2022.12.21
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社会科の授業づくり~問題解決的な学習の過程~

これまで3回の連載で、主に学級経営的な面について書かせていただきました。
今回からは教科教育的な面、自分が研究を続けている社会科について書かせていただきます。

大阪市立野田小学校 教頭 石元 周作

不人気社会科

読者の皆様も実感として感じておられると思いますが、社会科という教科は子どもにも教師にもあまり人気がない教科です。というかはっきりいって不人気です。よくそのエビデンスとして紹介されるのが、ベネッセの「好きな教科・活動ランキング」です。
1990年から5年ごとに調査されていますが、2015年まで計5回の調査ですべて最下位が社会科です。その理由として、「暗記することが多い」とか「内容が難しい」「言葉が難しい」などがよく言われます。こういう理由が述べられる時点で、子どもが社会科に対して興味・関心を抱けていないことの証明です。

どの教科・領域でもそうですが、毎時間毎時間子どもが好きな学習が展開されるわけではありません。そのためにも子どもが少しでも「あ、面白いかも」と思える授業づくりが必要となりますし、そうありたいと日々考えています。
子どもが学習性無力感を感じる前に、社会科の学びから逃走しないように、学びの姿勢をつなぎとめておく必要があります。

子どもが学びに向かう姿勢が良好な授業はどんな授業か、という分析をする際に、様々な視点からの切り口があるでしょうが、

(1)知的好奇心が刺激される
(2)授業内容がわかる

という視点があると思います。特に(2)の「授業内容がわかる」というのは重要で、大人もそうですが、内容がわかると好きになることが多いと考えます。「内容がよくわからないのに好き」という状況があまり考えにくいです。

そのために、「子どもがわかる授業」をつくっていく必要があります。となるとまずは指導者自身が「授業内容がわかる」と思える授業をつくらなければなりません。つまりこの1時間目で子どもがどんな活動をし、どんな目標を獲得すればよいのか指導者が腑に落ちている授業をすることです。

問題解決的な学習

文部科学省(2018)は、平成29年告示の小学校学習指導要領の社会科の目標として冒頭で以下のように述べています。
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☆社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
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つまり社会科は問題解決的な学習過程で学ぶということです。
同学習指導要領解説【社会編】では、
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☆問題解決的な学習とは、単元などにおける学習問題を設定し、その問題の解決に向けて諸資料や調査活動をなどで調べ、社会的事象の特色や相互の関連、意味を考えたり、社会への関わり方を選択・判断したりして表現し、社会生活について理解したり、社会への関心を高めたりする学習
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と述べられています。
そのため、どの教科書でも問題解決的な学習過程が意識された構成になっています。みんなで問いをつくり、それを解決するために追究し、問いを解決することで「わかった」となるわけです。この「問いの解決」が連続していくことで子どもは「わかった」という意識が醸成していき、「社会はわかるし、面白いかも」という情意面にも影響を与えると考えます。

まずはつくってみる

とにかく現況の教科書をモデルに1時間の授業を問題解決的な学習の過程でつくってみましょう。

例えば、5年生の「あたたかい土地の人々のくらし」での沖縄県の学習のところです。「学習問題づくり」という単元を方向づける大切な問いづくりはひとまずおいておき、あるページをあけると「問い」が「沖縄県の人々は、あたたかい気候を生かしてどのような産業を営んでいるのでしょうか」となっています。
これが問題解決的な学習の「問い」にあたります。できるならまずはこの「問い」に対する予想(仮説)を想定します。「パイナップルのような果物をつくる農業をたくさんやっている」とか「おいしい魚を捕る水産業が盛ん」など、既習事項や生活経験をもとにした子どもの予想です。

そしてその予想を基に調べますが、準備がいらないのが教科書をメインの資料をしてしまうということです。該当ページでも、写真資料やグラフ、○○さんのお話などの資料があります。それらを調べると、さとうきびの栽培、さとうきびから砂糖の製造、パイナップル、シークワーサー、マンゴーなどの果物の栽培、電照ぎくなどが営まれていることがわかります。調べたことを共有することで問いが解決します。そしてその問いに対する答えをできたら子どもが自分なりにまとめたらどうなるかを想定します。
例えば「沖縄県の人々は、あたたかい気候を生かしてさとうきびやパイナップル、シークワーサー、マンゴーなどの果物の栽培や電照菊などの農業を営んでいる」などです。
これはあくまでも型をあわせただけで、事実を調べてまとめただけです。しかし、まずはこういう子どもが自分で調べるという授業をつくることからスタートをきるのが良いと思います。

少しだけ仕掛けを

(図1)都道府県別のパイナップル生産量と全国シェア(2018年)

上記の例は、問いは教師からの提示です。学習計画を立てているなら、子どもとの共通認識があるので、問題ないでしょうが、1時間の問いであっても子どもが問いを醸成できる仕掛けが欲しいところです。

今回の場合なら例えば、「沖縄料理で知っているものはありますか」とかなりメジャーになっている料理名(ゴーヤチャンプルーやサーターアンダギーなど)を共有したあとに、「ではどんな産業が盛んだと予想できますか?」と展開したり、国内シェア率(99.9%、2018年)のグラフ(図1)を予想させて提示したり(もちろんパイナップルです)して、子どもの知的好奇心を喚起させ、問いにつなげることが可能でしょう。

そして、事実だけを調べるのではなく、学習指導要領にある「社会的事象の特色や相互の関連、意味を考える」ことができるように、例えば、市場に出回るきくの出荷元がわかるグラフが提示できれば、沖縄県が他の産地の出荷の少ない時期に出荷していることを考えることができます。また、防風林の写真を提示することで、台風に備えた農業を考えさせることも可能でしょう。

さらに最後に、沖縄の産業の内訳を示すことで、実は農業などの第1次産業はわずか1.6%だけという事実から第3次産業の観光業がメインであることを考えることもできます。

いわば学習過程として
「問いをつかむ⇒調べる⇒まとめる(ひろめる)というシンプルなものから、問いをつかむ⇒調べる⇒考える⇒まとめる(ひろめる)」という変化をつけるということです。

少しだけ教材研究を

子どもに合わせた仕掛けを考えるためには、やはり教材研究が不可欠となります。社会科は特に「資料」という視点が重要になってくるでしょう。

ひと手間ですが、個人的には学習方法の工夫よりも教材(資料)の工夫の方が効果的だと考えています。

石元 周作(いしもと しゅうさく)

大阪市立野田小学校 教頭


ファシリテーションを生かした学級づくりと社会科教育に力を入れて実践してきました。
最近は、書籍からの学びをどう生かせるかや組織開発に興味があります。
統一性がない感じですが、子どもの成長のために日々精進したいと考えています。

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