2022.11.04
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道徳の授業では、どこで考え、議論する?

ふだん道徳の授業をしていて、「今日は話が盛り上がったなあ」「今日は微妙だったなあ」という試行錯誤の繰り返しですが、みんなの意見が活発になる時の共通点を発見しました。
そんな発見について書いていきたいと思います。

沖縄県宮古島市立東小学校 教諭 五條 晶

「考える」「議論する」道徳って?

道徳が教科化されて早いもので数年が経ちました。教科化されるにあたり、「考え、議論する」というキーワードに注目が集まりました。

「考え、議論する道徳」はどのようなもの思いますか?

道徳教育において「小・中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」では「よりよく生きるために道徳的価値に向き合い、いかに生きるべきかを自ら考え続ける姿勢」を育成することが求められています。
そして、授業の中では、ある4つのことを行うことで質的転換を図ることが求められています。
その4つとは
①道徳的諸価値について理解する
②自己を見つめる
③物事を多面的・多角的に考える
④自己の生き方について考えを深める
となります。

したがって、「考え、議論する道徳」とは、自分の生き方を見つめながら、周りの友達の視点の話も聞き合い、語り合うことを通して自己の生き方を考えていく学習と言えるのではないでしょうか。

まずは導入で自分の立ち位置を確認させる

まずは導入です。
ここでテーマに対しての自分の立ち位置や、今までの自分の生き方を振り返ります。

例えばテーマが「きまりを守る」だったとします。

「学校のきまりは何がありますか?」と聞くと、子どもは学校のきまりをいくつか発表してくれます。「廊下は走ってはいけない」「朝は8時15分までに学校へ登校する」などです。

ここで大事なのは、これから教材を読んでいく前に、みんなの心をしっかり授業に参加させていくことです。そのために、自分の立ち位置や自分の今までを振り返らせます。

例えば、きまりをいくつか板書した後、
「この決まりの中で100%守っているものに手を挙げます」と言います。

すると、「100%かあ」と手を挙げながら、テーマについて考える心が1人1人そろっていきます。

展開で教材と自己を比べる

道徳の授業をしていて一番子どもたちが話したいという顔をするのは、自分の経験を話すときです。

導入が終わり、教材を読み終えた後、話を振り返ります。

ここで、登場人物と同じような経験したことがあるか聞きます。
例えば最初で書いた「きまりを守る」テーマで、登場人物がきまりを守る気持ちはあったが、守れなかったとします。

子どもたちは、「きまりを守る」ことは大事なことだと分かっていることが多いため、「どうして決まりを守ることが大事なのか」に時間をかけていても、なかなか話し合いが盛り上がりません。

そこで、登場人物のきまりを守れなかった弱さを共感しつつ、自分たちの経験談を話し合います。

するとこんな意見が出ます。
「ぼくのおうちはゲームは2時間と決められているけど、やっているうちに、ついつい楽しくて時間を忘れてしまって守れなかったことがある…」
「わたしは朝寝坊してしまった後、学校の準備をしていて、急いだけど登校の時間に間に合わなかったことがある…」

すると、周りの子も「あるある!」や「へえ!そんなことあるんだ!」
など、興味津々で人の話を聞いたり、そういえば僕もこんなことがある!と自分の経験談を話してくれます。

こうした経験談の中に、自分にはない生き方や考え方を知るきっかけが多く含まれています。
また、自分の経験談を話すことで教材の主人公の生き方と照らし合わせ、自己の生き方を見つめ直しやすくなるのです。
そして、自分の経験談を話し、他の子から「ぼくだったらそんな時はこうするよ!」「わたしだったらこうするかな」といろんな視点で話を聞くことができます。また、話す側は自分には経験がなくても、いろんな視点で考え話すことに繋がります。

終末では、振り返りを書くためにたっぷり時間を取りたいです。

振り返りに書かせていることは、テーマに対して
①「今までの自分はどうだったか」
②「今日大事と思ったことはどんなことか・友達の意見を聞いて思ったこと」
③「これからの自分はどうしていきたいか」
この3つです。

経験談をたくさん話している分、教材から離れて自分のことを振り返りに書きやすくなります。

実際に毎週授業をしてみて、この「自分の同じような経験ない?」はとても使える問いかけです。
この経験談を語り合うことが「考え、議論する」道徳に繋がっていきます。

みなさんも使ってみて下さい!

五條 晶(ごじょう あきら)

沖縄県宮古島市立東小学校 教諭


授業を通した「みんなで分かる!」「みんなが楽しい!」集団づくりを目指し、試行錯誤しています。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

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