、教師は導入において社会的事象を提示し、一定の知識を共有したり、子どもの体験や経験の情報を引きだしたりする必要があります。

単元における導入

 単元全体の大きな問いとなるので、単元構成を考える必要がありますし、子どもの予想(仮説)も大切に取り上げる必要があります。抽象的になってしまいますが、「子どもはこんな予想を立てるだろう。でもそうなると学習内容から大きくそれてしまう。それなら問いを変えよう」や「そんな問いでは子どもが予想を立てることができない」などの地道な試行錯誤がいると思います。澤井陽介氏はよく「教師と子どものベストミックス」という言い方をされています。岩田(2009)も教科の基盤を形成している科学の構造と子どもの体験の構造との突き合わせの中で成立するものである」と述べています。

一時期、「単元を貫く問い」ということが言われていましたが、個人的にはなかなか単元は貫けないので「単元を方向づける」といった言い方をしたり、単純に単元の途中で2つめ問いをつくったりしてもてもよいと考えています。

また学習計画を立てる活動は、大きく分けて子どもの予想・仮説を問いのかたちにして学習計画にするパターン(A)と子どもの疑問・追究したいことをそのまま学習計画にする(B)があると思いますが、Aのパターンのほうが多いように思います。Bのパターンは子どもの問いを大切にしている本当の意味での単元の導入でしょうが、なかなか難しいと感じています。

1時間(45分)における導入

1時間の導入は、学習計画がある中ですので、以下のようなパターンがあると思います。

①そのまま学習計画の問いを導入にする。(2時間目は~ですね。)
②子どもの振り返りなどを取り上げて問いにつなげる
③単元の導入と同様に本時に関わる事象を提示し、問いにつなげる

どのパターンにおいても大切なのは子どもが予想(仮説)することだと思います。

授業スタイル

以上のように、社会科における導入では、おそらく一斉授業のスタイル(教師主導型)が多くなると思います。単元全体の大きな問いを積み重ねることで、子どもが自分で問いを生成できるようになり(自由生成型)、質の高い予想(仮説)もできるようになると考えます。そうなると一斉授業スタイルも変化させ、子どもに任せる部分も増えていくでしょう。ただし、白水・小山(2021)は、「一見すると自由生成型の方が教師主導型よりもすぐれた実践であるように思えるかもしれないが、この2つに優劣はない」と述べています。自戒をこめて授業スタイルを柔軟に考えたいと思っています。

石元 周作(いしもと しゅうさく)

大阪市立野田小学校 教頭


ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。

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