2023.03.16
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社会科の授業づくり~選択単元を有効活用する~

前回は教材づくりとして教科書+αについて書かせていただきました。今回も大きなくくりでの教材づくりですが、選択単元を有効活用することについて述べさせていただきます。

大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作

選択単元

 学習指導要領(平成29年告示)解説社会編には、「選択して取り上げること」と明示されているものには以下のようなものがあります。

【3年生】
・生産の仕事における事例として「農家」「工場」

【4年生】
・人々の健康や生活環境を支える事業として「飲料水」「電気」「ガス」
・廃棄物を処理する事業として「ごみ」「下水」
・地域の自然災害を守る活動の学習における自然災害として「地震災害」「津波災害」「風水害」「火山災害」「雪害」
・地域の発展に尽くした先人の働きの活躍分野として「開発」「教育」「医療」「文化」「産業」

【5年生】
・食料生産の盛んな地域の学習として「稲作」「野菜」「果物」「畜産物」「水産物」
・工業生産に関わる単元においての「金属工業」「機械工業」「化学工業」「食料品工業」
・国民生活に大きな影響を及ぼしている情報媒体として「放送」「新聞」
・情報や情報技術を活用して発展している情報産業として「販売」「運輸」「観光」「医療」「福祉」
・国土の自然環境と国民生活との関連としての自然災害「地震災害」「津波災害」「風水害」「火山災害」「雪害」

【6年生】
・国や地方公共団体の政治として「社会保障」「自然災害からの復旧や復興」「地域の開発や活性化」

5年生は「自然条件から見て特色ある地域」として「地形条件や気候条件からみて特色ある地域を取り上げること」と明記されていますが、実際は「あたたかい気候の地域」「寒い気候の地域」「高い土地の地域」「低い土地の地域」から選択していると思います。

有効活用を

「自然災害から人々を守る活動」単元計画

(筆者作成)

 上記に示したように、選択する単元はけっこうあるのですが、実際は定番のように決まっているものがあると言えるでしょう。4年生ではやはり「飲料水」「ごみ」の学習をしますし、5年生は「機械工業」としての「自動車工業」がほとんどだと思います。教科書に掲載されていることが大きな要因だと思われるのですが、別の内容を取り上げるのも面白いですし、新鮮な気分になるのではないでしょうか。子どもにとっては初めての出合いですが、指導者の選択肢を広げるものとして開発しておくこともよいのではと思っています。もちろん大変なこともあるかもしれませんが、一度開発しておくと、何年間は活用できる学校としての財産になると考えます。


4年生単元「自然災害から人々を守る活動」

では、実際に活用した実践例を紹介させていただきます。
4年生の「人々の健康や生活環境を支える事業」として「飲料水」「電気」「ガス」示されていますが、現在どの事業においても自然災害対策は様々な取り組みがなされています。
そこで、変則的なかたちですが、「自然災害を守る活動」の単元と組み合わせて自然災害に備えているガス事業体を取り上げました。

1.目標
大阪府の自然災害に備えて、大阪府や大阪市、地域、ガス事業体などが、風水害・地震・津波から人々の命を守り、安全・安心に過ごせるような取り組みを行っている。また災害が起こっても安全・安心に過ごせるような取り組みもしている。

2. 単元計画
図に示している通りです。ガス事業体について1時間をプラスしました。

3.ガス事業体の地震対策
第8時です。

まず、導入で「地震によって普段、普通に使えているもので使えなくなる可能性があるものは」と問い、ガスに着目させます。ガスについては、知っているようで知らないことも多いと判断し、写真資料や映像からガスの働きやガス管・マイコンメーターについての事実を知らせます。ガスがもれると大きな事故につながることから「地震や津波にそなえて、ガス事業体は何をしているのだろう」という問いを立てます。

そこで、ガス事業体の地震・津波対策を調べるのですが、その際に日本教育新聞社と日本ガス協会が無償提供している北俊夫氏監修の「日本ガス協会 授業支援パッケージ 」を活用しようと考えました。資料が調べやすく、ガスについての動画も活用しやすいものになっていました。そこで ガス事業体の取り組みとして、

【ガス管のポリエチレン化】
・マイコンメーター
・24時間体制
・防災訓練
・応援体制

を共有します。さらに補足の資料として、兵庫県南部地震の時は1,200kmだったポリエチレン管の長さが2019年には16,400kmになっていること、マイコンメーター普及率が100%、津波監視カメラなどの設置などを提示すると、子どもは「こんなにやっているのか」と驚きます。そこで、「なぜここまで地震対策をしているのだろうか」と概念的な知識を問うことで「ガスが使えなくなると利用者が困るから」「もし事故が起こると被害が大きくなるから」という利用者目線と、「事故が起こるとガス事業体も困る」という事業者目線の両方が出され、多角的に考えることができました。

今回は特設の1時間を追加ですが、選択単元の選択項目を有効に活用する意味が大きいと考えます。

石元 周作(いしもと しゅうさく)

大阪市立野田小学校 教頭


ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。

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